堀田真利子「医療費削減で改善したい日本の現状」


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香港出身。自由学園の短大を卒業後、看護の道を目指し2011年聖路加国際大学入学。趣味は映画鑑賞と音楽鑑賞で、最近のお気に入りはLea Micheleさんの曲。かつて“日雇労働者の街”と呼ばれた東京都台東区・荒川区の山谷地域で無料診療所と炊き出しのボランティアを定期的に行ってい る。

香港出身。自由学園の短大を卒業後、看護の道を目指し2011年聖路加国際大学入学。趣味は映画鑑賞と音楽鑑賞で、最近のお気に入りはLea Micheleさんの曲。かつて“日雇労働者の街”と呼ばれた東京都台東区・荒川区の山谷地域で無料診療所と炊き出しのボランティアを定期的に行ってい る。
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 Opinion#1 : 私の興味分野✕政治「政治から考える、看護の新しいカタチ」

マザーテレサから学んだ、医療の重要性。

堀田さんは看護師を目指されているとのことですが、看護師になろうと思うようになったきっかけは何ですか?
高校の頃は看護に関心はあったものの「人の命に関わることだから自分は関わってはいけない」と思い、別分野の短大に進学しました。しかし、短大二年の時にインドにあるマザーテレサの施設に行き、貧困によって健康格差が生まれている現実を知りました。
病気や障がいをもっていても貧困により医療を受けられない。そうするとますます病気や障がいに苦しんで仕事ができない。つまりさらに貧困に陥る。この流れってすごく悪循環だと思いませんか?これをなんとかしたいと思ったのが看護師に興味を持ったきっかけです。
もちろんインドに行く前から、何かしらの形で人の役に立ちたいと思っていたのですが、方法っていっぱいあるじゃないですか。でもこのインドに行った経験を経て自分は看護師になろうって決意したんです!

未来の子供達に残す借金を少しでも減らしたい

ではここで改めて堀田さんの問題意識を教えていただけますか?
私は国が負担する社会保障、とりわけ医療費について改善する必要があると思っています。

社会保障における医療費・・・保険を持っていれば国が一定の医療費を負担してくれるんですよね。
そうです。1961年に国民全員を公的医療保険制度でカバーする、国民皆保険が開始され、「いつでも、どこでも、だれでも」医療が受けられるようになりま した。しかし、医療技術の発展と高齢化などによって国民医療費は増え続け、今では過去最高の年間約39兆円。1961年の約76倍にもなっているんです。 しかも国民医療費の国民所得に対する比率は約11%と、国民所得の伸びを上回るスピートで推移しているんです(資料1,2)。
ですが、日本の財政状況ってただでさえ深刻ですよね。国民総所得年間約500兆円に対して、国が抱えている借金は過去最高で1000兆円以上にもなります (資料3)。1兆円ってどのくらいか想像できますか?1年間365日毎日100万円を使っても、全部使い切るのに2739年かかる金額なんです。そう考え ると1000兆円ってすごい金額ですよね。それでも、経済状態はよくないし、社会保障費は増える一方というので、国の借金は増えていくばかり。将来、その 借金返済をしなければならいのは、若い世代やこれから生まれてくる次の世代です。これって本当に深刻な問題だと思うんですよ…。借金をすることに同意すら していないのに、借金の保証人になってるわけですから…それならば少しでも国の支出を減らさなければいけないと考えるようになりました。

“病気の予防”で医療費削減を

そうですね。では一体どういったアプローチで医療費の削減をしたらいいとお考えですか?
もっと“疾病予防”に力を入れること、つまり病気を未然に予防することで、医療費を減らす可能性があると言われています。

どんな病気を、どうやって予防するのでしょうか?どんな病気を、どうやって予防するのでしょうか?
未然に予防ができる病気として、生活習慣病というのはよく耳にしますよね。国民医療費の約3割を生活習慣病が占めています(資料4)。WHO(世界保健機 構)の発表によると、世界の死亡者の10人に1人はタバコが原因であると言われています(資料5)。タバコはがん、脳卒中、COPD(慢性閉塞性肺疾患: 呼吸器の病気の一つ)の原因の一つとされ、身体への害が大きいものです。それだけではなく、喫煙による経済損失は、4兆円以上とも見込まれているんです (資料6)!ですから、禁煙と受動喫煙の防止などの対策を進めることで、国民医療費を抑えることができる可能性が考えられます。

また、塩分摂取を抑えるだけでも医療費を節約することができるとも言われています。塩分の取りすぎは高血圧や脳卒中を引き起こす原因となると聞いたことが あるかもしれません。減塩と病気発症との関係性については諸説あるんですが、今年、厚生労働省は高血圧予防の観点から、日本人の食塩の摂取基準を以前より 下げました(資料7)。「自分は調理段階で塩をそこまで使ってないから、そんなに塩分は摂っていない!」と思われる方もいるかもしれませんが、実はハムや パンなどの加工食品や、調味料の中にも多くの塩分が入っていて、日本人の食塩摂取量はWHOや欧米が設定している値よりも多いことが知られています。他国 の例ですが、イギリス政府は2005年から3年間で食品会社と提携し、国民の塩分摂取量を10%削減しました。そしてこの政策の結果として年間約2600 億円も医療費を削減することに成功しました(資料8)。
もちろん、食品に含まれる塩分を突然減らされたら、さすがに食べている方も気づくでしょうが、徐々に減らすことでほとんど味の変化に気付かれることなく塩 分を減少させることができたという例もあるようです。このように、タバコと塩分摂取を抑えるだけでも、多額の医療費を削減することができる可能性があるん です!

看護の“予防”する力

ご自身の“看護職”という立場からは、どのように疾病予防をお考えですか?

私は、看護学は「予防学」とも言えるのではと思います。看護職の活躍で病気になることを予防して、それによって医療費削減に貢献できるのではないかと考え ています!まず、看護師についてですが、ヨーロッパで行われた研究で、看護師1人が受け持つ患者さんが1人増えるごとに手術後30日以内の死亡率は7%増 加し、大学卒の看護師が10%増えるごとに、死亡率は7%低下することが明らかになりました(資料9)。手術後は生命に関わるさまざまな合併症を発症する リスクが高くなると言われていますが、看護師が24時間患者さんの傍にいて、治療の介助や日常生活支援をすることによって、病気の重症化や発症の予防がで きるんです。患者さんが早く退院できれば、患者さんが払う医療費も、国民医療費も抑えることができるのではないかと考えます。何よりも患者さんが早く元気 になって、お家に帰れることが一番嬉しいことですよね。

地域で人々の健康、生活を支える

また、看護職には市町村の保健センターや企業で働いている保健師という職種もおり、人々の健康管理のために働いています。保健師らが行う保健指導や 保健事業によって生活習慣病の予防や維持・改善ができますし、それにより医療費削減が可能なことも研究で明らかになっています(資料10)。現在、平均寿 命から病気などによる介護期間を差し引いた「健康寿命」をいかに伸ばすかが行政では注目されています。医療・介護を利用する必要がない、健康に生きられる 期間が長くなれば医療や介護費用も削減できるので。その点に関しても保健師の役割は非常に大きいと私は考えます。たとえば、都道府県別の健康寿命で女性1 位、男性2位になった静岡県。その健康増進活動の背景には、民間企業、地域住民を巻き込んだ保健師の活躍があったようです(資料11)。医療知識を持ち、 かつ人々の生活をよく知る身近な存在である看護職だからこそ、効果的な健康増進活動・健康教育ができ、人々の健康に尽力できるのだと思います。

看護の新しいカタチ

お年寄りになっても誰もが住み慣れた地域で暮らせるように、医療・介護のニーズを充足できるようにと、いわゆる医療介護総合確保推進法が昨年国会で 成立しました。この法律の中では、看護師もより高度な看護業務ができるよう、新たな研修制度が今年10月から施行される予定です。医師不足が深刻な中、看 護師に求められることも多くなってきているのが背景の一つなのではと思います。
韓国やアメリカなどの国には、ナース・プラクティショナー(NP)という医師と看護師の中間くらいの位置づけの看護師資格があり、特別な教育を受けている ので薬を処方したりと、一定の医療行為も行うことができます。また韓国のNPは、自分でクリニックを構えて地域住民の健康管理をしていますが、これによっ て地方に住む人々の医療へのアクセスが格段に良くなったと聞いたことがあります。また、風邪や小さな怪我など、重傷でない場合はNPが処置し、難しい症状 には都市部の医師に任せるという仕組みによって、医師が重症患者に割ける時間が増え、全体として質の高い処置を施すことができると考えられます。
先ほども少し話しましたが、現在、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病を抱えている患者さんが急増していることが世界的な問題として挙げられます。生活習慣 病をはじめとする慢性疾患は治癒が難しく、改善のためには長期に渡って生活習慣の改善、予防・管理をすることが重要です。医師より時間があり、診療報酬も 少ない、地域に根付き、人々の健康を長期的に貢献できるNPはそのニーズに充足できる可能性があると考えています(資料12)。
日本は韓国やアメリカとも医療政策や保険制度、文化も違うので、NPの制度が日本でどのくらい適応できるのか、どのくらいニーズがあるのかという点は考え る必要がありますが、地域の身近なところから人々の生活・健康を支えることができる「地域の保健室」のような場所があっても良いなと思います。

Opinion#2 : 若者の政治参加「生活に困らない日本だからこそ関心が持てない」

今の若者は、政治に対して関心を持っていると思いますか?
持っている人と持っていない人、それぞれで温度差がある。行動に移せるかいなかという差が大きいですよね。若者の政治参画を目標としている非営利活動団体YouthCreateなど若い世代が信念を持ってさまざまな活動しているのは、素晴らしいことだと思います。

競争社会では、まず就活が優先。

政治に関して関心がない理由は何だと思いますか?
もちろんそれぞれ、就職、結婚、老後など自分の将来には不安は持っていると思います。もっとこうあれば良いという「希望」はあっても、日本はインフラが 整っていて、基本的に生活用品の大半を低コストで手に入れることができます。そのため、政治に関心を持って行動に移すという必要性を感じにくいですし、何 か行動に移しても結局は、日本、政治は変えらないという諦めを抱いている人も多いのではないでしょうか。それに何よりも、将来のことを考えると、政治に関心を向けるより、今自分の目の前にあることをこなすことの方が大事だと考える人が多いと思います。今の若者はより安定志向という調査結果があります(資料 13)。景気があまり良くない中、大学を卒業しても正規雇用も難しいケースがある。やはり競争社会なので、政治に関心を向けるより、現実的に就活に勝ち抜 いて、正規雇用で安定した会社に入らないと将来が不安なのではと考えます。

現在の日本の政治をどのように感じてしますか?
この政治美人では、政治家の魅力を紹介されていて感心しましたし、しっかりと働いている政治家もいると思います…。でもやはり、マスメディアのせいか、 「政治とカネ」の問題など、政治家に失望してしまうことが多いです。それに、政治家は当選するために、投票率が高い高齢者に対しての政策ばかり考えている という話を聞いたりすると(資料14)、やはり、自分たちも選挙に行くという形ででも政治に参加することが必要だと感じています。

今若者に必要な政策とは何だと思いますか?
まず1つ目は政治や選挙に興味を持てる教育体制をより効果的にすること。イギリス人の医師で作家であるサミュエル・スマイルズは著書の中で、「一国の政治 というものは、国民を映し出す鏡にしか過ぎない」と述べています(資料15)。投票する私たち国民が政治家を選出するわけですから、確かにそうとも言えま すよね。昨年末の衆議院選挙では若い世代の投票率が低かったですよね(資料16)。日本の将来を担っていくのは若い世代です。だからこそ、関心を持つこ と、投票に行くことは非常に重要だと考えます。2つ目は若い世代の貧困と雇用対策。高い学費を払って大学・大学院を卒業しても非正規雇用で、生活困窮の若 者が多くいます。余裕がないため、政治や選挙に興味を持てない要因の一つにもなっていると思います。学費の低額化や給付奨学金を増やすこと、非正規・正規 雇用に関わらず、安心して就労できるよう雇用体制や関連法を整える必要があると考えます。

(執筆:木原健太/撮影:相川美菜子)

※元記事URL(http://seiji-bijin.com/portfolio/mariko-hotta/
title_link資料1:厚生労働省 平成24年度 国民医療費の概況 結果の概要資料2:社会保障入門 2014.中央法規出版.資料3:日本経済新聞資料4:厚生労働省資料5:World Health Organization資料6:医療経済研究機構. 禁煙政策のありかたに関する研究2010年.資料7:厚生労働省 2015年資料8:World Action on Salt & Health. SALT REDUCTION SAVES LIVES資料9:Aiken LH, Sloane DM, Bruyneel L, et al. Nurse staffing and education and hospital mortality in nine European countries: a retrospective observational study. Lancet. 2014 May ;383: 1824-30資料10:足立泰美,赤井伸郎,植松利夫.保健行政における医療費削減効果.季刊・社会保障研究 Vol.48 No.3:338-348.

資料11:朝日新聞.2014年10月28日.医出る国Q&A

資料12:クリスティン・ハレット著.ビィジュアル版 看護師の歴史.国書刊行会.

資料13:朝日新聞 2014年11月1日.「若者は安定志向 シニアは挑戦意欲旺盛」

資料14:ジャパンビジネスプレス.森川友義氏インタビュー

資料15:山本史郎編訳.サミュエル・スマイルズ.イギリス流大人の気骨 スマイルズの「自助論」エッセンス版.講談社.

資料16:総務省.国政選挙の年代別投票率の推移について

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