楽天の田代コーチ退団を孫子ならどう見る?

楽天三木谷オーナー過度な介入に現場混乱/記者の目

田代富雄コーチ

田代富雄コーチ http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150730-00000138-nksports-base より

「 楽天田代富雄打撃コーチ(61)が30日、楽天を退団した。

 打撃不振の責任を取り、球団へ辞意を伝え、了承された。球団は草野大輔2軍打撃コーチ(38)との配置転換を要請。しかし、昨年慰留された際にした、星野仙一シニアアドバイザー(SA=68)との約束が果たせなくなると固辞した。草野2軍打撃コーチが昇格し、平石1軍打撃コーチとの2人体制となる。」(上記記事より)

さらにこう続く。

「三木谷浩史オーナー(50)の現場への介入だ。試合ごとにオーナー、監督、コーチ、フロントが携帯電話でやりとりを行う。数パターンの打順をオーナーに提出し、意見を仰ぐ。そのため打順が固定できないのだ。」(同上)と。

 

これを読んだ私は「おのれ、三木谷オーナー!! 兵法を知らぬなっ!?」と地団駄を踏んだ。野村克也、星野仙一氏が鍛え、2013年には創立から10年も待たず日本一の名誉を得た極めて優秀な球団である。思えば、野村克也氏は「無形の力を養おう!」をスローガンに掲げた。この「無形の力」という言葉を聞くと「水」を思い出す。水は正方形のうつわに入れれば正方形の形を、円形のうつわに入れれば円形を、三角錐のうつわにいれれば三角錐形をとる。そのため歴史の兵法家たちは、「水」こそを軍隊のあるべき姿だとしてきた。どんな地勢にも状況にも対応でき、ひとたび戦場から脱すると決まれば蒸発するかのように消え去る。「水」は捉えどころがなく、きわめて臨機応変なことの比喩として使われた。この「無形」も同じだろう。

 

ところが、今日、東北楽天ゴールデンイーグルスは、「打順を固定できない」という状態に陥っている。確かに、「水」の様にチームを動かせるならば何の問題もない。少し前に巨人の原監督が打順をよく変えていたが、それでも巨人は安定(?)していた。ところが、三木谷オーナーがあまりにも現場に介入するために、現場の人間は混乱しているというのだ。もしこれがホンモノの軍隊ならばもはや壊滅状態だ。

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高名な『孫子の兵法』の第3章12篇に、国と君主と将軍、つまりこの場合、チームとオーナーと指揮官(監督、コーチ)の関係について記されている。

 

「夫れ将とは国の輔なり。輔周なれば則ち国は必ず強く、輔隙あれば則ち国は必ず弱し。故に君の軍を患わす所以の者は三なり。軍の以て進む可からざるを知らずして、之れに進めと謂い、軍の以て退く可からざるを知らずして、之れに退けと謂う。是れを軍を縻ぐと謂う。三軍の事を知らずして、三軍の政を同じゅうすれば、則ち軍士惑う。三軍の権を知らずして、三軍の任を同じゅうすれば、則ち軍士疑う。三軍既に惑い既に疑わば、諸侯の難至る。是れを軍を乱して勝ちを引くと謂う。」―孫子*

 

球団にあてはめて口語訳すると、

指揮官(監督・コーチ)というのはチームの補佐役である。補佐役とオーナーの仲が良ければチームは必ず強いが、すきま風がふいていると必ず弱い。オーナーがチームの害となるのは3つの場合である。まず、チームがやるべきことを、そうと知らないために、やるなと言い、やるべきでないことを知らないために、やれと言う。これらがチームを拘束していると言う。つぎに、チームの実情を何にも知らないのに、チームに対して指揮官と同じくらい影響力を及ぼそうとすると、選手たちはどちらに従うべきか迷ってしまう。最後に、チームがとるべき適切な行動を知らないのに、チームを指揮官と同じように指揮しようとすると、選手たちはどちらの命令に従うべきか疑いを持つことになる。チームが判断に迷い、命令に疑念を持つと、それは敵を利することになる。これはチームの指揮を乱し、勝利から遠ざかることである。

 

孫子はこのようにオーナーの現場介入に”NO!”と述べている。三木谷オーナーの現場介入は、現場を知らない者の無用な介入であり、勝利に貢献どころかむしろ勝利から遠ざかる行為であり、チームとしてははなはだ迷惑である。さらに、ファンからすれば迷惑この上なく、それだけで辞任して頂きたい思いである。おっと。

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さて、一度信用して指揮官に任命した以上は、その指揮官の考えを最大限尊重し、前線での決定は任せるべきである。これは楽天ゴールデンイーグルスに限ったことではない。野球でもサッカーでも、バスケでも変わるまいし、ましてや企業においても同様である。ただ、極めて重要な前提は、その指揮官が優秀であるということだ。任命された者が優秀でなかった場合、人事権を行使するのもいいだろう。そうは言ってもやはり、歴戦の田代コーチの退任は残念である。

 

*=『孫子』、講談社学術文庫、浅野裕一、51頁

今回も写真以外は「いらすとや」さんから。かわいいですね。

 

斉藤亮太【思想・哲学・宗教、政治、文化】

投稿者の過去記事

私に「社会不適合者だ!」と言ってくる人がいますが、それならば社会が私に合わせればいい。え? 合わせられない? そんなに能力低い社会なら変えないとねぇ。
座右の銘「まず疑ってかかるのが科学です」ー

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