【東北3県取材第二弾】「福島原子力発電所」の今を知る。-シリーズ2017衆院選後の未来①東日本震災復興-

先に行われた2017衆議院議員選挙。選挙で一時的に注目された争点が、選挙の結果からどうなっていくことが決まり、実際にどうなっていっているのか。
選挙時は頭をひねって関心を持っても、その後を知る人は、意外と少ないのではないでしょうか。
今回、SeiZeeはalleyとしてこの2ヶ月間、選挙で争点になったこと、そして大事なのに語られなかった争点も含め、約10の争点の「選挙後の未来」と「現場の声」を可視化します。
選挙で注目された争点には、どのような議論があり、選挙でどういう決定が下されたことになり、今後どう進んでいくのか、を解説記事と現場のインタビュー記事からお届けするこの企画、「シリーズ-2017衆院選後の未来-」。初回となる今回は、争点①東日本震災復興をお届けしています。解説記事はこちらから。

セットとなる現場インタビュー第一弾では、岩手・宮城・福島の3県に実際に行った今の東北をレポート。
現場インタビュー第二弾となる今回は、「福島原子力発電所」の今をお伝えします。
※※ここでは、福島原子力発電所の廃炉状況などの記載が多くありますが、これらはすべて、取材をした2017年7月時点でのものであり、刻々と変わる廃炉状況の中で、今現在とは状況に隔たりがある場合もあることをご了承ください※※

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今回の取材は、Global Shapersの皆さんにご縁をいただいて同行させていただいたものだ。
この旅に登場するシェイパーさんたちは前回記事をご参照頂きたい。

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1日目を終え、一行は川内村へ車で向かう。

今日私たちが泊まるのは、山の奥にある「いわなの郷」だ。BBQやいわなのつかみ取りが出来、立派なコテージが立ち並ぶ。霧に包まれたそこはまるで別空間だ。

そこで待っていたのは、今晩をともにしてくれる、経済産業省資源エネルギー庁廃炉・汚染水対策官の木野正登氏だ。

●木野正登(Masato Kino)

1968年東京都墨田区生まれ。東京大学工学部卒業後、通商産業省(環境経済産業省)入省。11年3月からの原子力災害現地対策本部兼福島復興局勤務を経て現職。震災後、福島に単身移り住み、今もこの地に根差しながら原発と向き合い続けている。

木野さんも合流し、いわなの郷で夕飯を食べる。いわな丼に舌鼓を打ちながら、木野さんの福島に来る前のお話や、来てからのお話を軽く聞く。気さくに話してくださる木野さんに全員の緊張も和らぐ。

その後は全員で銭湯へ。裸の付き合いでより打ち解けてきたところで、コテージでの原発談義がはじまった。

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1Fを取り巻く3つの課題

吉川「まずは木野さんから福島第一原発(以降1Fとする)の現状を教えてもらいましょう。よろしくお願いします。

木野さん(以下敬称略)よろしくお願いします。まず、今1Fには3つ大きな課題があって、一つは汚染水の問題。それから、原子力発電所は核燃料を使って発電するわけなので、その際の使用済み燃料の問題。そして最後に、メルトダウンしてしまったことによって溶け落ちてしまったデブリと呼ばれるものの問題、の3つですね。

順に説明していきます。

 

第一の課題:汚染水問題①「汚染水ってなんで発生するの?」

木野「まず汚染水問題。以下の資料(敷地の図面)を見てください。水は当然高いところから低いところへ流れていくので、この資料でいくと下から上に流れていきます。要は敷地に降った雨水が地下水になって、この青く囲った原子炉があるところに流れていってしまうんだよね。

出典:東京電力福島第一原子力発電所説明8枚資料7月版(平成29年7月のもの)

 

木野普通原発っていうのは、固い地面の上に直接作るので、深くまで地面を掘って発電所を建てます。だから埋め戻した後に、どこの発電所も近くに井戸を掘って水をくみ上げて海に流すという作業を行っているんです。1Fでも当然それをやっていたけれども、事故があって電気が止まってしまったから当然井戸のポンプも止まってしまって、流れてくる地下水の水位がどんどんあがって、中にまで入り込んでしまったと。

通常なら問題はないんだけど、今回はメルトダウンして建物の地下のほうにまで核燃料が落ちてしまっているので、その入り込んだ地下水が核燃料に触れてしまって、高濃度の汚染水になってしまったんだね。

こうしたメカニズムでそもそも汚染水が発生してしまったと言えるわけです。

 

第一の課題:汚染水問題②「汚染水への対処」

出典:東京電力福島第一原子力発電所説明8枚資料7月版(平成29年7月のもの)

 

 

木野「これについて、いろんな対策をやってきてはいます。

こちらの上の図のだるまさんみたいなのが格納容器で、その中に長細い圧力容器と呼ばれているものがあります。そしてこの中に燃料があって、ここに水を供給して蒸気にすることで通常は発電していました。

現在は、このだるまさんみたいな格納容器の中の圧力容器の中にある燃料がメルトダウンして溶け落ちて、汚染水が生まれてしまっている状況です。なので、毎日この発生した汚染水をくみ上げています。くみ上げた汚染水の一部はこのメルトダウンした原子炉を冷やすために循環させています。これは1日大体210トンの水の量です。これ以外の余計な地下水の分はくみ上げてタンクにためておく必要があります。それがどのくらいの量かというと、今は1日160トン地下水が入りこんでしまっている状態です。

この水をそのまま浄化しないで放置してためておくと放射線量も高く万が一漏えいしたら危険なので、セシウムとかの放射線物質を取り除く装置に通します。そしてそのあとにALPS(アルプス)と呼ばれる装置でトリチウムという放射性物質以外の放射性物質を取り除いた状態にするんです。要は、トリチウムだけが残された状態にして、タンクにためておくわけですね。今この水の量は合計で80万トンあります。それ以外にストロンチウムとセシウムだけ取り除いた水も20万トンあります。

つまり、毎日160トンの入り込んでくる地下水を出来る限り浄化してタンクに保存しており、その量、トリチウム水が80万トン、他の放射性物質も混ざった水が20万トン、合計100万トンが今敷地内でたまっている状態にあるんですね。

事故当時は1日400トンの地下水が建物の中に入ってたんだけど、近くの井戸を復活させて水を吸い上げることで、だんだん地下水の水量を下げて、今はなんとか160トンまで抑えられている状況です。

 

第一の課題:汚染水問題③「トリチウム水をめぐって」

木野「トリチウムだけは取れないのはなぜかって言うと、実はこの物質、水素に中性子が2つくっついた物質なんです。

水素って水の一部ですよね。つまり、普通の水の一部である水素が一部トリチウムに変わっちゃってるわけなんです。要は、ここからトリチウムを取り出すのは、水の中から水を取り出すような作業だというわけです。金を何兆円もつぎ込んだらできるけど、そんなことをやってしまうと国家財政がひっ迫してしまって無理なので、今はトリチウム水をそのまま貯めているという状況なんですね。

実はトリチウム水自体は身体への害は無視できる程度の水なんです。

でも漁業者は、たとえトリチウム水が害のない水でも海に放出してほしくはないし、福島の漁業はまだ復興の途上なので、今こんなものを流されたら風評被害でまた福島の魚が売れなくなるかもしれない。それなのに以前東電の会長が「汚染水は海水に流します」なんて言っちゃったものだから、非常に問題になりましたよね。

出典:東京電力福島第一原子力発電所説明8枚資料7月版(平成29年7月のもの)

 

木野「今この敷地の点線より北側は双葉町で南側は大熊町側なんだけど、このエリアの敷地大熊町側大部分に900基のタンクが埋め尽くしている状態なんです。これ以上タンクを作るのはなかなか難しくって、2020年まではなんとかタンクが作れるんだけどそれ以降は作りずらいところまで来ています。つまり、これ以上の汚染水は貯められないんです。

そうすると、このトリチウム水をどうにかして処分しなければならないということで、地中に埋めるのか、空気中に蒸発させるのか、海に出すのか、とか5つくらいの方法を技術的な検討で考えながら今も議論中です。ということで、この問題はまだまだ解決が先なんですが、一方で世界の原発はどうかというと、稼働時に普通に海にトリチウム水を流しています。基準っていうのがあって、1Lあたり60000ベクレル以下の基準に下げたうえで放水をしてるんですね。韓国の原発もカナダの原発も流しています。むしろこれらの国の原発は仕組みとして重水炉だからトリチウムの量が多いんだけれども、それでもこれらの国の原発はよくて、1Fは全く流せない状況があるわけです。

これはやっぱり、1回事故を起こしてしまった原発だからしょうがないんだけれども、非常に厳しい状況だと言えますね。

 

吉川「質問なんですが、トリチウムの基準って、安全性から導きだされたものではなくて、1年間運転中発生するならばこのくらいの量はどうしても出てしまう、という観点から逆算して出しているものですよね。例えば海外とかで、安全論、これくらいの量であれば人体の影響はないはず、という見解に基づいて基準値を決めている場所ってあるんですか。

 

木野「大体おんなじ状況と言えると思います。トリチウムって実は放射線レベルは高くない物質なんです。放射線にはアルファ線ベータ線ガンマ線があるけれども、ガンマ線が一番人体に影響があって、代表的なものはセシウムとかみなさんの体内にあるカリウムとかです。トリチウムって弱いベータ線しか出さず、皮膚も貫通しないんですよ。例えばトリチウム水に手を突っ込んでも、外部被ばくをしないという点で、人体への影響ってないといえばわかりやすいでしょうか。でも素人にとってはストロンチウムだろうがセシウムだろうがトリチウムだろうが~チウムってついてしまえばみんな一緒に思えてしまう。だからそういう科学的な事実をよく周知させないとこうした原発の問題は進んでいかないですね

理解をしてもらったうえでじゃないと、どう処理するかの話も始まりません。

 

現在の廃炉状況「まだまだこれからですね」

木野「一方で今廃炉のほうどうなってるのという話をしましょう。1~4号機、このうち事故当時運転中だったのが1~3号機の3つです。

 

ほぼリスクのない4号機

木野「4号機は定期検査中だったんですが、3号機からの水素が回り込んだために一番外側の建物が水素爆発してしまいました。使用済み燃料プールの中に1500体くらいの核燃料が保管されていたのですが、4号機はもう作業が進んだので、この燃料すべてを除去して問題はなくなってほぼリスクのない状態にまでなっています。

 

まだまだ途上の1-3号機

木野「1-3号機はメルトダウンもしてるし、使用済み燃料プールにまだ燃料も残っています。一番進んでいるのが3号機で、がれきも撤去し終わって、これから使用済み燃料を取り出すための装置を建屋の上にくっつけて来年度の中ごろから取り出しを開始しようとしています。

1号機は爆発もしてしまってがれきが残ったままという状態で3年後の取り出しに向けて作業中です。

2号機は幸いなことに爆発はしなかったんだけど、メルトダウンした燃料のせいで、建物の中がものすごく線量が高くて、数百ミリシーベルト/1時間のところとかいまだにあるくらいなんです。この前も走りながら原子炉の建屋内部を通ったりしたんだけど。笑 だからここは使用済み燃料を取り出そうにも建物の中に入れないので建物の上を解体して作業をしなきゃいけないわけです。これも3年後の取り出しを目指しています。

 

第三の課題:残されたデブリとこれから

木野「最大の難関はデブリですね。これはまだ調査段階です。ようやく格納容器の中に機械が入れるようになった段階にあります。

1号機が一番核燃料が落下しているとされていて、格納容器の中に横に広がっていると予想をして、ロボットを使ってカメラを下におろして、デブリの位置や線量を推定できないかなと思ったんですが残念ながらデブリの確認まではいきませんでした。

2号機は、まさに圧力容器の真下の部分を撮影することが出来て、デブリが溶け落ちたという証拠を把握することが出来たのがこの写真になります。(スライド左下)

出典:東京電力福島第一原子力発電所説明8枚資料7月版(平成29年7月のもの)

 

木野「そこまで見えたので取り出しは2021年を目標に。3号機については、水中ロボットを開発して、いよいよ来週から調査を開始します。朝4時から調査が開始なので私は1Fに泊まり込みです。

東輝「なんでそんなに朝早いんですか?

木野「まあ要は後々の公表時間とか考えると、どの画像を使うかとかどうやって調査の発表をするかとかをエネ庁と東電でやったりしなきゃいけないので朝早いんですよね。そういう大変さもあります。

 

調査ロボットのゆくえと調査で期待される映像

東輝「調査を終えたロボットってすごい汚染されていると思うんですが、そのロボットはどうするんですか?

木野「2号機に入れたお掃除ロボットの場合は、ロボットは容器ごと1Fの中に保管してあります。表面線量で120ミリシーベルトあるので、触れないから、保管した状態でいずれは持ち出して、JAEAで分析してもらおうとは考えています。3号機の調査結果もまた報道されると思うので見て下さい。(※この後デブリが発見のnewsが発表された)

西川「衝撃的な映像、というのは例えばどんなものですか?

木野「もしかするとデブリそのものの画像が見えるかもしれません。それが見えればとても画期的なことです。まだまだ調査段階なので、デブリの取り出し方法を考えたり、取り出し装置を作ったりはこれからやっていかなくちゃいけません。今はまだデータを集めて積み重ねて研究開発している段階ですね。だからデブリの取り出しが開始するまで私は絶対ここにいるって言ってます。

吉川「本当に廃炉業界は定年60歳とかなんですよ。その面は見直さなきゃならないと思ってますね。

 

ここまで変わった福島原発とその周辺「スーツで歩けます」

木野「汚染水対策で当初からいろいろやっていました。そのおかげで、10万100万ベクレル/リットルくらいに海が汚染されてしまっていたのが、今や0.7ベクレル/リットル以下ぐらいまで下げられれています。

大気中の放射線量についても、原発の敷地に1年間いたらどれだけ被ばくしますか、という数値が、事故当時は1年間そこにいたら11ミリシーベルトだったのが、今はようやく年間1ミリシーベルトまで減らすことが出来ていて、かなりの量まで減らすことが出来てきたと言えます。

吉川「補足で言うと、これが1Fの敷地の放射線MAPなんですね。やっぱり1-4号機周辺は高いよね。でもここから事務室までは1キロくらい離れていて。そこには女性もいて男性もいて、普通に歩けているという状況なんだよね。(スライド左下)

出典:東京電力福島第一原子力発電所説明8枚資料7月版(平成29年7月のもの)

 

木野「やっぱり大きく変わったのは、最初の頃は原発周辺は防護服を着てマスクをしてってしないと絶対入れなかったのが、今ではグリーンの部分は普通の恰好にマスクを着けて歩けるようになってるんです。到底女性には働けない環境でしたが、今は若い20.30代や女性もいます。さらに、以前ここには休憩所もなかったけど、今は大型休憩所もあるし、大熊町に給食センターが出来ています。そこから運ばれた温かい食事を1Fでもとれるようになってるんです。しかもここで料理を作ってくれている人がみんな地元の人なんですね。最初は東電もだれが来てくれるんだろうと心配しながら募集をかけたら、定員の3倍の応募があって、とってもありがたかったです。だから今1Fに行くと、普通の工事現場と変わらない風景があります。ぜひまた1Fに来て見てみてください。

 

国がかかわる理由と木野さんの覚悟「死ぬまで廃炉に携わる」

西川「前提として理解できてないんですが、エネ庁の人がなぜこんなにコミットしていらっしゃるんでしょうか?

木野「東京電力1社だけでは、お金の面でも、他の面でも、到底廃炉にはできないんですよね。資金面では賠償、除染、廃炉、合わせて20兆かかると言われていて、とても1企業だけではできません。この事故の責任は東京電力1社だけの問題かと言われるとそうではなくて、国は政策として原発を推し進めてきたし、国としての責任もあると思います。

私は負い目、っていうよりは、大学で原子力を学んだものとして、この事故は原子力を学んだ人間すべての責任だと思っているから、だからこそ、自分としては廃炉をやるまで見届けたいし、福島を去って東京に戻ろうという気が起らないからここにいます。この地で死ぬまで頑張ろうという思いでやっています。

 

地下水と凍土壁「氷の壁を作るってなんだ?」

品川「廃炉の話ではなくて汚染水の話なんですけど、あれは地下水がもう入り込んじゃってるからってことなんですね。地下水の侵入を止めることは不可能なんでしょうか?

木野「そうですね、目的があって入れてるとかではなくて自然に入り込んじゃってるんです。建物っていろんな貫通部があるから、いろんなところから水が入っちゃうので、どうしようもない。あまりにも無数なので侵入を止めるのは難しくて、建物の周りの井戸から吸い上げるという作業をしています。

 

東輝「では、凍土壁っていうのは何ですか?

木野「まさに凍土壁というのが建物の周囲1.5キロにわたって取り囲み、地下30メートルの深さまでつくっている氷の壁のことで、今99パーセントまで凍結が完了していて、あと残りはまだ規制庁が認めていない状況なんです。了解はしてくれているのであとは許可証が出れば凍結開始するだけです。

 

東輝「メディアは、凍土壁がうまく言っていないと報道していて、それに対する吉川さんの反論記事も読んだのですがあれはどういうことなんでしょうか?

吉川「地下水がきれいなまま海に流れてくれたらいいんだから、壁で覆ってしまおうとしたんだけど、この地下には複合した施設のいろんな配管が通ってるんですよね。そこにコンクリートの壁とか鉄の壁を打ち込んだらいろんなものを壊してしまいます。ということで悩んでいると、土木屋さんが凍土壁を紹介してくれたってわけです。最初は細いー30度のアイスキャンディみたいなのを1メートルおきにさしていきます。そしたら冷たいから霜が広がっていって、隣の霜とくっついて壁が出来ていくという仕組みです。氷を入れるんじゃないんですよ。

出典:東京電力福島第一原子力発電所説明8枚資料7月版(平成29年7月のもの)

 


木野「
凍土壁って土木工事では一般的に使われている技術で、東京の地下鉄の穴掘ったりするときに使われたり、高速道路の地下トンネルなんかにも使われているんです。
ただ、全長1500メートルの長さで5.6年という長期間やるっていう実例はないから、こんな大規模なのがうまくいくのかっていうことでマスコミは批判していましたね。

吉川「ただ、私自身はこれは最初からいい取り組みではないとは思っていて。というのも本当の問題は、デブリを取り出すことなんです。あの中が汚くない場所になれば、汚染された水だって生まれないのですから。

 

気になる廃炉の定義「75万立米をはるかに超える廃棄物のゆくえ」

東輝「廃炉っていうのは何をもって廃炉というんでしょうか?

木野「それはものすごく難しくて、要は定義上は、建物を全部取り壊して、グリーンフィールドにした状態を言います。でも、1Fがそれを出来るかっていうとそれは難しいですよね。事故起こしていない原発だったら、表面だけちょっと削ればコンクリートとかも再利用できます。でも福島原発は75万立米の廃棄物が今後10年間で出る予定で、しかもこれの中には原子建屋とかの廃棄物は換算されていません。これらをどう処理するかは全く片付いていない問題で、当然福島県は県外処分してくれ、というけれど、どこの県がそんなものを受け入れてくれるのっていう話ですよね。除染廃棄物でさえ受け入れてくれない他県がデブリや放射性廃棄物を受け入れてくれるわけがないわけです。

吉川「例えば方法としてはこんなのもあります。金属は表面を削ればきれいな金属になるので、あれを除染して、海外のマテリアルが不足している国に売るという手段です。実際にオファーもあるんですよ。でもその要求を実際に受け入れるとなるとうーんとなるのが現実ですよね。日本でダメなら海外に押し付けろという風にとらえられかねないからです。私は放射性物質が農薬のように冷静にみれるようになれば、そんな時代がちゃんとくれば、もう少し議論が進められるんじゃないかと思っています。

木野「そうですね。なので、これは本当に皆さんの、そして皆さんの子供たちの世代まで大きな問題だと思いますね。

東輝「ここに来るまで、廃炉の問題って技術的な問題だと思ってたんです。でも今お話し聞いて、やっぱり出てきた廃棄物を社会がどうやって受け入れ、処理していくのかを議論していかないと何も進まないんだということなんですね。でもこれをそもそも認識している人がすごく少ないと思いますが。

木野「社会的な重要性が大きいですよね。金の負担の面でも、22兆円誰が負担するのとかも、汚染水のトリチウムもそうだし、もう福島や原発だけの問題ではなくて社会全体の問題なんです。

 

基準ってなんだ「数値は相対的、残された心理的な問題。実例で示す安全性」

加藤「具体的に身体にどういう影響があるのかを知りたいのですが。

木野「身体への影響って永久にわからないんですよね。サイエンスはないことを証明するのは非常に難しい。つまり、放射線が人体への影響がないことを証明するのは不可能なんです。

一方で人体の影響がどれくらいあるのかについても、放射線というのはその人が日常的にかかわっているものなので、その原発によるリスクだけを数値で表すのは難しい。例えば食物に含まれているカリウム40が体内に3000ベクレルあると言われるけど、それはセシウム100ベクレルより影響が大きいです。でも皆さん食べ物は食べなきゃいけないから、セシウムは許容しないけどカリウムは許容するっていうわけですよね。だからこれも科学的な問題というよりは心理的な問題だと言えると思います。」

吉川「自分のものさしが不在な人に対して、その人がものさしを持てるような言葉を伝えてあげることが大事かなと思うんです。私は震災当時発電所にいたので被ばくはしていると。そういう人間が隣にいてどうだった?っていう話なんです。私は自分と同じような被ばくを受けて、今でもずっと元気な東電の職員をたくさん知っています。むしろ当時で言えば、「悪いことをしてしまった」という精神的なストレスのほうがあっという間に身体悪くしたものです。私たちが健康的に暮らしていく姿にも目を向けてほしいなと日々思っています。

木野「住民説明会でも住民の人に説明をすることがあります。あるとき、富岡町が5ミリシーベルト/年間で、このような場所に住民を戻していいのかという質問というか批判があがりました。その時職員は何も言えなかった。私は、私自身がこの6年間福島に住み続けて、200回以上原発に入っていて、この前人間ドック受けてきたが、どこも異常がありませんでしたってことをお話しました。もちろん私は一例でしかないし、すべての人間が同じ感受性なわけがないけども、こんな人間もいるのでご参考にと言って。こうして、最初は私みたいな人間が実例で示していくしかないのかなと思っています。

品川「ただ、一般論として、基準を知りたいっていう気持ちはわかります。その基準ってどうやって設定されているんですか?安全性なのか、仕方ない数値なのか、どっちから逆算してるんでしょう?原発従事者と普通の人の基準値の違いとかを見ててどうとらえていいのかわかりません。

木野「基準は安全の絶対性で決められているわけではないです。それに関してはデータがないのでどうしようもありません。ではどうやって定めているかというと、放射線の防護の考え方は、なるべく低くするというのが一般的な考え方なんです。原発作業員は一般人と同じ数値では現場で働けないから、その中でも一番低い数値で決めちゃう、という感じです。過去の原爆のデータとかも参考にはしてるけども、最終的にはエイヤで決めちゃうところはあります。それしか方法がないので。

吉川「原子力の世界にはALALAっていう考え方があるんです。合理的に可能な限り受ける放射線量を低くするという考え方です。

品川「数字は絶対的なものではなくて相対的なものなんですね。

吉川「そうです。なので、時に、震災時のように、個人の安全のための基準値が世界を守るための必要性と天秤にかけられてしまうわけです。そういったときに、それをやりすぎたのがチェルノブイリです。あの時、世界の安全のためにもう死んでもいいからということで人間を投入してしまった結果、どれだけ悲惨なことが起ったかはみんなわかっています。だから、わが国では、ALALAの鉄則のもと、どうしても作業を行わなきゃならない中でも年間100ミリシーベルトくらいが上限だろうって決めたんですね。暫定的に250ミリのこともありましたが、100ミリが0.5パーセントガン発症率を上げることを考えるとそこまで突拍子もない数字ではないことがわかっていただけると思います。

でも実際には数値で聞いても安心できないから、こういった不安を帰ってきた住民の人たちと飲んで話したりしながら、不安を共有していくんです。自分が震災後から今までも福島で生きてきたっていうのがあるから、それを見てくれて話を聞いてくれると安心する人もいますね。こうやって人間でデータを残していくことも大事かなと思っています。

西川「僕は今大学で研究もやっているんですが、技術をどううまくデザインしてお金に変えていくかっていう仕事をやっていますが、原発の話を聞いていてもそこにかい離があるように感じる。日本のマスコミってサイエンスライターは確実に不足しているのもあって、日本全体の問題だと認識できにくくなっている。その辺のサイエンスをどうデザインしていくかが重要になってきますよね。

 

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この後も、お酒を交えながら原発談義は続いた。

木野さん、吉川さんが何度も言った言葉が頭を反芻する。

「私には責任があるから」

東電という現場で働いていた自分に責任を感じる吉川さん。原子力を学んだものとして責任を感じる木野さん。

じゃあ、関係がなかったから、私たちに責任はないのだろうか。いや、そもそも福島原発は私たちに関係がなかったのだろうか。

今回の談義を通してわかったことは、もうこの原発の問題はとっくに、技術だとか科学だとかいう世界からは離れた議論を必要としていることだ。

「死ぬまで福島で廃炉を見届けます」

そうなんの迷いもなく断言した木野さんの表情、雰囲気、語気を思い出す。

この政治的な議論に、参加しない選択を果たして取れるだろうか。この人たちを目の前にして。

 

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朝。いわなの郷で、取れたてのいわなを炭焼きにしてもらった。

あまりのおいしさに一同大はしゃぎ。

 

魚を焼いてくれたおじさんはもう何十年もこの道の方だ。

「最近はだんだんと人も来るようになってきたよ」

嬉しそうに話す顔に、思わずこちらも顔がほころぶ。

スタッフの中には、福島県外から震災後越してきた人もいた。

「やっぱりここに来なきゃいけない気がして」

たとえ今が遅かったとしても、ここに来れてよかった。そう思った。

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いわなの郷を離れ向かった先は、「コミュタン福島ー福島県環境創造センター交流課」である。ここは、福島から避難していて戻ってきた県民が、原発をより「安心」して「正しく」理解できるように作られた施設だ。

中には、原発の仕組み、放射能とは、そういった基本的なことから、放射線が高くなる場所、といった生活に絡んだ原子力の知識までを幅広く解説している。

「美しい福島」を強調するムービーに、みえない脅威による不安を持った人は、どう感じる

のだろうかと考えさせられた。

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こうして、私たちが次に向かう先は、岩手・陸前高田だ。福島とはまた違う、どんな風景があり、どんな人がいるのだろうか。こうご期待!

福島の旅レポ第一弾を見たい方はこちらからどうぞご覧ください!
また、東日本大震災における復興の取り組み概要はこちらからご覧ください。

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