人口問題と人道問題の差

9月30日、国際連合で安倍晋三内閣総理大臣が一般討論演説の後に行われた記者会見において、「シリア難民問題への追加の経済的支援を表明したが、難民の一部を日本に受け入れることは考えていないか?」と聞かれ、「今回の難民に対する対応の問題であります。これはまさに国際社会で連携して取り組まなければならない課題であろうと思います。人口問題として申し上げれば我々は移民を受け入れる前に、女性の活躍であり、高齢者の活躍であり、出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手があるということでもあります。同時に、この難民の問題においては、日本は日本としての責任を果たしていきたいと考えております。それはまさに難民を生み出す土壌そのものを変えていくために、日本としては貢献をしていきたいと考えております」と応えたと報道された。

(以上は、http://m.huffpost.com/jp/entry/8219324 参考)

http://www.unhcr.or.jp/html/2012/02/ws120221.html より

http://www.unhcr.or.jp/html/2012/02/ws120221.html より

 

この回答に関し、大きな批判が寄せられている。例えば、イギリスのガーディアン紙は、「日本は、シリアの難民を受け入れるより、国内問題を優先しなければならないと語った」(http://www.theguardian.com/world/2015/sep/30/japan-says-it-must-look-after-its-own-before-allowing-syrian-refugees-in )と報じたし、アメリカのThe Washington Postは「安倍氏:日本は難民を受け入れる用意はあるが、受け入れはしない」(https://www.washingtonpost.com/world/middle_east/abe-japan-ready-to-help-refugees-but-not-take-them-in/2015/09/29/0edeb0b2-6707-11e5-bdb6-6861f4521205_story.html より)と報じた。

 

安倍首相の「これはまさに国際社会で連携して取り組まなければならない課題であろうと思います。」という発言までは、問題なかった。というのもここまでは、難民の地位に関する条約(以下、難民条約)前文の「難民に対する庇護の付与が特定の国にとつて不当に重い負担となる可能性のあること並びに国際的な広がり及び国際的な性格を有すると国際連合が認める問題についての満足すべき解決は国際協力なしには得ることができない」という法文に一部合致し、各国が自国のキャパシティの許す範囲内で難民の人権を守ろうと取り組むのが、国際社会の基本的なスタンスだからです。しかし、その後、「人口問題としては…」と続け、「移民を受け入れる前に」やらなければならないことがある、と発言したことにより、「移民問題よりも、国内の人口問題の解決が先ですよ」と、もっと踏み込めば「日本の発展のために女性を、利用するので、難民はその次です」と理解されかねない状況になってしまったのです。

 

すなわち、国際社会に対し、「国内的人口問題が国際的人道問題に優先する」と言ってしまったようなものなのです。もし、「人口問題として申し上げれば、我々は移民を受け入れる前に、女性の活躍であり、高齢者の活躍であり、出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手があるということでもあります。同時に、」の部分がなければ、「具体的な回答がない」と批判されようとも、「人道問題を軽視している」というメッセージにはならなかったと推定されます。難民条約の土台となっている、世界人権宣言に対して安倍首相の発言は挑戦的意味を持っています。すなわち、安倍首相の発言は、世界人権宣言前文の「加盟国は、国際連合と協力して、人権及び基本的自由の普遍的な尊重と遵守の促進を達成することを誓約した」に、矛盾する発言と捉えられ、「人権問題」「人道問題」を軽視している、あるいは解決に実質的には協力しないという強力なメッセージになっているということで、そのために、世界中から大きな批判が浴びせられました。というのも、人口問題は一人ひとりの人間を数として捉え施政や経済のために用いるものですが、対して人道問題とは、400万人とも言われる難民を一人ひとりとして捉え、その尊厳を保護しようというものだからです。つまり、世界が「善」や「道徳」として行おうとしている取り組みだからということです。

http://www.unhcr.or.jp/html/2012/05/pr120525.html より

http://www.unhcr.or.jp/html/2012/05/pr120525.html より

 

さて、日本として難民を多く受け入れないとしても、我々日本人もインターネットを使ってできる支援があります。
アムネスティ・インターナショナル
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
Migrant Offshore Aid Station
詳細は、Tatsumaru Timesをご覧ください!

 

 

是非、ネットで簡単に難民の支援をよろしくおねがいします!

※アイキャッチ画像は、http://www.huffingtonpost.jp/human-rights-watch-japan/syria-boy_b_8164394.html より

斉藤亮太【思想・哲学・宗教、政治、文化】

投稿者の過去記事

私に「社会不適合者だ!」と言ってくる人がいますが、それならば社会が私に合わせればいい。え? 合わせられない? そんなに能力低い社会なら変えないとねぇ。
座右の銘「まず疑ってかかるのが科学です」ー

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