SEALDsに聞いた、声上げる「若者」が陥るジレンマ

安全保障関連法案の参議院審議が、大詰めを迎えています。与党側は9月中旬の採決を目指していますが、野党側の追及に審議が度々中断し、議論は深まらないままです。

同法案に関する反対派の動きを特徴づけているのは、各地の大学生世代の人々が広げた活動です。今年5月に立ち上がったSEALDs(関東、関西、東北、沖縄)を皮切りに、FYM(福岡)やWIND(三重)、WDW(熊本)など、8月までに全国でおよそ12団体が活動を開始しました。8月30日には国会議事堂前に警察発表でおよそ3万人が集まり、反対を訴えながら議事堂正面まで迫りました。

各野党の党員や多数の学者、文化人などが集会に参加し応援を表明するなど、世代を問わず反対派の顔となっているSEALDs。若い世代の運動の広がりは、日本の安全保障に関する議論の現状を浮き彫りにしています。

 

国会前でコールする高校生(8月30日・撮影=田添聖史)

国会前でコールする高校生(8月30日・撮影=田添聖史)

 40年間のタブー 打ち破るために

立ち上げ当初にSEALDsに加わった東京都内の男子大学生(21)は「若い世代は参政意識が低いとよく言われることに不満を持っていた。(政治について)堂々と話せる環境を作りたかった」と、活動に参加した理由を語ります。また「安保闘争をきっかけに若い世代の政治的発言がタブー視されるようになったのではないか」と分析しました。

1959年から60年、70年の2度にわたる安保闘争は、日米安全保障条約の改定と延長に対する反対運動でした。日本史上空前の反政府運動といわれ、「安全保障」というテーマの共通性、60年当時の岸信介首相が安倍晋三現首相の祖父であることなどから、現在の安保法案への反対運動とさかんに比較されています。

闘争終息の原因となったのは、72年に学生世代の反対派が起こした「あさま山荘事件」や「山岳ベース事件」。凄惨な暴力や殺人行為を肯定した実態が明らかになり、運動への批判が強まりました。

活動開始にあたってSEALDsがまず確認したのは「非暴力」でした。安保闘争の反省をふまえ、決して暴力的な手段に訴えないという鉄の掟を立てたのです。安保法案に反対する趣旨は同じでも暴力を肯定する団体とは協力せず、抗議活動の現場から立ち退きを求めて衝突したこともしばしば。「特定の団体の参加拒否は差別」という批判もありましたが「『若者の政治的活動は暴力的』というイメージを覆さないと(政治に関して)自由に話せる環境は生まれない」と考え、非暴力を徹底したといいます。

非暴力に続いて、他のイメージ戦略も功を奏しています。ポピュラーな音楽を流しながら行進やスピーチを行う「サウンドデモ」の形式を採用。従来はスローガンを繰り返し叫ぶだけだったシュプレヒコールにもラップや英語を取り入れ、ノリのよさを追求しました。

8月23日、SEALDs KANSAIのデモに沿道から飛び入り参加した京都府内の大学生は「(安保法案反対の)趣旨にも共感したが、とても楽しそうだったから思い切って参加した」と笑顔を見せました。さまざまな戦略がタブーを克服し、全国各地で政治に対して声を上げることのできる環境を生んでいます。

国会前には感極まり涙を流すSEALDsのメンバーもいた(同)

国会前には感極まり涙を流すSEALDsのメンバーもいた(同)

 新たなジレンマ、声をあげる「若者」に

活動の盛り上がりに対して、インターネットにはSNSを中心に嫌がらせが相次いでいます。「デモに参加すると就職できない」といったうわさのほか、SEALDsの参加者の実名や顔写真を集めて拡散したり、女性メンバーに猥褻な画像を送りつけたりするなど悪質なものもありました。

嫌がらせを受けた女性メンバー(21)は「無視するようにしていたが、とてもつらかった」と涙をにじませます。「私たちが顔や名前を隠さずに活動するのは、自分の発言と日本の将来に責任を持つため。ネット上で一方的に嫌がらせをするのは、すごく卑怯なことだと思う」

SEALDs KANSAIに参加する大阪府内の男子大学生(19)は、大学の同級生がSNSに投稿した「シールズは目立ちたいだけのガキ。政治を変えたきゃ選挙に行けよ」という内容に、大きなショックを受けたという。「(SEALDsには)いろんな考えを持った人がいるし、デモだけでなく歴史や法律の勉強会など目立たない活動もしている。大阪都構想の住民投票のときは、投票を呼びかけるために街頭に立った。冷笑が誰かを傷つけていることに気づいてほしい」と、苦い表情で語りました。

「参政意識が低い」と言われるにもかかわらず、活動を起こせば嫌がらせや冷笑を浴びる。声をあげる「若者」は、新たなジレンマに陥っています。

プラカードを掲げる野党議員(日本テレビNEWS24から)

プラカードを掲げる野党議員(日本テレビNEWS24から)

 空回りする「大人」 議論は深まらず

若い世代の運動の広がりに対して、肝心の議論は空回りが続いています。安保法案の国会審議に関して、与党は7月16日に衆院通過へこぎ着けたものの、参院では審議開始直後から中谷元防衛相の答弁中に審議が度々中断、散会する一幕もありました。他にも首相の野次による審議中断などがあり、今のところ政府の答弁は「国民の理解を求める」にとどまっています。

一方、野党も追及力の低さを露呈しています。国会議事堂前を中心に各地の反対派集会へ党員が参加し連帯を呼びかけたものの、審議では各党ともまとまりを見せていません。7月15日の衆院特別委の採決時には議場でプラカードを掲げるなどパフォーマンスに走りました。安全保障に関する議論は両極化し、停滞しています。

安保法案の審議に関して、「若者」の盛り上がりに対して「大人」は確固とした意見や方針を打ち出すことができていません。3カ月以上延長した会期も9月27日で終了、審議はいよいよ最終盤へ突入します。安保法案に関する審議を終えても、来夏の参院選へ向けて、TPP関連交渉や原子力発電所の再稼動問題など、テーマを移して与野党の攻防は続きます。次の国政選挙までおよそ10カ月、「若者」のジレンマと議論の停滞を克服できるかが最大の課題となりそうです。

ピックアップ記事

  1.  大学の新学期2017年度がはじまり一月ほどが経った。 新入の学部生、まず、おめでとうございます…
  2. 出町柳駅すぐのバス停で、バスに乗り、ゆられること30分。そこには都会の喧騒から離れた、自然が豊か…
  3. 4月、出会いの季節。今年も多くの新入生が、大きな期待を胸に大学へ入学した。&nbsp…
PAGE TOP