熊本市職員の決意ー殺処分ゼロを目指して

2013年度、日本では約13万頭の犬猫が殺処分された。

その日本で殺処分数を減らし続け、2014年ついに殺処分ゼロを達成した熊本市。何が熊本市の殺処分数の減少を可能にしたのか、そしてそもそも今でも多くの動物愛護センターでは殺処分がなされているのはなぜだろうか。

 

熊本市の殺処分ゼロのひみつは

「嫌われる行政になろう」という決意にある。

(『犬を殺すのは誰か−ペット流通の闇−』太田匡彦、朝日新聞出版、p.92)

 

私(筆者)は2012年に熊本市動物愛護センターを訪れ、実際に職員の方の話を聞いた。J-5-6*

2002年以降、センターの職員は犬猫の引き取りを断り「飼い主責任」の徹底を開始。 お金や理解がない中、取り組みで一番大変だったことは、「引き取りは行政の義務だろう!」と声を荒げる市民がいても、時には警察を呼ぶ程の事態になっても、諦めないで「ここに来たらこの犬は息を引き取ることになります。どうか考え直してほしい」と飼い主に命の重みを伝え続ける、ということ。

しかし、そもそもなぜ年間13万頭もの犬猫が殺処分されているのだろうか。その理由には、ペットブームがつくり出した「負のサイクル」がある。つまり、動物を安易に生産、販売、購入、遺棄し、生産するというサイクル。

生産性を第一に考える悪徳ブリーダー。

ぬいぐるみのようにコロコロした、商品として旬なうちに子犬・子猫を売ろうとするペットショップ。

可愛さにほだされて、何があっても一生その動物と暮らすという覚悟なしに買う飼い主。

もしくは飼い犬・飼い猫に避妊去勢手術をせず、知らないうちに生まれたからと動物保護施設に動物を捨てにいく飼い主。

そのサイクルの受け皿として、センターの職員の方々は保護動物の世話をし、保護するスペースがなくなれば殺処分を余儀なくされる。

一方、ドイツの動物保護施設は殺処分を持たず、イギリスも動物が重い病気にかかっていたり、人と暮らせないほど凶暴に訓練されてしまった動物以外は基本的には殺さないよう動物を保護している。

ドイツやイギリスでは、これらの動物保護施設はほとんどが民間の運営で、チャリティーで成り立っているのに対し、 日本では、人手もなければ財源も理解もない。そんな中、熊本市では職員の方の決意、熱意が殺処分を劇的に減らした。

 

熊本市に限らず、全国の動物保護施設の職員の人々は葛藤をかかえながら命と向き合っている。京都の動物保護施設の所長は、「誰もが終世飼育を徹底すれば殺処分はなくなる」と話した。

そう、市民にできることもある。

動物を飼うときは、まず動物保護施設を訪ねてみる。

どこで動物と出会ったとしても終世飼育をすること。

日本全体で殺処分ゼロを可能にするのは、私たち一人一人の選択なのかもしれない。

 

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熊本県 動物愛護管理 ホームページ、「データマップでみる本県の現状」

http://www.kumamoto-doubutuaigo.jp/datamap.php

環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室、統計資料「犬・猫の引き取り及び負傷動物の収容状況」

https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html

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投稿者の過去記事

動物法を研究しています。
普段ほとんどの人が疑問に思わない、けど考え始めたらちょっとおかしいかもしれない、人と動物との関係について書かせていただければと思います。
読んだあと動物問題を少し身近に感じて、何かを感じていただけましたら幸いです。

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