土、水、食にとっての2015年 【友部遼】

SeiZeeアドベントカレンダー企画14日目です!

最近,春秋左氏伝を愛読しています.友部です.

「私が選ぶ今年の3大ニュース」ということで執筆をしています.

普段歴史を読む立場ですが,刻む立場となるとまた違った趣があります.

  1. 国際土壌年

今年は国連の定めた,「国際土壌年」です.

我々陸上生物は,その生の糧をすべて土壌に依存しています.

一方で,世界中で土壌の劣化が著しく進行しているといわれており,

ここに,持続可能な生存のために,土壌の重要性を改めて認識し問題意識を高めようという啓蒙運動を行う年ということのようです.

 

植物工場や水耕栽培などが耳目を賑わす今日この頃ですが,あくまで我々は土に生かされています.

 

土によるろ過・貯留⇒水

土⇒イネ,コムギ⇒ご飯やパン

土⇒牧草・穀類⇒家畜⇒肉類

土⇒古代の植物の遺骸⇒石油製品

 

などなど,辿ればことごとく土へ至るのがお分かりだと思います.

Damage from the Asian Tsunami of 26 December 2004

土壌の劣化とは,これらの←が消えてゆくことを意味します.

土によるろ過・貯留機能の低下⇒水不足

ご土の流出,土壌環境の悪化⇒イネ,コムギ生産の著しい減少⇒飯やパンが作れない

土の流出,土壌環境の悪化⇒牧草・穀類生産の途絶⇒家畜が養えない⇒肉類が食べられない

土の流出,土壌環境の悪化は不可逆的⇒以降の時代,有機物の蓄積が停止⇒資源の再生産が不可能に

 

このように,よろずの商品は土に基づくものですので,

大量生産・大量消費は土へ過大な負荷を強いることを意味します.

それこそが,土の劣化の構造的要因であると考えられています.

 

土の酷使・土からの収奪により,一時労少なく得たものを,

それを価値だと尊ぶような生物種がそう長く万物の霊長を気取れるとは思えません.

 

  1. 9/10 鬼怒川堤防決壊

 

図2

 

被災された同郷の皆様の一日も早い回復をお祈りします。

この日ははちょうど茨城の実家に帰省しており、未曾有の大雨の脅威をひしひしと感じました。近所の川も増水や氾濫を起こしており、まさに書経の「降水儆予」とはかくの如きか、と思われました。

今回氾濫のあった鬼怒川や茨城県西地区は、降雨時には水が集まりやすく、一方でたびたび旱魃にも襲われるといった治水・利水の難しい地域です。

これまで、霞ヶ浦導水事業による小規模ダムネットワークや流域の総合開発事業が行われた結果、大幅な水利の改善が実現いたしましたが、今回の災害では改めて自然の脅威を思い起こす結果となりました。

そこで、その脅威を分析する一つの切り口としてダムの放流操作を見てみます。

図4

結果のみを言えば、今回鬼怒川ダム群の積極的な放流操作により、50%ものピークカット1)が実施され、結果として下流の方々の避難時間の確保や被害の最小化に大いに貢献したことがうかがえます。

今回の決壊に至るまで、鬼怒川上流ダム群は前日からの事前放流を行うことで空き容量を確保し、長く強い雨の中ピークを的確に捉え連携した貯留を行いました。そうした操作がなければ、被害はさらに我々の想像を超えた次元となっていたでしょう。

 

防災対策に対しては往々にして、平時は無用の長物だ不恰好だと非難され、被災時には人災だという声に世論が巻かれその成果が省みられないものです。それでも関係者の方々は、人命や財産、そしてかけがえのない農業を守るために我々が寝ている間も不眠不休で対応に当たって下さっております。少しでも、そうした方々の労苦が報われることを祈っております。

 

孟子は、治水により中華繁栄の基礎を築いた禹や、禹の実力を認め、その任に就かせた舜といった聖人の行いを仁であると主張しています。

多大な労苦をものともせず、誰に何と言われようとも万民のために自身の仕事を地道にこつこつ行っていく姿以上の仁の実践は、そう多くはないと思います。

 

1) 具体的な放流操作

http://www.ktr.mlit.go.jp/kinudamu/kinudamu_index041.html

2) 鬼怒川流域画像

http://www.ktr.mlit.go.jp/shimodate/shimodate_know010.html

  1. 6/20 史上初,全国規模での豆腐の品評会開催!

 

第 1 回『日本一旨い豆腐を決める』品評会 in 京都(主催:京都府豆腐油揚商工組合, 一般財団法人 全国豆腐連合会)が6/20にリーガロイヤルホテル京都で開催され,全国からエントリーされた128点のお豆腐の品評会が行われ,報道各社が詰め掛けるなど話題を呼びました.

 

豆腐業界の方々が,歴史的な苦境の中,一丁にその魂を込められ,その一丁一丁が会場に収められ,皿に載せられて行く様を,私はスタッフとして拝見しておりました.

 

丁寧な梱包を一つ一つ開封するたびに,職人の手仕事に敬意が沸きました.

「豆の味を引き出す」と,豆腐作りの妙味を彼らはそう表現します.

よい言葉だと思います.

引き出されるものを持つ大豆と,

引き出す技を持った職人の手が,

日本の豆腐を造っているということなのでしょう.

Soba Tofu

「平凡にして,非凡」

右京区某所の豆腐屋の軒先には,そう豆腐を評した掛け軸が下げられています.

豆腐を単なる平凡と思っている,そこのあなた,

是非,非凡な豆腐をご賞味あれ.

 

本品評会の結果は,下記URLからご覧になれます.

http://www.zentoren.jp/images/top/20150623.pdf

友部遼

友部遼【農業,テクノロジー】

投稿者の過去記事

農業や農学の将来に関して,多少学問をしてきました.
次世代の食料生産・水資源利用に関して,主に研究開発の視点から皆様と議論をさせていただければと思います.
よろしくお願い致します.

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