5分で読める安全保障シリーズ!Ⅱ~この法案の何が問題なのか~

 2つの法案なのに、実際は本当に複雑

昨日に引き続き、安保法制シリーズをお届けします!

さて、まずは昨日の復習ですが、今国会では、安全保障法制に関して、「平和安全法制整備法案」と「国際平和支援法案」とういう2つの法案が審議されていまして、通常であれば複数の国会をまたいで行う議論が一気に進められています。しかし、この法案は本当に複雑で、たくさんの類似の概念が出てきたり、国際法と国内法で異なる概念であったりと、国会議員の方々も「分からない」という意見が出るほど、学者の方々も「どこまでか線引が非常に曖昧」という意見が出るほどになっています。

今日はその中身をみていくことにしますが、できるかぎりに分かりやすい説明に努めるものの、事実として分からないところはわからないと申し上げたいと思います。

 

この法案は自衛隊の活動の範囲を広げるもの

さて、昨日もお話した通り、安全保障法制とは、自衛隊の活動の根拠になる法律です。そして、明確に与野党で一致していることは、この安保法制が「自衛隊の活動の範囲を広げるもの」という点です。

自衛隊の活動は、武力攻撃事態における自衛活動のほかに、災害救助・支援/国際平和協力活動(PKO等)/教育事業などがあります。

そして、今回はその中でも安全保障に関わる分野で活動が大きく広がります。読売新聞が出している写真1を参照してください。他のメディアでもこのようなまとめ方をよく目にします

そのような法案に対して、反対意見が出ている根拠は以下の通りです。

①法案が憲法違反ではないか。仮に法案を通すとしても、その中身を憲法に適合するようなものにするべきではないか。

②法案の中身(要件等)が非常に曖昧で、政権の裁量(解釈)によって恣意的な判断がなされるおそれはないのか

③あまりにも急ぎすぎで、十分な審議ができていないのではないか

④不必要な拡大ではないか。妥当な広がりなのか。

これらは全て異なる観点からの指摘ですが、たとえば③は①や②を議論するための時間がもっとほしいという点でつながっています。

賛成/反対の議論を把握するためにも、まずはこの法案が可決されれば、どのように自衛隊の活動が広がるのかを確認していきましょう。

 

自衛隊の活動がどう変わる?

いろいろとテレビや新聞メディアを探り、もっとも分かりやすいと感じた整理がつぎのようなものです。(こちらは上越法律事務所から引用しました。ありがとうございます)。

より鮮明な図は、ぜひ上越法律事務所のWebサイトへ。http://j-c-law.com/anpontan1/

安保法制 まとめ図

まず、大きく分けて自衛隊が「紛争時」に出て行く場合と、「平時」で活動する場合に区別があり、前者では「武力行使」と「後方支援」、後者には「武器使用権限の拡大等」としてそれぞれについての活動が広げられます。

「後方支援」と「武器使用権限の拡大等」は、さらに、日本への影響(日本に重大な影響が及んだり、存立が脅かされるような場合等)を考慮する場合と、そうではないものとで分けられます。

一番上①にある通り、日本に対する武力攻撃がなされた場合というのは、従来の個別的自衛権の行使によって対応ができるもので、ここは現行法でも認められているものです。これが認められていることによって、領土侵犯に対する自衛隊の対応が認められているのです。

問題は、②以下です。その問題点は図の中にあるとおりですが、問題提起としてまとめたいと思います。(確認ですが、今国会で議論されているのは、「集団的自衛権の行使」ではなく、それを含めたこの安保法制全体です。集団的自衛権の話でしょ、と思っている方が意外に多かったですので確認させていただきました。)

今日は問題提起まで。

 

それぞれの問題点~集団的自衛権・武力行使について~

去年の閣議決定以降、集団的自衛権の行使については非常に大きな議論を読んでいます。

①まず、憲法9条に反するという意見。これは憲法を最も研究している憲法学者らも多くがそのように述べており、まさに今日開かれた憲法審査会でも、なんと与党側の参考人も含め全参考人が「集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案について“憲法違反”」との認識を表明しました。

特に9条2項が明確に否定している戦力の保持と交戦権との関係で、説明がつかないという意見が強くあります。(詳しくはシリーズ後半に)

その他に、

②さらに、集団的自衛権行使も含め、武力行使のための要件があまりにも曖昧だという意見。政府は「自国の平和を維持し、その存立を全うするための必要最小限度の武力の行使」であれば、憲法9条のもとでも認められると解釈し、この解釈までは合憲とされていますが、実際にその武力行使をするための3要件が非常に曖昧だという意見があります。

特に、図の②にある通り、「存立危機事態」がその要件の一つとなっているのですが、国の存立や安全が脅かされたり、国民の権利が侵害されたりする明白な危険というものがいかなる場合なのかが曖昧とされています。

この要件にあてはまれば、日本に対する攻撃ではなくても武力行使が認められるために、いかなる場合に武力行使ができるのかを明確にしなければなりません。

③武力行使のために自衛隊が出て行くエリアに地理的制限がない

④例外であっても、議会の承認が事後的でもよい場合がある

⑤国際法違反に与する可能性がある(たとえば、アメリカの先制攻撃に対して相手方が反撃した場合であっても、日本の武力行使は認められる)

などの意見があり、国会では十分な審議が求められます。

 

それぞれの問題点~重要影響事態/国際平和共同対処事態について~

次に、「後方支援」にまつわる話です。

なぜいまここで「」を使ったのかというと、そもそも「後方支援」というのは、戦力の保持と交戦権が否定されている日本が、紛争地域での他国支援をするために生み出した独特の概念であって、国際的に使用されている言葉ではないためです。

①そして、まさにそこが議論の中心になっています。どこからどこまでを後方支援とするのかということは、日本政府の言葉ゲームみたいになっていて、実際には明確に区別ができないのではないかと。

②あるいは、そもそも後方支援という概念は国際法にはなく、「兵站」(戦場で後方に位置して、前線の部隊のために、軍需品・食糧などの供給・補充や、後方連絡線の確保などを任務とする機関)として考えるべき以上、敵国からすれば、自衛隊もすでに「敵」であり、攻撃対象になるのではないかという指摘がされています。なお、戦闘地域においては、戦闘能力に劣る後方部隊が攻撃対象になることはままあることで、現にアフガニスタン戦争でも、兵站活動を担ったNATO軍に1000人以上の犠牲者が出ました。

③~⑤は集団的自衛権と同じように批判されています。

また、同じ後方支援であるにもかかわらず、図③重要影響事態と図④国際平和共同対処事態という概念を用いて、異なる要件で二つの後方支援の形を設けていることにも批判があります。つまり、「あてはまった方を使って派遣をすればいい」との思惑があるのではないかというものです。

この辺りの「事態」の話は、次々回のシリーズで詳しくお話したいと思います。

 

この法案は、日本が世界に対して発するメッセージ

今日は問題提起としてまとめてみましたが、上手くまとめられたかどうかは非常に不安です。必ずしも網羅的ではないでしょうし、より掘り下げなければならないところもあるかと存じます。

いろいろと文献やメディアの論評をみて感じることは、つまるところ、日本も「世界の平和の維持」のために国際的に協力すべきことがあり、そのレベルを話し合っているのですが、その中身があまりにも複雑で、かつ、性急だなと感じます。もちろん、日本一国だけの平和というのは憲法前文で否定されていて、国際的な平和のために日本は活動していかなくてはなりません。その際に、どこまでをすべきで、しかし、どこまでが今の憲法で認められているのか。

やはり、複雑ではあっても、国際社会に対してこれから日本がどういうメッセージを発していくのか、一人ひとりが思考し、意思を持たねばならないと痛感しています。

 

 

徐東輝

徐東輝【政治】

投稿者の過去記事

若者と政治をつなげるivote関西代表。ダボス会議グロバールシェイパー。京都大学法科大学院生として学ぶ傍ら、政治教育・メディアのあり方を探っています。日韓×憲法の視点で執筆中です。

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