「都構想」のその先は

ポスト「都構想」へ 都市一丸の改革迫られる

 5月17日、大阪の今後を決める住民投票が大阪市で行われた。当日有権者数は210万人以上、史上最大規模の住民投票だった。投票率も66・83%と高く、得票率約0・8ポイントの僅差で、反対が賛成を上回った。橋下徹氏の大阪市長就任から5年にわたり議論されてきた「大阪都構想」は、大阪市の存続で決着を見た。

 大阪大学法学研究科の某教授は、住民投票を「これまで見えなかった住民間の生活格差が明らかになった」と振り返る。多くの区で接戦となったものの、賛成過半数の区は市内の北部、反対過半数の区は南部に固まり、特別区で「湾岸区」と「南区」に分割予定だった計9区はすべて反対が過半数。同教授は「大企業の社屋や富裕層が集まる『キタ』と、中小零細企業や労働者層が多い『ミナミ』。その境界が、投票結果からはっきりと分かる」と、話す。二重行政解消による財政の一本化を期待した北部では賛成が、行政による市民サービスの低下を危ぶんだ南部では反対が上回った形だ。

住民投票結果

 

早すぎる出口調査

 「賛成過半数だった20〜50代に対して60〜70代以上は反対過半数で、若年層より高齢者の意見が反映された」とする意見もある。新聞各紙(朝日、産経、毎日、読売)と放送各局(ABC、読売テレビ、関西テレビなど)の出口調査では、いずれも20代をはじめとする若年層で賛成が多数、70代以上の高齢者で反対が多数だった。

 同教授はこの意見について「(投票結果の)分析と結論を急ぎすぎている」と指摘する。出口調査は小規模な住民投票や小選挙区の選挙では有効だが、今回の投票者数は140万人以上。統計とするには、出口調査の数千人という母数では不十分だという。「世代間の意見差も考えられるが、若年層の投票率の低下が問題という見方もできる。詳細な内訳が出てから結論を出すべきだ」。

あなたの投じる一票の重さ

 1万741票差で大阪市は存続することとなった。しかし、投票者数のうちおよそ49%にあたる69万4844人の賛成票は、「少数」というにはあまりに大きい。たとえば、賛成過半数だった東成区でもしわずか11人が賛成から反対に

意見を変えていれば、区内の賛否の票数は逆転していた。

 天王寺区在住の男子大学生(神戸大)は、都構想に賛成していたが、面倒に思って投票には行かなかった。しかし、投票日の夜に「僅差で反対過半数」という知らせをニュース番組で見て、激しく後悔したという。「自分ひとりが賛成に投票しても結果は変わらなかったが、自分のような(投票しなかった)人たちがみんな投票していれば、結果は変わっていたかもしれない」。自分の票が大阪の今後を左右したかもしれないことに気づき、一票の重さと責任感がのしかかった。「来年は参議院選挙がある。今度こそ投票に行きたい」と、真剣な表情を見せた。

 賛成票には、住民の閉塞感も表れている。西成区で日雇い労働者として働く新田修さん(49)は、周囲が反対に色めき立つなか、賛成に。「橋下氏を支持したことはないし、都構想もうまくいくとは思わなかった。でも、今の大阪は経済も落ち込み塞ぎ込んでいる。何か変わるならと思い、賛成に決めた」。目に涙をにじませた。

 地域間の格差を浮き彫りにした今回の住民投票。橋下氏はすでに、今年12月の市長任期満了をもって政界を引退する意向を表明している。都構想はいったん否定されたが、改革は否定されていない。大阪の行政には、地域間の格差是正と、住民の閉塞感を打破する改革が求められる。 

関連記事⇒「一票の格差」なくす 目指せ「1倍」

学生LINKジャーナル7月号より転載

 

ピックアップ記事

  1. 前編では京都大学で活動している「同学会」という団体について、その活動や思いについて触れてきた。…
  2. 新歓のやかましさも過ぎ、新学期の高揚感も過ぎて、学内を歩いて…
  3.  大学の新学期2017年度がはじまり一月ほどが経った。 新入の学部生、まず、おめでとうございます…
PAGE TOP