「いい塩梅だし、正直わくわくする」一般人から生まれた「保育園落ちた死ね。」はやっぱり人を動かした。

先日、一個人のはてな匿名ダイアリーへの投稿から生まれた「保育園落ちた日本死ね」というフレーズが流行語大賞にノミネートされた。

 

これを発端に、再び同フレーズを取り巻く議論が盛り上がった。

 

「はるかぜちゃん」の愛称でおなじみの女優、春名風花は、Twitterでこんなコメントを残している。

 

「はるかぜちゃん」twitterより

それまで議論をなんとなく眺めていた私だったが、このつぶやきを見てにわかに脳内が整理された。
せっかくなので「保育園落ちた日本死ね」に関して私が感じていたこと・考えたことをまとめてみる。

 

このフレーズが流行った当時、ある友人は「どんな状況下のどんな対象に対しても死ねと表現すべきではないと思う」というようなことを言っていた。私はそれに小さな共感と違和感を抱いたが、その正体はすぐにはわからなかった。

 

しばらくしてこの文脈での「死ね」が、

 

「大金をだまし取られた女が悪の組織に某所の倉庫に呼び出され、取り囲まれた状況で悪の親玉に死ねと言い放つも、言われた方は痛くもかゆくもないという風にせせら笑い、言葉は倉庫に虚しく響き、消えていく」

 

という状況を私に連想させることに気付いた。

 

「死ね」という言葉が日本に傷をつけることはない。そしておそらくではあるが、「保育園落ちた日本死ね」という言葉で心を痛める人はあっても、傷つく人はいないように思う。

そこがこの文脈における「死ね」が、日常において人格や感情を持つ個人に向けられた「死ね」とは大きく違う点だ。

 

そして、「保育園落ちた日本死ね」が、私が連想した状況と異なっていたのは、以下の二点だ。

 

①同じ悲しみを共有する人にこの言葉が届いたこと。

この言葉は暗い倉庫や一人の部屋に消えずに響いて、広がった。

数多の統計や研究よりも、この悲しみを直接・間接に共有する人に、端的に届く言葉だった。

 

②保育園に落ちるという状況は、誰かの悪意が作り出しているものではなく、構造的な欠陥によるものだということ。

以前から政府や自治体、その他様々な主体が問題を認識し、状況を変えようと取り組んでいた。

この言葉が世の中で耳目を集め、問題意識がより多くの人に認識されたことで、議論と取り組みを加速させた(が、構造的な欠陥だけあってそう簡単に解決しない)。

関連記事①:駒崎弘樹氏ブログ【「保育園落ちた死ね」と叫んだ人に伝えたい、保育園が増えない理由】 

関連記事②:yahoo!JAPANニュース【政治が子育て層を簡単に無視できる、投票率以外の大きな理由by駒崎弘樹】 

関連記事③: dot. AERA記事【保育園落ちても質は落とせない 国の緊急対策では解決しない】

 

以上を踏まえて私が言えるのは、次のようなことだ。

 

◪「死ね」は言うのも言われるのも気持ちのいい言葉じゃない。流行させたい言葉じゃない。

◪でも「死ね」としか言いようのないやるせない状況もある。数ある日本語の中でも、怒りや憎しみ、悲しみの強さを端的に伝える言葉。

◪「保育園落ちた日本死ね」というフレーズは多くの人の共感を呼び、世の中を動かした。私は「神ってる」の百倍は目にした(「神ってる」の方を五百倍見聞きしたわ!、という人もいるかもしれないが…)。

◪発言者も笑顔で登壇した議員も、本当に日本に死んでほしいわけじゃない。もっとよくなってほしいと思っている(はず)。

◪歴代の流行語大賞を見ると、いろんな場面に応用しやすくて、使って・振り返ってふふっと笑えるような、ポジティブかニュートラルな意味合いの言葉が受賞しているように思う。でも「保育園落ちた日本死ね」が、その文脈で流行したのは確か。「ノミネート」はいい塩梅だと思う。

◪日本を動かす言葉が一般人から生まれてるっていう事実には、正直わくわくする。

 

ちなみに、「保育園落ちた日本死ね!!!」 元の記事はこちら。 

 

「死ね」という言葉が使われているのは実はタイトルだけである。

改めて読んでみても、軽妙かつ端的に問題状況を物語る、優れて力のある記事だと感じた。

 

私もこの記事に動かされた一人だ。

きっと後にも先にも私の人生でこんなに「死ね」という言葉を使うことはない。

「死ね」の話はこれでおしまい。

ご本人もこうおっしゃってますSHINE(いつかの『名探偵コナン』を彷彿とさせますね)。

 

生まれ変わろう、日本。

声を上げよう、私たち。

 

横光明子

横光明子

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わくわくするのが得意です。
みんながもっといきいき生きられるように。
コミュニケーション/コミュニティ/教育/まちづくり/参画/協働/言語/デザイン/建築 他いろいろ

京大法学部で憲法・行政法を専門にしつつ、中高英語科教職とってます。わりとどこにでも出没します。

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