安定という不安定を生む言葉を考えてみる

現代の日本ではよく「若者の将来の夢」は何かと聞かれる。そんな時、「安定した職業」と答える人が多い。この「安定した職業」という夢を、私は故郷である人口6万人と決して大きくない千葉県東金市の小さな小学校で初めて知ったのである。

幼稚園、小学校低学年の時に「将来の夢は◯◯マン・仮面ライダー」と言っていた友人達が小学5年生に上がった時に、当時鼻を垂らし教室を駆け回っていた私にとってカルチャーショックとも言える事件が起こった。それは、今の総合科目にあたる学活で行われた「将来の夢を発表しよう」というものだ。

そのとき私の夢は「マッサージ師」と書いた記憶がある。当時祖母が通っていたローリングという技法を使ったマッサージに通っていたため「マッサージすげー」と思ったことからくる単純な理由だ。そこで気になった周りの答えは、女子はパン屋さん・ケーキ屋さん。男子はヒーローという人もいた。ただそれより多かったのは、「公務員・先生・市役所」という答えだった。私はそもそも、これらの職はなにをするのかすら疑問であった。ただ印象に残っているのは、その理由が、「お父さんやお母さんが安定した職業は上記の職と言っていたから」だったことだ。

さいとうさん

そこで、安定とはなんなのかまず私は考えたが、わからない。父に聞けば、安定なんてありえないと言う、ますますわからない。この安定した職に就きたいという言葉は、大学生である今もよく耳にする。
そしてその意味もわかるようになった今、私は言いたい。

安定なんて存在しない。

この地球でさえ、同じ位置で回っていることは奇跡的と言われ「安定はしていない」と言われているくらいである。私たちの生きる地球ですら安定していないのに人間が安定するわけない!と安定の意味は違うが私は思うのである。
良くも悪くも不安定だからこそ生きていて楽しいのであり、水戸黄門ではないが人生楽ありゃ苦もあるさとなっていくのが人生と言えるだろう。例えば、頻繁に求められるような「安定した世の中」を無批判に求め続けるとすれば、その極地は社会主義かつトップにたつ人が死なずに国を導き続けることが必要になってくる。それは何故かというと究極の安定とは「平等」と変わらないことが必要になってくるからで、結果的に私たちは同じ給料と職を得て毎日同じことをすることになる。

ただ、これは生きていることになるのだろうか?年だけとることに価値はあるのかと疑問が生まれていき、その安定は壊れていく。革命家が生まれ、暴動が起こり、その安定は壊れ不安定な世の中になるだろう。

つまり! 安定≠平和 となる

さいとうさん2

ここまで書いたことは極論であるが、安定とは存在しないのではないかと私は思う。
安定した職業は社会主義の誰もが同じ給料、同じ仕事をすることではないのであって、その国に生きる人々、日本であれば約1億2千万もの歯車が動き続けることこそ安定だと考えられる。

俳優を目指し上京し全力で稽古し夢半ばで破れる人は世間一般では馬鹿と言われるのかもしれない。

独立して1年目軌道に乗ってきたベンチャー企業の社長は周りに無謀と言われるかもしれない。

芸人として一発ギャグを当て、莫大な富を得た若手芸人は一発屋と呼ばれるだろう。

三つの例を出したが、この人々を現代の人はどう見るだろうか?多くの人が馬鹿にする、無謀だ、すぐ終わり消える、と軽視するのでは無いだろうか?
無謀な人と自分を比べ安定を感じる。これが今の日本人の安定の確認方法なのではないかと私は考える。
学生の私ですらこう考えるのだから、同じ考えの方もおそらく多くいるのではないだろうか。心の中で人を馬鹿にして軽視する傾向が残念ながら日本人には多いと感じる。
また多数に合わせてしまう国民性のためか、無謀なことをする人は心のなかで褒めることしかできないのだろう。
このような国民性もあって、変化を恐れ安定を求めるという答えに至るのではないか。

さうとうさん3

「周りと違う考えの俺すげー!」

「恥ずかしながら」などという前置きもなく、私自身はこの考えをもっている。「恥ずかしながら」という言葉は、周りと違うことを恐れる心の表れなのではないかと個人的に思ってしまう。恥ずかしいと思う考えなら、持つ意味はない。ここで一つカミングアウトしたいと思う。

私は幼い頃から吃音を患っている。

吃音とは記憶に新しい、福山雅治・藤原さくらW主演のフジテレビの月9の「ラブソング」にて藤原さくら演じる佐野さくらが患っている、言葉が出にくいというもの。私はこの吃音により、つい一年前まで心も未来も不安定であった。人に馬鹿にされるのが怖い、普通に話せる人が疎ましいとさえ感じていた。安定した職に就きたい?就職には必ずついて回る面接が怖い私は、俗に言う「安定しない職」にも就けないのではないかという不安定の塊であった。しかし私はこれを克服し、安定を超え希望を手に入れた。吃音が治ったわけではなく、周りから馬鹿にされることも未だにまだある。
それなのに何故暗い気持ち、不安を取り去ることが出来たのかというと…

それは言葉を上手く話せない吃音者にのみ得ることを許される、発する言葉一つ一つのありがたさ、を知ったからだ。

何気なくおはようと人は言うだろう、私はおはようという言葉が出ない時がある。
その出すことが難しい、「おはよう」がすんなり言えたとき、ましてや「おはよう」と返してもらった時に私はとても幸せな気持ちになり心が本当の意味で

“安定する”のだ。

この「安定する」という言葉は、本当の意味では心に使うものではないかと思う。
私が今心から伝えたいことは

金銭の安定より、心の安定する職を目指すことが本当の意味での安定につながる、ということだ。

金は心の安定につながるし金がなければ心は不安定になる、そのため多くの金を得られる職につき安定したいということに繋がるのだろう。
金を多く得られたらなんでも出来る、六本木にある高級レストランでご飯を食べられる、ダンヒルやアルマーニのスーツを着ることが出来る。
しかし着飾り腹を肥やしてみても何かが足りない、それは現に私が親に甘やかされ金をもらい贅沢をした結果の話だ。
大金をもらうより、吃音による一語の大切さを知った時、おはようと返してもらった瞬間の方がよっぽど私は得るものが多く、心が安定した。

最後に今、大金を求め就職を目指す人に私は言いたい。

その仕事、心の安定につながりますか?

あなたにとっての安定を得られることはなんですか?

財布の安定を求めブラック企業に入り、心の不安定が生まれ大切な命を落とす人が一人でも減ることを心から願い締めとしたいと思う。

さいとうさん4

斉藤 かずき

斉藤 かずき[観光•言葉]

投稿者の過去記事

都内私大観光学部の三年生です。
0.数ミリでもいいから、誰かの心を動かせたらをモットーに学生ライターとしての活動を始めました!
日々疑問に思ったことを、文章に起こして皆さんはどう思っているんだろうか?ということを知りたくて始めました。
吃音症を幼い時から患っており上手く話せない時もあります、ですが吃音のおかげで知れたこともあります。吃音症方々も、良ければお話ししませんか?
多くの方との繋がりを得られますように。
Mail:kazuki_boyo21@yahoo.co.jp
Twitter:kazuki15xxxx

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