「ただ身を守るため」でも、それでも完全撤廃と言い切れますか?

アメリカの銃規制の問題を聞くたびに「奇妙な国だ」と感じる方は多いのではないでしょうか。銃の問題が絶えることがなく、状況の改善が見られない。だからでしょうか、日本では実際の詳しい事情も知らずに「銃を全廃するべきか、そうでないか」という極端な議論に急ぐ人が目立ちます。アメリカ社会は日本社会とは根本的に異なります。 アメリカ社会では銃にも居場所があり、無視できない歴史的かつ社会的な役割があります。皆さんは、アメリカでは人々は無許可で銃を携帯できると思っていませんか?アメリカの制度も工夫はされているのです。まず、現状としてアメリカではどのような制度が施行されているのかを見てみましょう。

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「小柄で非力な私には、身を守るために銃が必要」。テキサス州ダラスの女性看護師、アシュレイ・ファーランドさん(31)は自衛のために銃を所持している。「ダラスは大都市で道が渋滞することが多い。もし何者かが家に侵入してきて、警察に電話したとしても、警察官が駆けつけるのに5分以上、もしかすると30分ほどかかってしまうかもしれない。その間、自分の身を守るには、銃しかない。素手で戦うのは現実的でないし、家にあるフライパンや包丁などを使っても、大柄な男をひるませることはできない。実際に発砲するかしないかは別にして、銃を持っていれば、攻撃者を自分に近寄らせず、ひるませることができる」と話す。

 

アメリカの一般的な銃販売店では、ショットガンやライフルなどの大型の銃は壁などのケースに並べて展示され、ピストルなどの小型銃はカウンターの鍵のかかったディスプレーケースの中に入れられていることが多い。宝石店のように、実際に手にとって見たい場合は店員に声をかけなくてはならず、店員は客が商品を見ている間はずっと付き添っていることがほとんど。1回に手に取れる商品は1つで、違う商品を見たければ、商品を一度ディスプレーケースの中に戻し、鍵をかけ直す。こうして盗難などを防止するのが一般的だという。多くの州で、ライフルやショットガンの購入は18歳以上、ピストルの場合は21歳以上という年齢制限が設けられている。ただ、実際にはその年齢より上に見えれば、商品を見せてくれるといい、店が最初から年齢や銃の利用経験の有無を聞くことはほとんどないという。また、展示されている銃には弾が入っていることはなく、銃弾は別の場所に展示されていることが多い。

 

アメリカでは、このような地元の銃販売店のほかに、インターネットや、ガンの青空市とでもいうべきガンショーなどでも銃を購入できる。インターネットの銃販売サイトでは一般的なインターネット通販と同様、買いたい銃をクリックして、クレジットカードなどで購入できる。イーベイのようにオークション形式の販売形態を取る店も多い。ただ、購入した銃は直接家には届かない。銃の販売は犯罪歴があり銃を購入できない人や、未成年者に銃が渡るのを防ぐため、対面式が原則となっている。このためネットで購入したガンは販売元のディーラーから、まず購入者の最寄りのディーラーに届けられる。購入者はそこでチェックを受け、銃を受け取る。中継ディーラーには銃1丁あたり、約10~15ドルの手数料が入る。ガンショーもアメリカで銃を購入するのに多く使われる。全米で年5000回程度開催されているとされる。フリーマーケットのようなイメージで、大型会議場のような場所を使い、大型のガンショーでは、1000以上の銃のディーラーが集まり、展示即売している。ショーの入場料は10ドル前後だ。アシュレイ・ファーランドさんも、ガンショーに何度も足を運び、様々なディーラーに銃について話を聞くことで、銃についての知識を深めていったそうだ。セキュリティーがしっかりしているショーでは家電量販店のように、銃にワイヤーを取り付けるなどして盗難を防止している。また、客が銃を持ち込む際は、銃弾を外すのを原則としている。しかし、きちんと身分照会もせずに売買する、いいかげんなマーケットもなくはない。

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銃販売店やガンショーで実際に銃を買うとなると、支払い後に身元のチェックがある。連邦政府の書類の数多くの質問に正確に答える必要がある。もし、ウソや誤った情報を申告すると、罰金刑や投獄になるケースもあるという。客が書類を記入した後、ディーラーはこの書類に記載された情報と客の運転免許証などの身分証明書をもとに、米連邦捜査局(FBI)に電話をかけて客の犯罪歴を調べる。電話の間、客はそのまま店舗で待つ。約10分でFBIの犯罪歴確認が終わり、そこで問題がなければ、ディーラーから銃を手渡される。カリフォルニアなどの購入規制の厳しい州では、確認に時間をかけるため、銃を入手するのは数日後になる。

 こうした売買だけなら銃の監視の目も届きそうだが、問題は個人間の売買も認められていること。テキサス州などでは、合法的に銃を買える住民の間での売買を許可している。もちろん、犯罪歴がある人や未成年者ら、購入資格のない者に銃は売れず、違法売買は厳しく処罰される。しかし、現実には個人間の売買が広く行われており、社会に出た銃のその後を追跡することは不可能。こうした売買で、犯罪者が銃を手にすることも多いという。」出典:http://style.nikkei.com/article/DGXZZO50585560U3A110C1000000?channel=DF130120166126&style=1

 

まず私が主張したいのは、これらの事情をきちんと踏まえた上で銃規制についての議論に入るべきだということです。記事に出てくる女性自身も銃を持つ必要のない社会、もとい誰かに襲われることのない社会が理想でしょう。それでも実際はそうでないからこそ、結果として銃を保持しているわけです。実際にアメリカ社会の一部でない私たちには想像もつかない現実がそこにはあり、私たちが何かをできるわけではない。アウトサイダーである私たちが「銃を全廃するべきだ」とむやみに叫ぶのは少し無責任ではないでしょうか。

そして、私たちも理想と現実の狭間で苦しむことってありますよね。向き合わねばならない現実の存在を理解しつつも未だに理想に未練がある。若者ならではの苦しみかもしれません。アメリカというのはその苦しみに世界一悶えている国だと思います。オバマケア。移民問題。銃規制。トランプ候補の躍進そのものもまさにその苦しみを体現しているでしょう。もちろん理想的な社会に向けて努力するべきことはわかっている、しかし理想だけでは生きていけない。銃規制で言えば、「銃の(必要)ない社会」という理想と「銃がないと身を守れない」という現実の狭間に落ちて何年も苦しんでいるわけです。では、理想と現実どちらを取るのか。それが問題なわけです。

結論としては現実を取るべきだと思います。政治とは現実に対処するものだからです。私は友人のご両親がテロで銃殺されているのもあって(http://seizee.jp/international/5623 参照)、「自分の身は自分で守らないと誰も助けてくれない」という思いが人一倍強いというのもあるはずです。

ただ、だからと言って理想を追い求めるのを止めて良いというわけではありません。いじめと同じです。いじめは完全には無くならないけれど、少なくするための努力を絶やしてはいけません。

誰もが一斉に銃を手放せば良いのに…というのは、的を射ていると思います。核撲滅の問題にも近い部分がありますね。この状況はゲーム理論で分析することができるはずです。今学期ゲーム理論入門の授業を取っているので、今学期末にゲーム理論から分析した銃規制問題・核撲滅についてという記事を書こうかなあと妄想中です。

冨田 夏美

冨田 夏美PIPS JAPAN 創設者・代表

投稿者の過去記事

早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科一年生。外国人観光客に学生が外国語で無料の観光ガイドを提供するボランティア団体 PIPS JAPAN 創設者・代表。2016年5月にNHKスペシャル「18歳からの質問状」に出演したことをきっかけに、若者と社会問題をつなげるために自分にできることはないかと思い、SeiZeeライターに。その他にも2つのレギュラーラジオ番組を持ち、TEDxKids@Chiyoda 2014 Kids Speakerも務めるなど、メディアでも幅広く活動中。お問い合わせは 、tomitanatsumi.jacqueline@gmail.com まで。人生相談・恋愛相談・進路相談・記事に関する意見などなど、お気軽にどうぞ!

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