愛国心溢れる方々なら日本史はきっと完璧なのだろう

皆さんは、日本史についてどれほどの知識があるだろうか。

歴史上の偉人や教科書に載っているような出来事であれば、誰でもいくつかは思いつくだろうが、こと大正時代以降の出来事となると自信を持って「歴史を知っている」と言える人はそれほど多くないのではないか、と思う。筆者自身は歴史教育については素人であるため認識の齟齬や知識不足があろうことは承知しているが、高校日本史の教育の有り方についての、小さな議論の提起としてこの記事をお読みいただけると幸いである。cfba1e83e06dd47ec49b25f9a8a7370c_m

日本史教育のカリキュラム

日本史は、中学校までの段階ではほとんどの人に学習する機会があるが、高等学校では世界史が必修とされ日本史は選択科目となっている。人によっては高校で日本史を学習しないこともあるだろうし、理系などでは特に、世界史・日本史ともに受験で使わないという人も多いだろう。

筆者の弟がまだ中学生だった時に、中学校の歴史の教科書を見せてもらったことがあったが、第二次世界大戦前後の日本政治の記述は驚くほど少なかった。カリキュラム上あまり踏み込んだものにできないというのは重々承知しているが、例えば東条英機に関する記述はあっても近衛文麿についてはほとんど記述がないなど、簡素であるゆえにある意味ではアンバランスな教科書になってしまっているように思われる。

日本近現代史を学ぶこと

日本史の中でも近現代史は特に、第二次世界大戦に向かっていく日本の姿、そしてその後の日本の軌跡という点において重要であろう。第二次世界大戦が起こったのは、軍部の暴走だけが原因なのではない。寄生地主制の下で貧農と地主の格差が拡大し、貧農は軍需産業で安く働くしかなかったことや、世界経済が悪化する中で、植民地が多くない日本は外に進出していかざるを得なかったこと、その時代のエリートは、学費の比較的安い防衛大学に進むことが現実的であったことなど、挙げようと思えばいくらでも出てくるであろう。

幅広い視点から日本の歴史について知ることは重要であるし、こういった過程を全く知らないまま政治や経済の世界に進出する人も中にはいるだろう。それは問題であり、危険ではないか。もちろん、私自身も公教育が万能であるとは思っていないし、歴史認識において記述が左右されたり、当たり障りのない表現の教科書になってしまったりといった問題があることも分かっている。しかし、学ぶ「機会を与える」ことはできると考える。様々な思考の前提として、ある程度まとまったカリキュラムで歴史を学ぶことは、決して無駄にはならないだろう。

想定される反論として、「世界史を学ばない学生が増えるのは、グローバル化の流れに反する」というものがある。確かに、グローバルな視点を持つ重要性が増しているのは事実だが、自国のアイデンティティや歴史を深く学ぶ機会がないことの方がより深刻であると私は考える。また近代以降について言えば、当時の国際情勢は重要なファクターとして(おそらくすべての日本史A, Bの)教科書で扱われており、私個人としては国際的な視点の欠如が危惧すべきレベルだとは感じていない。さらに「小中学校では日本史を中心に学ぶのだから」という意見もあるが、前述したようにそれでは不完全であると思う。

日本史必修化の動き

日本史の必修化については過去も何度か話題になったことがあり、神奈川県や東京都などでは高校日本史の必修化に向けた動きがあったこともあったが、全国的な動きには至っていないように思える。また、日本と世界の近現代史を統合して学習する「歴史基礎」という新しい必修科目を作ろうとする試みも行われている。これは世界史と日本史を学ぶこと双方のメリットを取り込んだものであり、暗記中心の授業からの脱却も含めて議論がなされているが、調べたところでは2014年6月の日本学術会議の提言以降の資料がほとんど出てこなかったので、あまり活発な動きではないのかもしれない。

 

普段歴史の教育に関して話題となるのは、中国や韓国などに関する歴史事件の記述や、愛国心を植え付けるための教育、といった事柄だろう。しかし、「日本史を学ぶ」ということそれ自体の重要性について、もう一度考えてみてもよいのではないだろうか。

seizee編集部

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当メディア『SeiZee』の編集部です。
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昨年末から、モスク、競馬場などへのインタビューに力を入れています。

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