「七面鳥にごちそうを!」ー米・感謝祭の最前線に迫るー

 

 

今回は、アメリカの伝統の近年の変容を通して、アメリカのおもしろさを紹介したいと思います。

 

アメリカでは、第4木曜日にサンクスギビングデー(感謝祭)という祝日があります。

今年は11月24日。

アメリカで2年間動物法を学んでいた筆者も、その雰囲気を味わったことがありますが、このサンクスギビングデーは少しずつ変わってゆくかもしれないのです。

 

サンクスギビングデーは、家族や親せきが集まり、アメリカではクリスマスに次ぐビッグイベント

日本でいうと、家族と楽しみながらゆっくり過ごす、お正月のような雰囲気があります。

アメリカの祝祭日になったのはそう昔ではなく、

1863年、当時の大統領リンカーンが、内戦で荒む心を癒すイベントとして定めたとのこと。

 

さて、そんなサンクスギビングデーをお祝いするマストアイテムとされるのが、

七面鳥。

ほとんどの家で、七面鳥の丸焼きが焼かれ、カボチャパイを食べます。

この日のために、アメリカで絞められる七面鳥の数は4500万羽に上るといわれます。

 

けれども最近、ものすごい量を生産するために七面鳥が置かれている環境に、

疑問を持つ人が増えてきています。

畜産工場における七面鳥は、経済効率性を実現するために少しでも早く成長するように、選択されてきました。

その結果、歩けないほどに急速に体重が増えて歩けない個体も。

密度の高さゆえに互いを攻撃しあってしまうため、共食いを防ぐ目的でくちばしと爪の一部を切断します。

 

そこで、歩けない大量の七面鳥が蹴られたり投げられたりしている畜産工場での映像を見て、

「もう食べたくない!」 

という人たちが増えているのです。

 

じゃぁサンクスギビングデーをどう過ごすの? 

 

筆者は、七面鳥を食べないという決断をしたアメリカの友人の誘いで、

サンクスギビングの朝、オレゴン州ポートランドの公園をジョギングして七面鳥の保護に寄付をする、というチャリティーイベントに参加しました。

参加費(確か)20ドル(約2000円)を払い、

さわやかな秋空のもと、それぞれのペースで数時間走ったり歩いたりします。

中には犬を連れてチャリティーに参加している人も。

そしてゴールをしたところで、「Tofurkey」と呼ばれる、大豆ミートをもらいました。

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また、NYにあるファームサンクチュアリー(元家畜だった動物を保護して天寿を全うさせる動物保護施設)では、

「七面鳥にごちそうを!」というイベントが毎年開かれています。

 

通常死んだ状態でテーブルの上に並んで「食べられる」七面鳥が、

このサンクチュアリーでは、逆に「ごちそうをもらえる」のです。

子供たちもきゃーきゃー言いながら、

ケールのサラダやカボチャパイを七面鳥にあげる。

このイベントの参加費は一人85ドル(約9千円)もするのに、今年のチケットは既に完売。

参加した人たちは七面鳥にごちそうをあげたり、眺めたり、

他の家畜動物と触れ合ったり、ベジタリアンメニューを楽しめる。

 

七面鳥を食べて感謝するのではなく、楽しませて感謝する。

そんなサンクスギビングの祝い方が今後

広まってゆくかもしれません。

 

動物保護と文化や伝統は、時にぶつかり合う。 

たとえば日本において、お正月に欠かせない行事が動物に苦痛を伴わせるものだったとしたら、そう簡単にはなくならないと思われます。

一方で、サンクスギビングデーという文化を残しながら、楽しみ方が変わりつつあるアメリカ

どんな文化も、変容して残ってゆくものだと考えると、

NYにおけるファームサンクチュアリーやポートランドのチャリティーイベントの試みは

その変容を目の当たりにさせてくれて、とても興味深い。

保守的かと思えばとてもリベラル、いろいろな顔を持つアメリカはおもしろい場所です。

 

http://godfruits.tv/turkey-feast-reverse-thanksgiving/

http://www.farmsanctuary.org/events/celebration-for-the-turkeys/new-york-celebration-for-the-turkeys/

Sprout

Sprout【人と動物の関係・動物法・動物福祉・ノンバイオレンス・環境法・文化】

投稿者の過去記事

動物法を研究しています。
普段ほとんどの人が疑問に思わない、けど考え始めたらちょっとおかしいかもしれない、人と動物との関係について書かせていただければと思います。
読んだあと動物問題を少し身近に感じて、何かを感じていただけましたら幸いです。

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