先週7月17日夜、永田町・参議院議員会館。外では安保法案に対する学生デモが行われているなか、同じく学生の私たちは「カジノ」について考える場を企画していました。
(1)カジノを考えるディスカッション
なぜこの時期に敢えてカジノなんだ、という声も聞こえてきそうですが、開催予定日がたまたま安保法案の衆院採決の時期と被ってしまったのです、、、。しかしながら思い返してみれば、昨年末の衆院選はアベノミクスが最大の争点と言われながら、結果こうして安保、憲法の問題が話題の中心となっています。つまり、何がいつ議論の中心になるかわからないから、それこそ「有事の際に備えて切れ目なく」色々なテーマについて考えることが大切なのだろうと思います。
今回のこのイベント、題して「CASINOは何しにニッポンへ??」、これはIR法案についてのパネルディスカッションでしたが、主にカジノを中心にして話が進みました。ゲストには以下の方々をお招きしました。
◆木曽 崇氏(国際カジノ研究所 所長)
◆松田 公太参議院議員(日本を元気にする会 代表)
◆福島 瑞穂参議院議員(社会民主党 副党首)
(2)IR(統合型リゾート)のメリットとは?
日本のカジノ研究第一人者である木曽氏、IR法案推進派の松田議員、反対派の福島議員、という顔ぶれです。
ではまずそもそもカジノとは何なのかということについて、当日イベントで使用された木曽氏のスライドや、繰り広げられた議論を通して簡単にまとめていきたいと思います。スライドは下記リンクからご覧いただけます。
(http://i-vote.jp/tokyo/wp-content/uploads/2015/07/f34cda359858a7499d3f21a293fe453e.pdf)
◎IR(Integrated Resort)=統合型リゾート
→会議場、展示施設などに加えて、カジノ施設など日頃から観光客を誘致出来る様な
施設を備えたもの。
◎観光および地域振興、財政の改善が目的。
◎大都市のみならず地方への設置も検討することが望ましい。
◎国は承認だけを与え、民間事業者が設置および運営する。
→つまり税金は1円も使われない!
次にこのIRのメリットをまとめます。
◎投資を誘因する(民間事業者が設置&運営)
◎観光振興(外国人観光客を呼べる=成長戦略)
◎地域経済振興(購買力のある観光客によりIR周辺の地域にもお金が回る=地方創生)
◎売り上げの一定率を納付金として国、地方公共団体に納付(財政効果)
ふむふむ。税金を使わないし、観光や地域経済の為になるし、カジノってなんだか楽しそう!!だからぜひ日本にも設置してほしい、、、、と考える前にデメリットも見ましょうか。
◎地域治安の悪化、組織犯罪の関与(よく洋画に出てくるようなイメージ)
◎ギャンブル依存症、またそれによる大量の借金、生活苦による犯罪
◎青少年賭博、勤労意欲の減退
なるほど。悪い面も同じ数あるわけですね。実はイベント当日、(株)マツイ・ゲーミング・マシン様に機材をお借りし、「ブラックジャック」というゲームを、参加者を交えて実際に行いました。ほんの数分でかなりの額のお金が動きます。また、運の良し悪しに勝敗が左右されている気がして、ついついもう1ゲームくらい、となってしまいました。その時は自分のお金が賭けられていないから良いものの、ホンモノになればそうはいきません。あと少し、あと1回の積み重ねで依存症に陥ることはありうると肌で感じました。
(3)やっぱりカジノは良くない?
IR法案反対派の福島みずほ議員からは、ギャンブル依存症の危険性(自殺者が増える)とそれによる多額の損失からカジノによる経済効果は無いという指摘に加え、自身の弁護士としての観点から下記のような反論がありました。
◎カジノは「賭博場開帳図利罪」「博徒結合罪」の構成要件にあたる。
(※刑法186条2項:賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。)
→つまり賭博が出来る場所を開くこと、利益を図る目的でそれを行うことは処罰の対象だということ。
◎オートレースや競馬などは公営であり、ほとんどの収益を自治体の財政の為に使う。
→利益を上げないので極めて例外的に、正当行為として違法性が阻却される
◎カジノは民間が儲かる為に行うので法律的に説明がつかない。
◎カジノを許せば他の賭博も許すことになる。(カジノだけOKとはいかない)
法律的な観点から、そもそもカジノは出来ませんよ、という話ですね。これに対し、すかさず推進派・松田公太議員からはこう反論が来ました。
◎シンガポールでは、依存症患者や多くの借金を抱える人を減らす為に、カジノで得た
収益で無料セラピストやカウンセラーを大幅に増員し、むしろ患者を減らすことが出来た。
◎日本の自殺者の大半は経済苦である。カジノ1施設あたり1万人以上の雇用があるため、雇用が生まれ収入が高まれば自殺者も減る可能性が高い。
◎公営にすると、いまある競輪や競馬のように省庁の天下り先となり、無駄なお金もどんどん出てしまう。また、赤字になった場合は税金を使うわけなので国民負担となる。
IR法案は何もカジノ単体の話ではありません。参加者からの質問にはこういったもの
もありました。
Q.大規模な展示会場というと幕張メッセなどがあるが、大赤字となっている。それにも関わらず統合型リゾートを造るのか。
Q.地域経済の振興とあるが、例えば某大手ショッピングモールのように、巨大な商業施設が地域の商店街などを却って苦しめることはあるのではないか。
Q.アジアにおけるカジノといえば、韓国、マカオ、シンガポール、といった具合に既にいくつもあるが、後発だと競争に負けてしまうのではないか。
これに対し、有識者の木曽氏からはこう回答がありました。
◎仮に大赤字になったとしても民間でやる以上、税金は一切投入されない。全てその事業者の責任となる。
◎そのショッピングモールはその地域に自由に出店するが、今法案の場合はIRを招致したい地方自治体から要請を受けて初めて設置される。様々な事柄を検討した結果、カジノの招致をすることになる。
◎多くのカジノはアジアといっても東南アジアの方に集中しており、日本の周辺にライバルが多いわけではないので逆に集客を見込める。また、そうした競争に負けるならその程度のものだったということ。
以上が今回のイベントで出た議論となります。民間が運営をするというところ、経済効果も期待できるというところ、一方で依存症、犯罪などの可能性も当然ながら残されているところが主な論点といえるでしょう。また、現行の刑法に触れてしまうことも忘れてはいけません。
IR法案に対し、賛成・反対、ともに説得力のある主張が展開されていますが、私たち学生団体ivoteとして言えることは、一人一人が両方の意見に耳を傾けたうえで、こちらを立てればあちらが立たぬ、というもどかしい気持ちになりながらも最後はご自身の価値観と照らし合わせたうえで、「投票」という形で意見を表明することです。この記事や、今後の弊団体のイベント・キャンペーンが何かを考えるきっかけとなり、そして判断材料の一つとして役立ててもらえたらなら、これほど嬉しいことはありません。
現在IR法案は審議待ちの段階ですが、じきに議論の中心に上がる日が来るでしょう。その際にはぜひ上記を通して考えたことを基に、国会での展開に注目してみてください!
(当日の様子、木曽氏のスライドなどは弊団体HPからご覧いただけます!)
学生団体ivote
代表 桑原 稜
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