【来たる参院選!】いまだからこそ参議院の大切さを考えてみる

国政選挙と投票率

第24回参議院通常選挙の投票日が、7月10日に迫っています。参議院の選挙は、政権を選択するモノではありません。そのため衆議院選挙よりも数ポイント投票率が落ちる傾向があります。おもしろいことに、参議院議員選挙では投票率が7割に迫ることさえ滅多にありません。衆議院議員総選挙の場合、平成2年には73%に至っていますし、平成17年・平成21年と7割近くの人が投票しました。

 

衆議院議員総選挙(直近5回)
H15 H17 H21 H24 H26
投票率(%) 59.86 67.51 69.28 59.32 52.66
参議院議員通常選挙(直近5回)
H13 H16 H19 H22 H25
投票率(%) 56.44 56.57 58.64 57.92 52.61

 

 

この表の上下を比較するとおもしろいことが分かりますね。それはもちろん衆議院の選挙では、平成17年と平成21年の数字が前後と比べて高いことです。前者は小泉純一郎首相(当時)によるいわゆる「郵政解散」に伴う選挙で、後者はいわゆる麻生太郎首相(当時)による「政権交代選挙」「がけっぷち解散」に伴う選挙でした。確かに、この二つは注目を浴びていました。この際は、「風」と言われるものがあったと言われています。それの作用で投票者数が伸び、また選挙に勝つ人たちに偏りがありました。これを捉えて、「小選挙区制は間違っている」という言説が一部から流れたものです。もし私が現在から振り返るならば、これらは「ポピュリズム選挙」であったろうと考えます。「衆議院はより民意を反映している」とは紋切り型の言葉ですが、それはすなわち「衆議院はよりポピュリズムに支配されている」ということです。

 

参議院って必要なの?

 

ところが、参議院議員選挙を直近の5回見てみると、5〜6%程度の違いしかありません。これは、参議院議員選挙に「風」が吹かないことを意味しているような気がします。それはもちろん政権選択選挙ではないからでしょう。確かに、内閣を構成する党という観点で見れば、参議院では「〇〇党から△△党に政権党が変わる」ということがないため、ダイナミズムがないからだと推測されます。そしてこちらはあまりポピュリズム的でない選挙のように思われます。

 

さて、最近は参議院の存在意義について多くの批難があります。「参議院は衆議院のコピーだ」とか「参議院は衆議院の追認機関だ」とか「参議院なんてなくていい」といったものです。この誤解を解かなければ、「どうせ参議院なんだから投票行かなくていいでしょw」となりかねません。ここで参議院議員である鴻池祥肇(よしただ)氏のブログを参照すると、参議院の役割について「ひとつには衆院の「補完・抑制」がある。いわゆる世論を二分し、日本の将来にかかわる大問題については『再考の府』としての参院の存在は重要である。だから参院は官邸の下請となってはならないし、当然、衆院の下部組織になってもならない。」と書かれている。また「参議院の存在というのは、先人が苦労して二院制に持ってきて、先の大戦から、貴族院が止められなかった、あの軍部の戦争に至った道というのを十分反省をしながら、参議院の存在を一生懸命作り上げた」*2と発言したことも知られています。

 

この発言から得られるエッセンスは、1)衆議院の補完、2)行政権からの独立、3)「再考の府」という3つといえます。まず1の衆議院の補完は、衆議院における審議や法案修正で足りなかった部分を補い、より完成度の高いものにするという機能を意味しています。

 

次に2の行政権からの独立は―衆議院に関しても同じ―、立法府である国会は行政府である内閣が提案してきた法案を認めるだけではいけない、ということを意味するものと考えられます。内閣提案の法案は、官僚提案と読み替えても大きな支障はないことが多いです。しかし、立法府は民主主義の体現者として、国民の意見をその法案に反映させることが任務とされているのです。これが立法権の独立を意味するものです。それはもちろん、三権分立の原則からもわかります。

 

最後に、「再考の府」です。一般的には、「良識の府」と言われていますが、ここにおける記述ではあくまでも「再考の府」です。さらに、鴻池氏は「党議拘束の垣根も低くして参議院議員として良識ある行動を為さなければならない」*2と続けます。つまり、文面通り理解すれば、参議院の各議員は、党の方針からある程度独立して、議員として思考と決断をしなければならないということでしょう。

 

すなわち、参議院の役割とは、衆議院の拙速を是正すること、衆議院での審議を踏まえつつそれをさらに深め、法案をより良いものにするということです。

 

参議院が重要だという、違う側面からの議論

以上のような、本物の参議院議員の発言は大変説得力があるものだったろうと思います。

ここからさらに議論を深めていきたいと思います。2016年現在、アメリカでは大統領選挙が行われています。
ですので、アメリカの政治制度を例にとると、アメリカでは大統領と議会が全く別の選挙によって選ばれます。そのため、立法府と行政府は分離していますし、大統領の議会に対する拒否権や、議会の大統領に対する弾劾といったものから対等性が見えてくるでしょう。翻って、日本を考えてみると内閣は、衆議院議員選挙の延長線上に、つまり衆議院との連続性を持って考えられます。衆議院第一党が必ず内閣を構成することになっていますから、よほどのことがない限りここが相反することはありません。しかし、参議院は内閣と直接的に連続性を持っていませんし、首相の参議院に対する解散権は存在しません。そのため、内閣の提案にクリティカル(生産的な修正議論ができる状態)になることが十分可能なのです。以上のことより、内閣提案を本当に修正しようとしたら、衆議院ではなく参議院が本丸になると言えないでしょうか。

 

すると、不都合な事実が浮き上がってきます。参議院には、党派が存在することは好ましくない、ということです。なぜならば、鴻池氏も言う通り、党議拘束が存在するためです。党議拘束があると、内閣提案に対し必要な批判性を発揮することができなくなる恐れがあります。これは大変重要な議論ですが、本記事の射程は、衆議院議員選挙と比較すると投票率が低い参議院議員選挙の重要さ、であるためこれ以上は言及しないこととします。

 

再び本題に戻ると、「参議院は良識の府」なのではなく「参議院は良識の府でなければならない」のです。それは衆議院がなすべき修正をしなかった時に修正できる場だからということと、参議院が法案にGO! サインを出すとそれがいよいよ法として成立するからです。以上を鑑みれば、参議院議員選挙は、ポピュリズムに支配されやすい衆議院の浅慮を抑え込み、法律として適切な形に整えること、あるいは廃するか否かを決定するのを誰に託すかを決めるために極めて重要なのです。私は皆さんに対して選挙に行けとは言いませんが、熟慮に熟慮を重ね投票をしてもらいたく思います。

 

*投票率の表は、総務省|国政選挙の年代別投票率の推移について参照

*2=The Huffington Post|礒崎陽輔氏を参院特別委・鴻池祥肇委員長が説教「参議院は官邸の下請けではない」kara

 

斉藤亮太【思想・哲学・宗教、政治、文化】

投稿者の過去記事

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