「アメリカの正義」から見る。「戦争」も「平和」もあなた次第。

こんにちはライターの齊藤です。

今回は特別企画が「アメリカを知る」をテーマとしていることもあり、東海大学でアメリカを専門に研究をなさっている本田准教授※1から貴重なご意見をいただきました。
アメリカでは全世界の注目の大統領選も終わり、ドナルド・トランプ氏が次期大統領に決定したこともあり、「アメリカを知る」ことは今重要なことなのではないでしょうか。

「アメリカの正義とは何か?そこで犠牲になる人、得をする人はだれか」についての本田准教授へのインタビューを書きたいと思っております。

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※本インタビューは大統領選前に行われたものです。タイムリーでない部分はご了承下さい。

 

ーーアメリカの正義とはなにをもっていうのか、またその正義が否定的な影響を及ぼすのかについてご回答よろしくお願い致します。

 

キリスト教なしでは語れない、アメリカの正義「善悪二元論」。

17世紀初頭、英国人が北米大陸に入植します。プロテスタントの入植者は、以前からそこで居住していたネイティブ・アメリカンの助けを得ながら生活を始めましたが、次第に自分たちの領土を拡大するようになります。彼らは「文明化」の名のもと、ネイティブ・アメリカンの土地を略奪し、殺戮を重ね、白人の領土を拡張していきました。また、19世紀には、「明白な宿命(manifest destiny)」として西部開拓とネイティブ・アメリカン虐殺を正当化しました。「神に与えられた使命」ですから、何をやっても許されると考えたのです。

このようなプロテスタントの選民思想は20世紀以降も存続します。国内では、有色人種に対する白人の優越性を訴える論理として、海外では、軍事攻撃や帝国主義的侵略を正当化する論理として。米国が語る正義は、キリスト教と切り離せないことが多々あります。2001年9月11日、同時多発テロが発生したあと、ブッシュ大統領が「十字軍」に言及しながら対テロ戦争を誓いましたが、イスラム教に対する報復を含意する発言をして国内外から批判を受けました。

このような場合、「それは正義ではない」と批判しても、米国は認めるはずもありません。「神の御心」は絶対的に善であり、それに反するものは絶対的に悪であるからです。このような善悪二元論は、特に米国の外交や軍事に強く反映されているように思います。

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ーー 一応お聞きいたします。先生は大統領選ヒラリー・クリントン、ドナルド・トランプ両候補のどちらに賛成ですか?

クリントン氏も一貫はしていない!?

どちらも積極的に支持できません。まずトランプ候補は言うまでもありません。露骨な女性蔑視的な発言をし、移民排斥を訴えるトランプ候補は、世界の指導的立場にある米国大統領の資質を著しく欠いていると言わざるを得ません

他方、クリントン候補については、トランプ候補よりは幾分よいかもしれませんが、優れた分析力と強力な指導力が求められる米国大統領の資質を持ち合わせていないというのが私の理解です。先ほどの話に戻りますが、かつてブッシュ大統領の対テロ戦争にクリントン候補は加担しています。ブッシュ大統領は、テロ組織アルカイダとのつながり、大量破壊兵器の開発・保持を理由としてイラク戦争の正当性を訴えました。実は最初から国内外でブッシュ大統領による主張の真偽が疑われていましたが、2002年当時、上院議員だったクリントン候補は、連邦議会でイラク武力行使を認める決議に賛成票を投じました。政治家としてあまりにもナイーブすぎます。後に「私はだまされた」と述べ、自らの投票行動を後悔しましたが、ブッシュ大統領やメディアの情報操作に簡単に流されるようでは、大統領としての資質を著しく欠いていると言わざるを得ません。
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軍事・外交に通じるバーニーサンダース

ちなみに、私が支持していたのは、民主党予備選に立候補したものの、クリントン候補に敗れたバーニー・サンダースです。1960年代の公民権運動(人種差別撤廃を訴える運動)やベトナム反戦活動に参加しており、口だけではない、実践的な政治家です。公民権運動の参加者は白人暴徒のリンチに遭い、クークラックスクラン(KKK)のテロ行為を受けるリスクがあったことを考えると、人種平等の実現を訴えるサンダースの姿勢は本物であると評価できます。

また、1991年に勃発した湾岸戦争の際には、誰もいなくなった連邦議会で湾岸戦争に反対する演説をしたことでも有名です。イラク戦争にも反対を表明しています。イラク戦争は、米国を誤った道に導き、多くのイラク市民を殺戮し、米国に対する国際社会の信頼を著しく損ないました。イラク戦争は米国の国益に大きな損害をもたらしました。米国は「正義の戦争」に反対するだけで「非国民」の扱いを受け、更には暗殺の脅迫を受けるような国です。そのようなリスクにもかかわらず、誤りだらけのイラク戦争を真っ向から批判しました。クリントン候補とサンダースのどちらが軍事・外交に通じているかは明らかです。
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また、クリントン候補は、外交、軍事、安全保障に関する問題だけではなく、貧困問題、マイノリティ問題、環境問題などにおいても、一貫した立場をもっているとは評価できません。とはいえ、もはや開き直って暴走しまくるトランプ候補よりはクリントン候補の方がよいです。

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ーーアメリカのことも含め先生のお考えになる理想の正義についてお聞かせいただけたらありがたいです。

私たちが戦争を引き起こす?「成熟した市民」ってなんだ?

米国に限りませんが、ほとんどのひとは「自分が正しい」と考えがちです。そして、みんなが自分の「正義」が絶対的に正しいと信じ、独善的な思考停止に陥り、「正義」の原理主義へと暴走するとき、その「正義」は別の「正義」と衝突します。つまり、戦争です。

素朴な平和主義を訴えるつもりはありませんが、少なくとも戦争は戦勝国であろうと敗戦国であろうと大きな損害を受けます。政治的にも経済的にも戦争は合理性を欠きます。そして、当然ですが、最も大きな苦しみを背負うのは市民です。戦争は多くの不正義を生みます。このような不正義を回避するためには、政治指導者の合理的で理性的な判断力に期待するのはあまりにも素朴でしょう。むしろ、私たちが考えるべきことは別にあります。政治指導者の暴走を許すのは、実は社会不安が蔓延するなかで無力感と思考停止に陥った大衆です。かつて、ドイツで全体主義体制が生まれたのは、ヒトラーという独裁者の存在だけでは説明できません。民主的な選挙がナチス党が勝利した歴史的事実から、私たちは学ばなければならないことがたくさんあります。多角的思考力、豊かな国際感覚、自分とは異なるひとたちと議論を重ねることができる、成熟した市民を涵養することが求められています。

ーー先生貴重なご意見ありがとうございました。

試される、あなた自身の力。

さて先生の意見を踏まえて現学生である私がアメリカの正義とは何かについて、考えることはアメリカに敵対心を向かわせている小国は生き残れないのではということです。
先生のご意見にもあるように、自分の正義が正しいと考えてしまうため、それが強い国が主張した場合それが正義になってしまう。
弱肉強食という言葉はあまり好きではありません。しかし今の世界はまさにそれそのものであることは否めないのです。平和が正義とわかっていても、それぞれの「平和」がぶつかり、その逆方向に向かってしまうことが多いのがこの世の中です。

平和というパズルはまだ完成には程遠いと私は感じます。

この先このパズルを完成させるのは私たち若者世代です。ではどうすればいいのか?難しいことですが、先生のご意見を踏まえ考えてみたところ、平和の実現のために私たち日本に住む若者がすべきことを考えてみました。
出た結論は、私たちが成熟した市民として政治を見つめ、日本が強国と繋がり協力しあい、より!良い日本を作っていけるように協力することにかかっているということです。これからの日本はどうなるかわかりませんが、それでも私たちは、先生もおっしゃっているように多くの情報に流されることなく、知恵をしぼり、自分たちの思う「正義」を信じ進んで行くしかないと考えます。

しかし、先生がおっしゃるように、「正義」は人それぞれ違い「正義」と「正義」はぶつかってしまうこともあります。では、それはどうしたらよいのか。
そのためには、皆がいい意味で同じ方向を向ける国づくりにかかって来ると思うのです!同じ方向を向けば正義も同じ方向を向くのではないか?と考えるからです。しかし、その正義が時に暴走をすることもあります。その暴走をさせないためには、よき指導者が必要で、その指導者が誤った方向を向いたと感じるときに、声をあげる「成熟した市民」が必要です。良い国とは、みんながいい意味で同じ方向を向き進もうと努力している国と感じます。

国というパズルのピースは、やはり私たち国民なのですから。

長くなりましたが、ありがとうございました!

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協力(※1):東海大学 観光学部 准教授 本田量久(ほんだかずひさ)先生

主にシティープロモーションや地域デザインなど、まちづくりの事を専門としている他今回のようなアメリカについての研究を行っている。

著書

斉藤 かずき

斉藤 かずき[観光•言葉]

投稿者の過去記事

都内私大観光学部の三年生です。
0.数ミリでもいいから、誰かの心を動かせたらをモットーに学生ライターとしての活動を始めました!
日々疑問に思ったことを、文章に起こして皆さんはどう思っているんだろうか?ということを知りたくて始めました。
吃音症を幼い時から患っており上手く話せない時もあります、ですが吃音のおかげで知れたこともあります。吃音症方々も、良ければお話ししませんか?
多くの方との繋がりを得られますように。
Mail:kazuki_boyo21@yahoo.co.jp
Twitter:kazuki15xxxx

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