5分で読める安全保障シリーズ!Ⅰ~いま話題の安全保障法制って何がどうなってるの?~

無関心ではいられても、無関係ではいられない

皆さん、もう名前だけは嫌というほど聞いているでしょう「安全保障法制(法案)」。でも実際のところ、どれだけ把握できていますか?

毎日流れるニュースでは、本当に大事な審議の様子が流れていますが、実際のところ、全体像がよくわかっていないという方も多いのではないでしょうか。

「うーん、戦争は嫌だなぁ…。だけどいつまでもアメリカに頼ってばかりじゃあ…」

「中国やISISは確かに怖いんだ…。もし今のまま何かがあっても動けないのかな…」

「なんか“集団的自衛権”とか“周辺事態法”とか難しい議論ばっかりで、もう何がなんだかわかりません…」

という方は多いのではないでしょうか(というより、それが普通です。本当に複雑です)。

そこで今回は、いま国会で議論されている安全保障法制について、約1週間にわたって連載し、なるべくわかりやすく、概括的な整理をしていこうと思います。

第1回目の今日は、「安全保障と安全保障法制ってそもそもなんだろう?」ということから始めたいと思います。

私たちの生活そのものに関係する安全保障。無関心ではいられても、無関係ではいられません。

 

そもそも安全保障とは

皆さん、なぜ日本は平和にどこの国からも侵略されずにいるのでしょう。

先人の対外的な交流、民間レベルでの多様な信頼構築、たくさんの外交努力、そして、自衛隊と在日米軍の存在、たくさんの要素が日本という国の平和を維持しています。

しかし、特にいま国会で議論をしているように、「安全保障」という言葉をつかうとき、それは「国家・国民の安全を他国からの攻撃や侵略などの【脅威】から守ること」という定義をするべきでしょう。民間レベルの交流のことを「安全保障」といったりはしませんよね。(なお、安全保障を考える際は、「もしもの時」を想定しています。何よりも外交努力と信頼構築が大切であることは間違いありません。)

では、ここで次に問題になるのは、何をもって【脅威】というのか。実はこれも明確に定義付けがなされており、【脅威】とはすなわち、【能力×意思】によって決まるとされています。

日本に置き換えれば、それは日本に侵攻する能力と、その意思を持っていることが、日本にとっての【脅威】となります。

次の写真を見てください。これは、去年ivote関西が平和講義のためにお呼びした防衛大学出身の星野了俊先生にレクチャーしていただいた図です。例として、周辺諸国をあげていますが、日本は各国に大使館も置いているため、ここではISIS等も考慮すべきかもしれません。

写真2

星野先生によると、【脅威か否か】に対する正解はないそうで、論者によっても評価は異なるそうです。たとえば圧倒的な軍事力を持つアメリカやロシア、中国は【能力】の面では◯です。では意思はどうかというと、アメリカは同盟国であるので、ほぼありえないでしょう。ロシアは北方領土問題、クリミア問題で日本と対立するためわかりません。韓国はどうでしょうか。領土問題は確かにありますよね。それ以上に中国との間では非常に領土問題が深刻になりつつあります。

このように、実際に「安全保障」を考える上では、抽象論で考えるのではなく、その国の能力と意思を考え、【脅威】となりうるかを考えなくてはなりません。

 

安全保障法制というのは、自衛隊が活動するための法律

少しじっくりと安全保障というものを見てきましたが、いま国会で議論されている「安全保障法制」とは、この「安全保障」に関する種々の法案についての法制度のことをいいます。

ところで、なぜ「法制度」の整備が必要なのでしょうか?

それは、自衛隊が活動するには(正確には日本政府が公権力をもって活動するときには)、常に法律に根拠が必要だからです。自衛隊が海外に派遣される場合なども含め、全てその行動には法律上の根拠があるのです。

ですので、いま国会で議論されている法制度も、これから自衛隊がどのように活動していけるようになるのかの根拠となるものなのです。

さて、そのような法制度ですが、正確には、「平和安全法制整備法案」と「国際平和支援法案」の2つの法案が提案され、審議されています。この2つは、一部野党からは「戦争法案」という批判がなされ、これに対して「事実無根のレッテル貼りだ」という自民党からの反論がなされているものです。(個人的には、「平和」という言葉が異様に多い法案名もレッテル貼りな気もしますが。)

それでは、中身をみてみましょう。

写真3

1.平和安全法制整備案

平和安全法制整備案とは、安全保障に関する10本の法律の改正案を、1本の法案にまとめて一度に採択しようというものです。改正の対象となる法律は、写真3にある通りです。

実はこれが本当に複雑でややこしい。「◯◯事態」という似たような言葉がたくさん出てきたり、海外派兵/集団的自衛権の行使/集団安全保障/武力行使などなど、似て非なる概念がたくさん出てきます。(明日以降、1つずつ見て行きましょう)

 

2.国際平和支援法案

こちらは、新たに作られる法案で、いままでは「特別措置法」という形で行っていたイラク等への自衛隊の海外派遣を、恒久法の形で常時行えるものにするものです。

たとえばイラクに自衛隊を派遣する際には、個別具体的な「イラクへの自衛隊派遣」という事案のために「特別措置」としての「法律」を作っていました。

しかし、これを「恒久法」、つまり、「常に存在する法律」とすることで、わざわざ議会を通して特別措置法を通さずとも、自衛隊は活動することができるということになります。

「何かがあったときには遅いため、恒久法を用意する」という意見と、「何かがあったときの度に、民主主義のもと、議会を通す必要があるのだ」という意見が対立しています。

 

明日以降は、この2つの法案について、見ていくことになります。よく以下の図のように新聞等で報道されている「自衛隊の活動範囲はどう変わるのか」をきっちり整理しようと思います。

写真4

(写真引用:日経新聞社2015年3月18日付け-

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS18H0C_Y5A310C1MM0000/

 

これから私たちは安全保障法制をどう見ていけばいいのか

本当に複雑な安全保障法制ですが、これから見ていく視点を参考までにお伝えします。

法案を見ていく際には、①手続と②内容という2つの視点で見てください。

①手続については、「法案」ですので、議会の過半数の賛成が必要ですよね。ですが、単に過半数を取ったからという理由でその法案が形式的に正当化されるべきではありません。それは数の暴力になります。しっかりと審議・議論がなされたか、強行採決ではないか等、国民の代表である政治家がしっかりと実質的に正当な手続を取っているのかをみましょう。特に、今回の安全保障法制は、従来であれば2~3つの国会をまたいで議論すべき法案を、1つの国会で通そうという流れがあります。手続的に慎重な審議がなされているのかを見るポイントです。

そして、②法案の内容です。安全保障法制については、識者たちも含め、賛否両論です。識者たちですら結論がわかれているのは、どちらにも理由があるからで、あとはその理由のどれを重視し、賛成ないし反対というかです。

ですが、賛否両論があるからといって、どっちでもいいというわけではありません。国民一人ひとりが可能な限りしっかりと情報を得て、自分なりにどの要素・理由を重要視するべきかを判断してください。

そして、すでに賛成派の人は、反対派の意見に回ってみてください。反対派の人は賛成派の意見に回ってみてください。逆の立場の方々がなぜその立場に立つのかを考えることで、より深く問題を把握することができます。

これから約1週間、可能な限り私たちもたくさんの視点からの情報を整理・提供したいと思います。よろしくお願いします。

徐東輝

徐東輝【政治】

投稿者の過去記事

若者と政治をつなげるivote関西代表。ダボス会議グロバールシェイパー。京都大学法科大学院生として学ぶ傍ら、政治教育・メディアのあり方を探っています。日韓×憲法の視点で執筆中です。

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