【終戦企画】軍事同盟に日本の未来はあるか?

今、私たちは第二次世界大戦(以下、WWⅡ)の終結から70年の節目にいる。これはそれまで軍国主義国家と考えられていた日本が、軍国主義的傾向を廃してから70年と言い換えられる。ところが、昨今、いわゆる平和安全法案あるいは戦争法案と称される安全保障関連法案の議論において、日本が再び軍国主義的性質を帯びようとしているのではないか、との不安の声がある。当該法案を必要だと考える人びとは、「日本を取り巻く安全保障環境が変わった」ことを理由として挙げる。彼らがその例として挙げるのは、中華人民共和国だ。なるほど確かに、中華人民共和国の軍事的肥大化、領土的膨張主義(expansionism)は、ここ数年で驚くべきほど先鋭化している。そこで今回はこの国際情勢の変化を踏まえつつ、日本がとるべき方策を考える。

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まず、国際社会はアナーキーである。つまり世界の192ヵ国の各政府の上に統治機構―世界政府―はなく、各国を支配するものは存在しない。これをアナーキー(無政府状態・無秩序状態)という。このアナーキカル・ソサイエティ(無秩序な国際社会)において、どこかの国が軍備拡張(以下、軍拡)を始めたら、それは当然、他国侵略のための準備と見なされ、侵略を警戒する国々は対策を講じることになる。大切なことはここでどのような方策を採用するかである。考えられる方策のひとつは自らも並行して軍拡することだが、経済力の差に拠るので勝敗は明らかであり現実的でない。

 

そこで各国は、軍拡推進国に抗して軍事同盟を結ぶことによって、軍事面で同等か優位に立とうとする。日本もこの方策を採用しようとしている。アメリカ合衆国との同盟を緊密化し、「米軍との一体化」を推進するという政策にその一端を伺い知れよう。そして、「米軍との一体化」をするならば、当然集団的自衛権必要だよね、そうだよね、というロジックで安全保障関連法案が作成されたのだ。この軍拡推進国に軍事同盟をもって対抗しようとするのは、「勢力均衡」の考えであり、第一次世界大戦(以下、WWⅠ)とWWⅡの後に、完全に間違っていると確認され廃棄された。このような「勢力均衡」的立場に立つならばそれは明らかにアナクロニズムである。

 

WWⅡ後に「勢力均衡」に代わる安全保障体制として集団安全保障が生み出された。これは国際連合(以下、国連)に属するすべての主権国家が、侵略を自制し、紛争を平和的に解決し、もしどこかの国が侵略的行為を行った場合、攻撃を行った国に国連加盟国が総がかりで制裁を加えよう、という体制である。少数の国が侵略行為を行っても、圧倒的多数の国が制裁を加えるのだから、侵略行為を行った国は必ず負ける。したがって、侵略行為は起きない、と仮定されている。ご存知の方も多かろうが、今日的安全保障体制はこれだ。つまり集団安全保障こそが今日の国際社会秩序のメカニズムである。故に、中華人民共和国が軍拡をすすめ、日本を侵略しようというケースがあったとしても、集団安全保障システムが機能すれば日本が滅ぶことはないであろう。そのため、日本を守るために本当にすべきは集団安全保障がいつでも作用するようにすることだ。

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加えて、中華人民共和国が軍拡をし、日本も軍拡(防衛予算の拡大)をすると中華人民共和国は軍拡をさらに加速させ、それを受けて日本もそれに対抗せんとすることは想定できる。際限なき軍拡ゲームの始まりである。自分のことを自分で守ろうと武装すると、それを見たほかの人が不安にかられ、それに対抗的な方策を採用し、結果、以前よりも悪い状態に陥る恐れがあるというものだ。これは安全保障のジレンマと呼ばれるもので、自衛のための備えが自らを危険にさらす要因になるというのである。さて、やはり、日本がすべきなのは軍事的拡大ではなかろう。確かに、中華人民共和国の脅威は感じられる。しかし、それに対し同質のもので対抗しても何の効果も得られまい。とはいえ、実際的に何らかの対策が必要なのは言うまでもなく、直視せねばならない現実である。

 

 

※あえて「中華人民共和国」と表現したのは、「中華人民共和国」と「中華民国」のいずれが正当なる「中国」か、という問題を保留にするためである。読みづらくなり申し訳ありません。個人的には、「中華人民共和国」を(その意味も鑑みて)「中華」という略に、「中華民国」を「中国」にすべきだと考えています。

※※イラストは「いらすとや」さんから。やっぱりかわいい…

斉藤亮太【思想・哲学・宗教、政治、文化】

投稿者の過去記事

私に「社会不適合者だ!」と言ってくる人がいますが、それならば社会が私に合わせればいい。え? 合わせられない? そんなに能力低い社会なら変えないとねぇ。
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