私の両親は、テロで死にました。

2015年11月14日土曜日。

「夏美、パリが大変なことになってるよ!」

飛び起きる。

パリで大規模なテロ。

情報の少なさに戸惑う。

不安が募る。

8歳からフランス語を学習している私にとって、パリは思い入れの強い場所。

現地に住んでいる友人たちも多い。

何が起きているんだ。誰か教えてくれ!

その夜は徹夜でAFP通信やFrance24、BBC、ロイター通信などのニュースを追った。

そして現地に住む友人たちからの返信を待つ。

何かをしていないと頭がおかしくなりそうだった。


一睡もできないまま4日目。

ずっと返信がなく心配していた友人からようやくメールが届く。

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“moi je vais bien mais mes parents”

(私は大丈夫、でも両親が)

“quel es leur problème? qu est ce que ca veut dire?”

(ご両親どうしたの?どういう意味?)

“ils sont morts, ils étaient dans le cafe”

(死んでしまったの。カフェにいたのよ。)

“god.”

(うそ…)

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思考が全停止した。

喉の奥に何かが突っかかって、

息ができなかった。


私と彼女は東京で出会った。

彼女がご両親と家族旅行で東京を訪れた時、私が代表を務めるボランティア団体PIPS JAPANの無料観光ガイドサービスを利用してくれたのだ。おしゃべりなお母さん、のんびりしたお父さん、知的好奇心の旺盛な娘さんのとても仲のよい3人家族だった。ガイドの後、アイスクリームをご馳走してくれた。

ガイドとゲストが再会することはほとんどない。私たちは人生で二度と会わないであろう人のために真心をこめた精いっぱいのおもてなしを施す。もう二度と会えなくても、「彼らがこれからも私たちとの思い出を胸にこの地球のどこかで生き続けてくれる」ということが、私たちの心を支えている。

信じたくなかった。お二人が亡くなったことを。

もう二度と会えなくてもいい。ただ、生きていて欲しかった。

私はその日、自身のFacebookにこう投稿した。

「PIPS JAPANの活動を続けるということは世界中に友達ができるということで

それは世界のいい部分も悪い部分も直に自分に影響を及ぼすようになるということで

今までもウクライナ侵攻とかあったけどこんなに直接的で深刻なのは初めてで

自分の身近な人が、テロによって、突然、理不尽に、残酷に、命を奪われる、ということ

本当に辛すぎて、悲しすぎて、怖すぎて

突然だし、全く予想してなかったし、なんか感情が整理できない

頭も体も疲れていて、休息を求めているのに、眠れない

さすがに3日寝れないのはやばい

体力がどんどん削られてく。しんどい」


正直、あれから半年以上経った今も、未だにショックが大きすぎて感情の整理がついていない。この記事を書きながらも、涙をこらえることができなかった。

今日、テロの発生頻度は年々高くなっている。それでも、日本はまだ治安の良い方だ。だから、私たちはどうしてもテロを「マクロ的視点」で捉えてしまう。世界情勢の一現象として、大きな歴史の流れの一部分として、遠い世界の混乱の一端として、テロを捉えてしまう。ニュース番組のコメンテーターの話を聞いて、わかった気になって終わってしまう。

そうじゃない。

人が死んでいる。傷ついている人がいる。もう戻らない家族がいる。悲しみに暮れている人がいる。

私たちはいつから、無慈悲に命が奪われる世界に何の疑問も抱かなくなってしまったのだろう。

全てのニュースにおいて、その裏側に実在する人々に思いを馳せる「想像力」を忘れてはならない。

 11月14日、過激派組織「イスラム国」は、フランスの首都パリで発生した同時多発攻撃について犯行声明を出した。写真は襲撃を受けたレストラン前で犠牲者を追悼する男性(2015年 ロイター/Christian Hartman)

11月14日、過激派組織「イスラム国」は、フランスの首都パリで発生した同時多発攻撃について犯行声明を出した。写真は襲撃を受けたレストラン前で犠牲者を追悼する男性(2015年 ロイター/Christian Hartman)

銃撃されたパリのコンサートホール近くの路上で14日、抱き合う人

銃撃されたパリのコンサートホール近くの路上で14日、抱き合う人(www.asahi.com)

 

冨田 夏美

冨田 夏美PIPS JAPAN 創設者・代表

投稿者の過去記事

早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科一年生。外国人観光客に学生が外国語で無料の観光ガイドを提供するボランティア団体 PIPS JAPAN 創設者・代表。2016年5月にNHKスペシャル「18歳からの質問状」に出演したことをきっかけに、若者と社会問題をつなげるために自分にできることはないかと思い、SeiZeeライターに。その他にも2つのレギュラーラジオ番組を持ち、TEDxKids@Chiyoda 2014 Kids Speakerも務めるなど、メディアでも幅広く活動中。お問い合わせは 、tomitanatsumi.jacqueline@gmail.com まで。人生相談・恋愛相談・進路相談・記事に関する意見などなど、お気軽にどうぞ!

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