みんなで歩いていけたらいいな~自分嫌いな女子大生がニューヨークに行く前に語ったこと~

 

5月11日夜7時、ゆっくりと日が落ちていく頃―
京都大学農学部横の小さなお店。
開店直後から、お客さんが少しずつ訪れ、あたたかな雰囲気に溢れている。
「食×社会問題」をテーマに、学生団体ivote関西が週に1開催している、若者がお酒を飲みながら気軽に社会問題を考える場所。

それが、「bar X」だ。

その出店日である今日の店長はこの人、中村多伽(なかむらたか)さん。

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京都大学総合人間学部4回生の才女であり、3回生でカンボジア学校建設プロジェクトPumpitの代表を務めた彼女は、先日3月末まで同国で学校建設をして帰ってきたばかり。
ときに京大生、ときにPumpit代表、ときにバーテンダー、ときに女優。
そしてときに、「bar X」店長。
多彩な顔を持つ彼女は、なんと今年度1年間休学し、半年間ニューヨークで働くという。

そんな彼女が今、何を想い、barでどのようにお客さんとの関わりを楽しんだのか。
出店前のインタビューと、出店中の模様を「こってり」お届けしたい。

 

【話がいきなり脱線?!学校建設ボランティアの裏側に潜入!】

———多伽さん、「得意技は壁のヤスリかけだ」といろんなところで言っているって聞いたのですが。笑

そうそう(笑)
(学校の)壁の内側にペンキを塗って、子どもたちが怪我しないように、ペンキがはがれにくいように、壁にヤスリをかけるの。
それを、音でどのくらいの状態か聞き分けられるようになって。

———えぇぇ。

ちょっと高い音だと、あ~まだダメだな。落ち着いた音してきたら、いいな、と。今回は学校が完成しなかったから、披露できなかったんだけどね。
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———学校建設って実際どんなことをするのですか。

基礎組んで土台を作って、レンガ積んで柱をつくって、それで屋根を取り付ける。現地の大工さんに手伝ってもらいはするんだけど、肉体労働ばっかり。
村の子ども達も手伝ってくれるけど、邪魔の方が圧倒的に多い(笑)
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———学校建設してて、嫌になったりとかしないんですか?

いやもう、基本的に嫌やで。

———(笑)

毎晩、帰るまであと〇日、って数えてる。カンボジアってベストシーズンが12月1月ごろで。
私たちが行った3月って乾季やねん。だからめっちゃ暑くて。
でも、3日前ぐらいからみんな、「オレ、今やから言うけど、帰りたくないわ~」とか言って(笑)
基本的にしんどいんだけどね。

 

———その辛い学校建設を乗り越えた心の支えと言いますか、どんなことを考えながら作業していたんでしょう。

心の支えっていうわけじゃないけど、その辛い学校建設をするにあたっては「自分は何のためにやっているのか」を自分自身に問わなきゃいけないんだよね。
土をあっちからこっちに移すっていうすごい単純な作業をしながら、今私は何でこれをやっているんだろうって考えたり。
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あとは、カンボジアの村の人たちと信頼関係を築くことも支えになるかな。
現地の大工さんは仲間でもあり、自分と全く違う価値観を持つ人でもある。彼らは小さいころから大工の父親をみて学んで、18.19歳にして手に職をつけていて。
彼らからしたら、安い賃金で、でも仕事にプライドを持って毎日生活するために働く自分達と、自分と関係ない海外の国で学校建設している日本人って、すごいギャップがあって。
私らも私らで、色んなことを「お金がない」っていって諦めるし切り捨てるし考えるのをやめてしまう彼らを見ているわけ。
でも、「それは幸せじゃない」とは言い切れなくて、とか考えたりして。
そういうことを考えられるから、この建設の期間はめっちゃ大事。
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【今の日本の大学生は、勝手にいろいろ背負いすぎちゃっていると思う。】

———お金があるからといって、幸せだとは限らない?
お金を「貯める」って、日本人の考え方で。

———と、いうのは。

あるとき、カンボジアの子ども達が物乞いしてきたことがあって。
100リエル(日本円で言うと3円くらい。500リエルで飲み物が買える。)を渡したら、「こんなはした金いらない」って捨てられた(笑)
彼らからしたら、今、飲み物を買える500リエルが欲しいわけよ。例えば、100リエルずつ、5人から二日で集めようとか、そういう感覚はないんだよね。
だって、飲み物が欲しいのは「今」で、明日自分が生きてるかとかは極端な話、わからないから。
彼らにとっては「その1日を生き切る」っていうのが当たり前で、自分の自己変革とか、そういうことはまったく考えないし、できるとも思ってない。
でも、よく考えてみたら、「未来のために生きる」って、(私達は当然にやってるかもしれないけど)明日死ぬかもしれないのに、不自然だな、とも思うよね。
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今の日本の大学生の人たちは勝手に色々背負いすぎちゃっていると思う。
10年後、20年後のことを考えて、社会に対して責任を果たさなきゃ、自己実現をしなきゃ、幸せにならなきゃって。
それで自分を追い詰めちゃっている。周りと自分を比べて、それを背負ってしんどくなる。
「幸せにならなきゃいけない」って思っている時点で、それはきっと「幸せ」じゃない。
だから、カンボジアの人たちとどっちが幸せなんだろうね、って思ったりもする。
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———ちょうど今、将来何しようって悩んでるとこで、心にきますね。

一回、カンボジアに行くことをお勧めするよ(笑)
インターネットがつながらなくてメイクしても汗で流れる、でも現地の人は楽しそうで、ご飯は美味しくて夜もちゃんと寝られる。自分は何もしなくても生きていけることに気付けるから。
きっと、将来とかそういうことに悩んでいる人って、「自分が何者かじゃなきゃいけない」っていう考えに縛られているんだよね。
でも、経歴がなくたって、多くの人は五体満足で、楽しく生きていけるはず。

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【カンボジアに小学校を建てることは、0.000000001…ぐらいのプラスで、前進】

———カンボジアの子どもたちのために、学校建設をする意義は何ですか。

理由は3つあって。
1つ目。30年前にポルポト政権が、「教育は必要ない」と言って教員をはじめ国民の7人に1人を殺し、学校を潰しちゃった。今はそれを立て直す、過渡期だということ。

2つ目は、心の貧しさからの脱却。自分達が貧しい理由を外に求めて、自分の幸せについて考えるという選択肢を与えられない、考えられない人がここでは多いと感じるから、それを変えたい。

3つ目。小学校っていうのは、初めて同年代の子たちとコミュニケーションをとって、協力したり互いの気持ちを考えたりする、そういう一人の人間として必要なものを培う場所だから。人が集まる「ハード」としての必要性がある。

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———Pumpitのリーダーとして苦労したことは。

私は、「リーダー向きじゃない人」っていない気がする。
リーダーは誰でもできる。その人に合ったリーダーの形があるはずだから。
でも、一つ、リーダーの義務としてあるのは、メンバーをワクワクさせ続けること。
メンバーが、夢を持ち続けられるようにすること。……めっちゃクサイ言葉でいうとね(笑)
メンバーのモチベーションを高く維持し続けること。
その方法はいくらでもあるから、その人なりのやり方を見つければいいし。

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———多伽さん自身の夢は?
私は、カンボジアに小学校を建てることは、カンボジアにとって0.000000001…ぐらいのプラスで、前進だと思う。
で、小学校に行ったたくさんの子どもたちの中から、将来中学校に上がれる子が1人かもだけどいるかもしれない。
その村のヒーローになるかもしれない。
それで、もしかしたら、その子が、カンボジアのヒーローになるかもしれんやん。わからんけど。
道端で偉い人に見染められたりしてさ。わからんけどな。

そのカンボジアのヒーローがカンボジアをちょっとでも変えたら、世界全体がいい方向に、みんなが幸せな方向にちょっとでも変わるかもしれんやん。
そう考えたら、私は凄くワクワクする。
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【5年後死ぬとして、今1番ワクワクすることをしたい。】

———そんな多伽さんの、エネルギーの源はなんなんでしょう。

こんなこといきなり言うと驚くと思うんだけど、
私は、常に、5年後くらいには死ぬつもりで生きてる。
明日死ぬとは思ってないけど、10年後20年後の自分がどうなっていたいかとか、その時の自分は絶対変わってるから、考えてもわからない。
5年後くらいまでが、自分がプランニングできる範囲かなって。
そうなった時に、5年以内に一番自分がわくわくするにはどうしたらいいか、を考えて何か選択肢を選ぼうと思ってる。

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私、この7月からニューヨークに留学に行くんだけど。
10年、20年のスパンで見たら、わざわざこの時期に休学して留学に行く必要はないのかもしれない。経営学とか英語の勉強も今じゃなくてもできるし。

でも、私は何かを乗り越えて頑張って登っていく感じが好きだから、今しんどいかもしれなくても、学生時代に長期的な海外経験をしてみたいと思った。
自分がインターンとかしてて、「あ、この人のものの見方いいな、この人敵わないな」って人は、大体、長期的な海外経験がある人だったから。
自分もカンボジアに行っていろんな価値観に触れたし、海外経験が関係あるのかなって思った。

あと、せっかく行くならただ留学するんじゃなくて、自分から何かしらのアクションをしたいなと思った。
じゃあ働くことだ。って。
で、考えたときに、能力的に高いものを求められたり、カッコいいのは、ニューヨークかなってなった。

結論、自分がいま思いつく選択肢の中で一番ワクワクすることが、
ニューヨークで働く、だった。
5年後死ぬとして、今一番自分が楽しいと思うのは、これ。

だから、自分の源泉は、5年後死ぬ!なんですよね(笑)

 

 

 

【自分嫌いだけど、楽しく生きていきたいあなたへ】

ここで一度、話を未来に進めよう。
~頑張りたいあなた、頑張れないあなた、とりあえず歌って踊って笑いたいあなたへ~
と題されたbar Xの出店には、開店直後からお客さんが少しづつ訪れ、多伽さんとお話したり、メニューを選びながら隣の人と話をしたり。
この日のメインメニューは、「アモック」。
ココナッツミルクとカレー粉をベースに、肉と色とりどりの野菜を煮込み、ご飯と一緒に食べるカンボジアの家庭料理。
多伽さんアレンジで辛すぎず食べやすい味。東南アジアの4種のビールと共に多くのお客さんが美味しそうに食べておられた。
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また、多伽さん自ら作って来てくださった、お客さんと「こってり」話すための質問のプリントがこちら。

本日はご来店ありがとうございます。

本日は、“私たちの幸せについて”考え、カンボジアでの学校建設を通して見つけた、
私なりの正解についてシェアできればと思っております。
以下の質問を、お隣の方と、お連れの方と、考えてみてください。

1:自分のことは好きですか。
2:Facebookで他人の投稿を見てどんな気持ちになりますか。
3:あと何年生きるつもりで生きてますか。

この質問は、人にも自分にも優しくない、自己肯定感が薄い、
負けず嫌いな、でも楽しく生きていきたい、私のような人のために考えました。笑
それではごゆっくり、お楽しみください。

店長 中村多伽

この日のお客さんの中には、多伽さんと同じPumpitのメンバーもいた。
また、多伽さんの友人経由でたまたま今日この出店を知った埼玉在住の男性が、この出店のためだけに京都に遊びに来るという嬉しいサプライズも!

そんな賑わう店内で多伽さんを中心にはじまった、「自分のことは好きですか」という問いかけ。
「大嫌い」という人はいなくても、「好きだ」とはっきり手を挙げられたのは二人ほど。
「どうして、自分を好きって言えないんだろう?」
多伽さんがお客さんに問いかける。
他にもっとすごい人がいるから。という人や、
嫌われていないかなって気にしてしまう、という人。
話の区切りに、多伽さんは少しだけ答えのヒントを話す。
弱いところ、悪いところ、そういう全部があって、自分。そうやって悪いところをひっくるめて自分だなって認められるようになったから、自分のことが好きって言える。

みなさんは、どうだろうか。

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「Facebookで他人の投稿を見てどんな気持ちになりますか」
二つ目のこの問いかけに、はじめは遠巻きにしていた人たちも、少しづつ口火を切り始める。
「Facebookで投稿できるようなキラキラしている人ってすごいなって思う。」
「ちょっとムカつくときもある。……妬みからきてるのかな。」
「自分の投稿が別に面白くないって思う。考えを発信して否定されたらって思うと不安だし、自信がない。でも、投稿してる文章を読んでいいなって素直に思うのは、素直に飾らずに、自分の想いを出してると感じた時だなって思う。」

 

筆者は、店内あちこちで語られる言葉に耳を傾けながら、多伽さんがインタビュー時に語っていた、「今、大学生に伝えたいこと」を思い出していた。

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【一緒に歩いていけたらいいな。】

———色んなことを経験した今、多伽さんが日本の大学生に一番伝えたいことは?

一緒に歩いていけたらいいなって思う。
わたし、人間を1つの集合体として捉えると、ラクだなって思って。それで、そう思うことにしていて。

例えば、スティーブ・ジョブズのマック、ビルゲイツのウィンドウズ、このお互いの追い付け追い越せの発展は、お互いにとっては相手がいなければって思ったかもしれないけど、私たちからすれば、その発展はすごく嬉しいことだよね。

そうやって、誰かが何かをできるようになって、それで誰かが幸せになることって、すごくすごく大きい視点で見れば、人類全体、自分にとって、プラスだと思うんだよね。

大学生のこの時期って、アイデンティティを確立して、自分が何者かであろうとする。そういう中で、嫉妬とか妬みとかが含まれた「ムカつく」ていう感情を持つこともあると思う。
私も負けず嫌いだから、「悔しい」って、よくなるしね。
でも、人類全体っていう視点で見たときに、言うたらその人は、私の進歩も勝手に助けてくれてることになるわけ。

だからそうやって、次を担う若者たちが相手のことを尊重して、「あなたのやってることすごい」って言って、そこに乗っかっていく形でどんどん競争していったとしたら、めっちゃ楽しいし全体にとってプラスだよね。

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【さ、明日も頑張ろう。(スペシャルな動画あり)】

「bar X」出店終了間際、多伽さんの弾き語りによるライブが開催。
最後の曲は、みんなで一緒に。

君とすきな人が百年続きますように。

歌って語って、刹那的な楽しみではあるけれど、明日への活力がわいてくる。
そんな、今回の「bar X」の出店。

多伽さんにとっても、お客さんにとっても、こってりとした楽しい一時になっていたなら、これほど嬉しいことはありません。

さ、明日も頑張ろう。

 

※今回出店してくださった中村多伽さんの所属していた団体、PumpitのFBページは こちら .
また、食を通して気軽に社会問題を考える、「bar X」のFBページは こちら .

Mielka(旧ivote関西)

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投稿者の過去記事

私たちMielka(旧ivote関西)は若者と政治のキョリを近づけるために
若者の政治参画の促進、特に投票率の向上、投票の質の向上を目指して活動している団体です。
公式FBはこちら→https://www.facebook.com/Mielka.japan/

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