「一票の格差」なくす めざせ「1倍」

「一票の格差」の問題

2010年代の各選挙で、正当性が疑問視されている。主な争点は、小選挙区制に生じている「一票の格差」だ。

「一票の格差」とは、小選挙区制における各選挙区で、議員1人あたりの有権者数の少ない区で1票あたりの価値が大きくなり、逆に有権者数の多い区では小さくなるという格差のことだ。たとえば12年の衆議院議員選挙では、有権者人口が最多だった千葉県第4区(約49万人)と、最少だった高知県第3区(約20万人)との間におよそ2・45倍の格差が生じた。また、最大格差が2・13倍だった14年の衆院選については4月末に高裁判決が出そろい、訴訟17件中12件を「違憲状態」の判決が占めた。

LINK編集部が関西の大学生300人を対象に行ったアンケートによると「一票の格差」という言葉を知っているのは全体の72%で、そのうち「一票の格差」について説明できると答えたのは43・1%と、半数に満たなかった。

一票の格差グラフ

危ぶまれる民主主義

若年層と政治をつなげることを目標に活動する学生団体、ivote関西代表の徐東輝(そぉ・とんふぃ)さんは、アンケートの結果を受けて「一票の格差を放置すれば民主主義が成立しなくなるということを、より多くの学生が知る必要がある」と話している。有権者の投じる1票の価値に差が生じれば「法の下の平等」を定めた日本国憲法の第14条に反することになり、民主的な選挙からかけ離れてしまうという。また、18歳以上が選挙権を持つことになれば、大学生全員が有権者になる。住民票の移行など学生の生活に関わる部分はますます大きくなるため、自分の持つ1票を見つめ直す必要性も増していく。

さらに、格差について議論する際の「首都圏などの都市部より地方の声が行政に反映されやすくなる」という意見には「(一票の格差の)問題について誤解がある」という。「国会議員はそれぞれの選挙区ではなく国民全体の代表。地方と都市の構造を考えるより、国民一人ひとりの声の大きさに差が生じることを問題視すべき」と指摘する。また、国政に限らず議員を住民全体の代表として考えることで、個人の利益より日本や地域の将来像を考えて投票すべきということに気づけるはずだという。

遅い制度改革 「1倍」への糸口は

格差解消のための制度改革の遅れも問題となっている。格差が2・30倍に達した09年衆院選に関する11年の最高裁判決では、都道府県にまず1議席を配る「1人別枠方式」の廃止が求められた。しかし、廃止後の法改正は12年衆院選に間に合わず、議員定数を計5つ減らし減少分の議席を増やさない「0増5減」の区割り法が初めて適応されたのは、14年衆院選だった。

格差是正のためにさまざまな働きかけを行っている、一人一票実現国民会議のメンバーのSさんは「格差を解消するためには合理的期間のあいまいさを解消すべき」と主張する。「合理的期間」とは、是正に向けた立法や法改正を達成するために必要とされる猶予期間のことで、格差が「違憲状態」もしくは「違憲」でも、合理的期間が過ぎていないことを理由に「合憲」と判断される場合がある。しかし、判決や法令では具体的な期間が決まっていないため、改革に向けた強制力にはならないという。

Sさんは「小選挙区制を敷く限り格差をなくすことは難しく、法改正ですぐに小選挙区制を廃止することも現実的に不可能」と認めた上で「格差を1倍に近づけるために、与野党がまとまった議論と法改正を続けないといけない」と話す。国会では小選挙区制の全面的廃止や比例代表制の拡張など、格差是正に向けた提案がなされているものの、他法案に時間を取られ、議論が進まないのが現状だ。

第22回(2010年)選出の参議院議員は、16年7月25日で任期が満了する。そして同期日までに、第24回参議院議員通常選挙が行われる。国民が投票を通じて自分の意見を国政へ反映させることのできる選挙は、民主主義の基盤と言える。本当の平等選挙の実現が待たれている。

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学生LINKジャーナル7月号より転載

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