5分で読める安全保障シリーズⅢ~安保法制の議論は何がズレているのか~

あまりにも似た言葉「◯◯事態」

安保法制シリーズも半ばにさしかかりました。

今日は◯◯事態ってなんだよ、おい!の気持ちをなんとか和らげるとともに、もっと本質を話そう、ということを皆さんにお伝えしたいと思います。

さて、まずは復習ですが、今国会では、安全保障法制に関して、「平和安全法制整備法案」と「国際平和支援法案」とういう2つの法案が審議されていまして、昨日も出した図を一枚目に置いてみました。

参照:上越中央法律事務所(http://j-c-law.com/anpontan1/

写真1

政府与党は、「平時から有事まで、切れ目のない安全保障法制」の実現を目指し、法案の審議を進めています。

今日はその中でも、似たような表現で用いられる「◯◯事態」を簡単にお話します。

上の表にある通り、【紛争時】武力行使→後方支援・協力支援→【平時】武器使用等という段階があり、それぞれに自衛隊の活動について、「~という事態に至った場合」に武力行使なり、後方支援なり、武器使用なりを行うということになります。

そして、武力行使のために必要なのが「存立危機事態」、後方支援のために必要なのが「重要影響事態」、協力支援のために必要なのが「国際平和共同対処事態」となっています。(わざとややこしくしてるだろ、っていうくらいよく分からない言い方ですよね。)

 

 武力行使のときの要件の一つ「存立危機事態」とは…

シリーズ第2回目で簡単に触れたように、(集団的自衛権の行使も含め)武力行使にあたっては、新3要件といわれる条件を満たす必要があります。

写真2

そして、その中の要件の一つが「存立危機事態」です。

存立危機事態とは、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」です。(写真3参照)

写真3

なんか、めっちゃやばそうな定義ですよね。だけど、この条件に当てはまるようなときがどんなときかがこれだけでは一切わからない。だから、いま国会では喧嘩のように議論がされています。

当初、首相は「経済的な打撃が与えられた場合」にもこの要件にあてはまるというようなニュアンスで話していましたが、今国会の答弁で、「単に国民生活や国家経済に打撃が与えられたことや、生活物資が不足することのみで存立危機事態に該当するものではない」としました。国民の生死に関わる深刻、重大な影響が生じる場合にはこれにあたり、その場合には例外的に中東のホルムズ海峡の機雷除去をすることができると述べています。

(いやいや、そもそもホルムズ海峡での機雷除去なんて実際にはできないだろう、という実質論はまたシリーズ後半で。)

最も深刻度の高い自衛隊の活動が「武力行使」ですから、その要件に当てはまる場合は極力狭く解されなければなりません。

 

後方支援のための要件の一つ「重要影響事態」とは

次に、新しく概念が広げられるものが「重要影響事態」です。

写真4

他国軍の後方支援ができる場合というものを、これまで日本は「周辺事態」という概念で認めてきました。つまり、

「日本の平和と安全に重要な影響を与える日本周辺の地域における事態」の場合には、自衛隊は他国軍の後方支援ができるとしてきました。

これを、本改正案では大幅に拡大し、「重要影響事態」、つまり、「そのまま放置すれば、我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態など、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」には自衛隊が後方支援活動を行うことができるとしました。つまり、地理的制約がなくなります。

なお、「後方支援」なる概念は、戦力の保有と交戦権を否定されている日本国が他国軍を支援するために生み出した独特の概念で、国際法にはないものであること、戦争においては兵站(日本のいう後方支援)の方がしばしば死者が多いことはシリーズ第2回目のとおりです。

 

協力支援~国際平和共同対処事態

も~、疲れた!

下の図を見てくれれば大体わかるとおもいます。

写真5

もうね、こんな感じでいいです。詳しいのを知りたければググってもらえればいいかと思いますが、もうなんか何がどう違うのかっていわれても、この図にあるとおりです。

なんでこんな感じになってしまったかというと、全然こんな本質じゃないことを議論しても意味ないなぁと感じてしまうからです。

 

本質を話そう。考えるべきは、「平和」のために日本は国際社会にどう介入していくのか。

平和ってなんでしょう。

いま国会で議論されている、「後方支援とはどんな活動ですか?」「戦闘地域には行くんですか?」「自衛隊のリスクは高まるんですか?」「国連決議による歯止めはきかせるんですか?」とか、なんかズレています。(ずれているからといって不要というわけではないのですが。)

だって、「後方支援ならよい」、「非戦闘地域ならよい」、「自衛隊が血を流さないのならよい」、「国連決議があればよい」とかそういう話じゃないでしょう。

日本が「平和国家」として、どういう形で国際社会にメッセージを発し、どういう形で国際社会に介入していくのか。その際、これを決めるのはアメリカではなく、国連ではなく、NATOではなく、日本の国会です。

日本一国だけ平和だったらいいっていう考え方がおかしいというのは、周知のとおりです。本当に、「平和」のための必要な介入ならするべきです(従来の自衛権の行使を超えた、積極的平和主義のもとでの自衛隊の活動拡大を念頭に置いています)。しかし、その本当に「平和」のために必要な介入なのかどうかをどう民主主義的議会のもとで決めていくのか、誤った他国の介入に対していかに断固たる拒絶を示すことができるのかを話してほしい。逆に、本当に必要ならばGoサインを出せる仕組みづくりを慎重に作り上げていってほしい。

その議論のための枠として憲法があり、民主主義がある

その議論の枠組として、「憲法」があり、「民主主義」があるはずです。

日本という国が目指すべき方向性、できることとできないこと、それらを大枠で決めているのが日本国憲法であり、その枠を超えることはできません。もしこの枠を超えるならば、枠組みを変える=憲法改正をするしかありません。

憲法は権力者の暴走を止めるものですが、本当は「民主主義」が機能して、権力者が暴走しないことが一番いいはずです。そのための「民主主義」です。法律による歯止めをこの国会ではたくさんつくろうとしていますが(それも大事です)、それと同じくらい、民主主義をどれだけ機能させられるか。たとえ、法律の歯止めがあって、法律の要件を満たしたとしても、自動的にGoではありません。たとえ法律の要件を満たしたとしても「自衛隊が出て行くべきではない」という判断ができるのが議会であり、それが「民主主義」です。

これを機能させられるのは誰か。

言うまでもなく、国民一人ひとりです。

なんかキザなこと言いましたが、何よりもまず、民主主義をはじめましょう。

写真6

 

徐東輝

徐東輝【政治】

投稿者の過去記事

若者と政治をつなげるivote関西代表。ダボス会議グロバールシェイパー。京都大学法科大学院生として学ぶ傍ら、政治教育・メディアのあり方を探っています。日韓×憲法の視点で執筆中です。

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