自分の身体をどう使おうと自分の勝手?

【読売新聞:腎臓売買、暴力団幹部が計画…ホームレス誘う】(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150720-00050118-yom-soci )

 

 こんなショッキングなニュースが流れた。当該記事によると「報酬200万円でホームレスの男に臓器移植のための腎臓を提供させようとしたとして、警視庁は21日にも、住吉会系暴力団幹部(71)を、ホームレスの男(44)の2人を臓器移植法違反(売買の禁止)容疑などで再逮捕する方針を固めた。」という。

 

 ひとつ疑問が湧いた。なぜこのホームレスの男が<みずからの>腎臓を<みずからの>意志によって売買するのが規制されないといけないのか、ということだ。

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 さて、ここでひとつ断っておかねばならない。本件において臓器取引が許されない理由が、そのアクターとしていわゆる暴力団が関わっているから、とするのは間違いである。暴力団員であれ、我々と本性的に変わる点はなく、むろん人権―生存権が存在し、その生存のために腎臓を求めたからである。

 

 そして、一般論として、人体には腎臓がふたつ備わっており、それは基本的に片方でも生きられる。そして、これはあくまで私の推測にすぎないが、このホームレスの男性は貧困層だろう。つまり、その日の暮らしにも難渋しているのである。とすると、貧困に陥っているホームレスの男性に、腎臓を提供させて金銭を彼に与えるというのは、何の問題もないではないか。

 

むしろ、腎臓を必要としているひとが腎臓を手にし(+1)、お金を必要とするひとがお金を手にする(+1)ことによって、全体的効用(X)は2を上回る(2≦X)。ところが、もしこの腎臓取引がなければ、ことによると前者は何も得ないあるいは死に(±0/-1)、同じく後者も何も得ないあるいは貧困に苦しむ(±0/-1)。このように取引をしないと全体的効用(Y)は0≧Yとなり、比較するとあまりに非効率と言わざるを得ない。XとYを比較衡量すると明らかに、Xの方が合理的だ。

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しかし、「最低限の道徳」といわれる「法」は臓器取引を許容しない。これはなぜか、という問に対し、「悪徳なブローカーが…」、「粗悪な医療環境で…」という議論もあるが、何のことはない。悪徳ではない公的もしくは準公的機関を設け、一般の医療機関で移植を行うように、適正に運営すれば問題は解決だ。ゆえに、悪徳ブローカー&粗悪医療論は根拠が薄弱だ。加えて、「臓器は可処分物でない」とした時、無償提供さえも許容し得ないため反論としては強すぎる。ならば、どういうわけで禁止されなければいけないのか。

 

この事件からも見える通り、恐らくみずからの臓器を売るのは貧困層に分類される人々が多かろう。つまり、臓器売買は貧困者を喰いモノにするという点であり、それは経済的圧力の下、不公正で悪であるというのだ。すなわち、公共生活における搾取に他ならないと。彼らは「臓器の提供の申し出については、任意になされ他からの強制でないことを、家族及び移植医療に関与する者以外の者であって、提供者の自由意思を適切に確認できる者により確認しなければならない。」*と言うかもしれない。

 

経済的弱者はそうせざるを得ない状況に陥っているがために、利己的に臓器を提供するのだ。これは「自由意思」に基づいていないから許されない、というのも一見説得的だが、考えてみれば、親族間に限られた無償の利他的臓器提供においても、「私がやらなければこの人/子は死ぬ」という不可避的現実にぶつかる。ということは、「そうせざるをえない」状況に陥るのだ。この移植の決定も「自由意思」と言えるのか、はなはだ疑問である。

 

さて、我々は普段、法や慣習を何の違和感もなく受け入れるかもしれないが、時に立ち止まって考えなければならないこともある。国家の暴力機構(警察など)によって、法に実効性が与えられる。とはいえ、その法規のもつ制限があまりに広範で、厳しい場合、それは我々の「自由」と矛盾する。さらに、手続き的に「正しい」とみなされる法が「悪い」モノであった時、我々はその法を改正あるいは廃止する必要があるからだ。

 

 

 

*厚生労働省、「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針」、第13章「生体からの臓器の取扱いに関する事項」(これ自体は無償提供にかかる事項だが、有用なので用いた)

※この記事の画像はすべて「いらすとや」さんからいただきました。かわいい。

斉藤亮太【思想・哲学・宗教、政治、文化】

投稿者の過去記事

私に「社会不適合者だ!」と言ってくる人がいますが、それならば社会が私に合わせればいい。え? 合わせられない? そんなに能力低い社会なら変えないとねぇ。
座右の銘「まず疑ってかかるのが科学です」ー

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