いつもの番組が観れなくなる?-電波停止発言を考える-

2016年が始まってまだ(もう?)1カ月半ですが、国会は早くも大盛り上がりですね。

特に、高市早苗総務相の「放送局の電波停止もあり得る」という発言が話題です。

今回は、この発言についてちょっと考えてみましょう。

 

発言が飛び出したのは、2月8日の衆議院予算委員会でした。

民主党議員が、放送各局のキャスターが次々に番組降板を発表したことを背景に、

「(放送局の)電波停止が起こり得るのではないか」と質問しました。

高市さんの回答は、

 

「行政が何度要請しても、全く改善しない放送局に何の対応もしないとは約束できない。将来にわたり可能性が全くないとは言えない」

 

ものすごく微妙な回答ですね。

「将来にわたり可能性が全くないとは言えない」というのは、言ってしまえば当然だし正論です。

しかし「全くない」と言わない限りは「あり得る」ということなので、

この発言は回り回って「電波停止はあり得る」と解釈できます。

 

ここで、そもそも日本の放送がどういうものか確認しておきましょう。

まず、地上波で目にするありとあらゆる放送局は「電波法」に基づいて、

総務相から放送の免許を与えられています。

この免許を持っていないと、地上波での放送はできません。

次に、各局が守るべき規範として「放送法」があります。

放送法の第1条では、放送は公共の福祉を守り、健全な発達を図ることが決められています。

 

高市さんが「電波停止もあり得る」ことの根拠に据えたのは、電波法76条放送法4条です。

実際に読んでみましょう。

 

電波法 76条

総務大臣は、免許人等がこの法律、放送法若しくはこれらの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したときは、3箇月以内の期間を定めて無線局の運用の停止を命じ、又は期間を定めて運用許容時間、周波数若しくは空中線電力を制限することができる。

 

ややこしい!

ざっくり言えば、

総務大臣は、電波法や放送法などに違反した免許人=各放送局の放送を3カ月まで停止できるってことです。

では、電波法76条にも書かれている、放送法の4条を見てみましょう。

放送法 4条

放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。

一 公安及び善良な風俗を害しないこと。

二 政治的に公平であること。

三 報道は事実をまげないですること。

四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

 

わかりやすい!

つまり、放送局は社会を害するものを流さず、政治的に公平で、事実をありのままに伝え、いろんな意見を放送しないといけないってことですね。

 

さらに、放送法には4条(番組の編成準則)に違反したかどうかを誰が判断するのか、明記されていません。

つまり、総務大臣や政権がその判断を下しても、法律上は問題ないんです。

したがって、放送法に違反した放送局の電波が総務大臣によって停止されるということは、法律上は実際にあり得ます。

 

おさらいすると、現行の法律上は

・電波停止について「将来にわたり可能性が全くないとは言えない」という発言は正しい

・放送法に違反したかどうかを時の政権(総務大臣)が判断することができる

・放送法に違反したことを電波停止の根拠に据えることができる

ここまではOKですね?

AFP PHOTO / KAZUHIRO NOGI (Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images)

AFP PHOTO / KAZUHIRO NOGI (Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images)

 

では、閑話休題。

高市さんの発言の、いったい何が問題だったんでしょうか。

大事なのは、高市さんが電波停止の根拠に据えたのが放送法4条の「政治的公平性」だったという点です。

 

高市さんは翌9日の答弁でも、政治的公平性を欠く放送や放送局について「将来にわたって罰則規定を一切適用しないことまでは担保できない」と述べました。

 

つまり、現行の放送法/電波法の上では

・為政者である政権側が、政治的公平性を判断することができる

・その判断に基づいて、放送にストップを掛けることができる

 

これこそ、高市さんの発言から明らかになる最も深刻な問題です。

この発言が従来の法解釈と異なるかどうか、報道の萎縮につながるかどうかなどは、ポジショントークにすぎません。言ってしまえばどうでもいい問題なんです。

繰り返します。

 

政権側が政治的公平性を判断し、その判断に基づいて放送を止めることができる。

この可能性がわずかでもあることが、問題なんです。

だってこれは、日本国憲法の保障する言論の自由が、脅かされるかもしれないということですから。

 

発言以降、菅義偉官房長官や安倍晋三首相など与党側はフォローを繰り返し

12日には、総務省から政府統一見解まで発表されましたが

この可能性を否定できてはいません。

だって、現行の放送法と電波法では、その可能性があるんですから。

政権が法律を否定するなんてこと、できませんよね。

 

では、この問題はどうすれば解決できるのでしょうか。

ここまで書けばもうおわかりですよね?

 

法改正しかありません。

 

放送法と電波法を総合的に見直して、

為政者によって放送が停止される可能性を、排除するしかありません。

 

実際、自民党政権は放送法と電波法の改正に言及したこともあります。

9年前、2007年2月のことでした。

当時人気だった某健康番組で、健康効果のない食品を「健康効果がある」と放送したという、

事実の捏造が発覚したのです。

 

これを受け、当時総務大臣を務めていた現官房長官の菅さんが、善後策として放送法/電波法の改正に言及したのです。

大幅な改正は民主党への政権交代後に持ち越しましたが、

自民党には、法改正までちゃんと視野に入れていたという実績があります。

 

安倍首相は10日の衆院予算委員会の答弁で

「安倍政権こそ、与党こそ言論自由を大切にしている」と、主張しました。

心強い言葉ですね。

 

政治的公平性が、為政者によって判断されることのないように

言論の自由を守るために、政権側から放送法/電波法の改正に乗り出してくれることを願います。

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