○○のための帰省バス?! 台湾は本気で若者の声を求めた。

 

今月16日に行われた台湾総統選挙。

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台湾初の女性総統が誕生したことで話題になりましたね。

でも実は、選挙の実施に際して、少し意外な結果も出ていたり、日本に住んでいたら想像もできない投票啓発のための施策がとられていたのですが、このことはあまり知られていません。

ということで、本日は「女性総統」とは別の視点から、台湾総統選挙についてご紹介したいと思います。

 


意外にも過去最低の投票率を記録していた

 

実のところ、今回の台湾総統選の投票率・・・過去最低だったんです。

 

「え、あれだけ盛り上がっていたのに、そんなに低いの!?!?」

 

ってビックリする方も多いかと思いますが、

はい、今までの総統選挙での投票率と比較して、最低です。

でもですね、一つお伺いしたいのですが、皆さんはそう聞いて、

どのくらいの数字をイメージしていますか?

 

少し考えてみてください。

 

 

 


正解は・・・66.27%でした。

 

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66.27%が、「過去最低」なんです。

 

日本との過去最低感のギャップについてはさておき、初めて女性総統の誕生が期待され、実際に民進党の蔡英文氏が与党国民党の候補に大差をつけて圧勝した本選挙、国内海外問わず、相当に注目された選挙となりましたが、グラフの通り投票率は過去最低で、総統選自体の投票率は2000年を尻目に下降の一途をたどっていると言えます。

その背景として挙げられるのは、台湾では「本籍地での」「直接の」投票しか許されていないという制度事情です。

参考として、日本では、住民票を移すことで居住地の候補者に投票することもできますし、本籍地を離れて生活している場合であっても不在者投票制度を活用すれば、やはり本籍地の候補者に投票することができたりしまが、こちら台湾では、そのような援助施策は一切行われていないのです。

 

「本籍地での」「直接の」投票しか許されない。

 

これは、学生にとっては非常に不便となるのがお分かりでしょう。

地元を離れて下宿生活をしている学生は、かなりの金銭コストをかけて帰省しなければなりませんし、加えて、そうしようにも選挙に向けた帰省ラッシュで、そもそも切符の入手が非常に困難だったりします。

さらに、高等教育機関が特定の都市に偏在し、質の高い教育を求めて地方から上京してくる貧乏学生という構図は、地方中核都市の少ない台湾で色濃く存在しているため、やはり、多くの学生がコストに負けて投票を断念せざるをえないという状況もあります。


これらの理由から、投票に行かなくなっている若者が多くなっているのです。

 

民間による若者の投票促進運動が垣間見えた

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そこで、こうした状況を改善するため、台湾中部内の6つの大学の学生会が集まり、

「中部返郷投票專車聯盟(中部帰省投票専用車連盟)」という団体が結成されました。

 

主な活動は、ネット上に募金を呼びかけるためのプラットホームを作成し、学生が無料で帰省できるよう、貸し切りバスを利用するための費用を募るというものでしたが、その結果、合計約77万元(約270万円)もの寄付が寄せられ、少数といえども、1500人余りの学生が無料で帰省できるほどのお金が集まったそうです。

(詳しくはこちらの記事をご参照ください)


このほかにも、台北の台湾大学や政治大学が、長距離バス会社と協力し、学生が帰省し投票することを奨励する試みを実施するなど、今回の選挙における若者の役割の重要性を感知した民間団体が、率先して援助策を打ち出す姿が垣間見える選挙となりました。


国による制度、国民としての意識

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初めて選挙権を行使する20歳の若者らは、現地で首投族と呼ばれています。

今回の台湾総統選では、この首投族が人口の6%を占めることが事前に判明していましたから、各党に共通する戦略として、「いかに首投族を取り込んでいくか」というものが重要視されていました。首投族に当たる若者らには、固定的な支持政党が未だなく、加えて、確固たる政治信念が醸成されている可能性が低いことも予想されることから、大きな浮動票層として、すなわち、長期的な票田となり得る存在として、大きな期待がされていたのです。

 

とは言うものの、先述した通り、本籍地を離れて生活する若者を救済する施策を、台湾議会はとってきていませんでした。それゆえ、変革のキーとなる若者が投票離れしていくことに危機感を抱いた「民間団体」が、自分達でやり始めた、やってしまったというのが、上記の試みに至る文脈となることも、先述いたしました。

 

その上で、新たに問うてみたいことがあるのですが・・・

ここに皆さんは、「自分の国は、自発的に変えていく」という、国民のあるべき姿勢のようなものを感じはしませんか?

 

どうでしょう。

いかにその規模が小さくとも、彼らの心意気には、思うべきものがあるような気がいたします。

援助施策は自分たちでやってしまうし、過去最低といえども66.27%の投票率を誇る、隣国の民の心意気にです。

それは、危機意識と危機管理能力と言い換えることもできるのでしょうか。

(投票率の違い自体は、直接選挙と間接選挙の違いもあるのでなんとも言えませんが。)

 

話は立ち戻り、一方の日本では、住民票の移設による選挙区の変更が許可され、他にも、不在者投票制度だけでなく、期日前投票制度だってあったりします。

加えて、2016年は選挙の柔軟化に向けて大きく進む1年間となることが予想されており、投票所の他箇所設置や共通投票所の設置を目指して公職選挙法の改正が見込まれていたりします。

(2016年に起こる選挙模様の変化についての詳しい内容は、SeiZee内の関連記事より)

 

日本では、制度だけはどんどん、心地よい投票環境の創造を目指して変わっていっているようです。

そして、簡単なことですが、いかに素晴らしい制度であろうと、それが実際に運用されなければ、それを使おうとする人がいなければ、全く意味がありません。

真正なる民主主義の実現を趣旨とした素晴らしい新制度の数々が、実質の伴わない骸とならないことを願います。

 

台湾の国民は、本気で若者の声を求め、若者はバスに乗った。

 

さて、隣国の選挙のあり方は、私たちにとって印象的なものでした。

前提として、誰が国を良くしていくのか、意識的になる必要があるように思えます。

 

【その他参考】
總統副總統選舉概況中央選挙委員会:2016年台湾総統選挙投票率他
総務省HP:国政選挙における年代別投票率

seizee編集部

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当メディア『SeiZee』の編集部です。
「読んだらちょっと、考えちゃう」をテーマに記事発信しています。

昨年末から、モスク、競馬場などへのインタビューに力を入れています。

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