夏休みは、冒険旅行に出かけよう!

あなたは、「漫画」と聞いた時何を思い浮かべますか?

『ワンピース』?『ナルト』?『銀魂』?

私が思い浮かべるのは、とあるベルギーの漫画です。

『タンタンの冒険旅行シリーズ』、全24巻。

実は私は、全巻揃えているほどの熱狂的なファンなのです。

大学生のための読書紹介なのに、児童書じゃないか!

まぁまぁそう言わずに。たまには童心に返ってみるのもいいじゃないですか。

それに、あなたが思っている以上に、この漫画は社会派なんですよ。

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 『タンタンの冒険旅行シリーズ』は、ベルギーの新聞記者、ジョージ・レミが”エルジェ”というペンネームで制作したものです。ヨーロッパでは20世紀最大の人気を誇った漫画で、これまでに70ヶ国語以上に翻訳され世界中で2億部(!)売れています。アニメや映画も制作され、2011年にはスティーヴン・スピルバーグ監督のアニメ作品がヨーロッパを中心に大ヒットを記録しました。

20世紀記念切手にも登場している(http://www.tintin.com)

ガンジー・マンデラらと並んで20世紀記念切手にも登場している(http://www.tintin.com)

映画『The Adventure of Tintin』 (comicvine.gamespot.com)

映画『The Adventure of Tintin』 (comicvine.gamespot.com)

 ヨーロッパでは定番とも言えるこのシリーズの歴史は古く、初めて出版されたのは1929年の1月、Le Vingtième Siècle 紙の子供向け漫画としてでした。朝日新聞の『ののちゃん』、読売新聞の『コボちゃん』のようなものですね。初めは副業だった漫画でしたが、シリーズが大変な人気を博したことで、エルジェは本業の新聞記者をそっちのけで漫画制作にのめり込んでいきます。


それでは、私なりのポイントをご紹介しましょう。

1. 時代を反映するストーリー

 タンタンは主に20世紀前半に書かれており、細かいところに現在とは全く時勢を垣間見ることができます。例えば、一番最初に書かれた『タンタン ソビエトへ』では、ソビエトが当時どのような状態だったかだけではなく、20世紀前半にヨーロッパ人がソビエトをどう見ていたのかも考察することができます。

"共産主義者かい?そうかい、じゃあこのパンをあげよう…" "また別の今のロシアの傷の一つだよ、この見捨てられた子供たちの列…村中、国中さまよいながら盗みと乞食をして食いつないでいるんだ" "かわいそうな子供たち" (www.tintin.co.jp)

“共産主義者かい?そうかい、じゃあこのパンをあげよう…”
“また別の今のロシアの汚点さ、この見捨てられた子供たちの列…村中、国中さまよいながら盗みと乞食をして食いつないでいるんだ”
“かわいそうな子供たち”
(www.tintin.co.jp)

 『タンタンのコンゴ探検』では、当時の植民地支配の影響が色濃く見られます。今でこそ列強の過ちという文脈で語られることの多い植民地支配ですが、この時代は植民地支配への評価さえも全く違います。その他にも『タンタン アメリカへ』では、まさにアル・カポネの時代、アメリカが第一次世界大戦で一気に債務国から債権国となり開発が進んでいった時代が描写されています。当時はニューヨークのような大都会から数時間行けばカウボーイが馬を乗りこなしているような状態だったんですね。

歴史を感じたいあなたには、『タンタン ソビエトへ』・『タンタンのコンゴ探検』・『タンタン アメリカへ』の三冊が特にオススメです。

 

2. 綿密な取材に基づく詳細な記述

 新聞記者出身のエルジェは、やはり取材力が相当のもの。タンタンたちは月・ラテンアメリカ・インカ帝国・中国・中東・アマゾンの奥地・東ヨーロッパをモデルとした小国・チベット・コンゴ…など様々な場所に冒険旅行に出かけますが、いずれもとても細かな絵と緻密に練られたストーリーで構成されています。単純に物語として読んでも、非常に面白く眼を楽しませてくれる作品なのです。

見てくださいこの細かい絵!『目指すは月』より(fr.tintin.com)

見てくださいこの細かい絵!『目指すは月』より(fr.tintin.com)

インカ帝国もこの再現度(fr.tintin.com)

インカ帝国もこの再現度(fr.tintin.com)

エルジェの細かな絵と緻密なストーリーを楽しみたいあなたには、『めざすは月』・『月世界探検』・『ななつの水晶球』・『太陽の神殿』などがオススメです。

 

3. 最高に魅力的な登場人物たち

 ここではとても書ききれないくらい夢中にさせてくれる『タンタンの冒険シリーズ』ですが、その全ては魅力的な登場人物があってこそ。特に、ハドック船長は見ていて本当に飽きません。ハドック船長は気が短く、何かしらいつもキレているのですが、そのキレ文句が毎回とても機知に富んでいて面白いんです。ぜひ本でチェックしてみてください。ハドック船長を味わいたいあなたには、『タンタン チベットを行く』・『なぞのユニコーン号』・『レッド・ラッカムの宝』がオススメです。『タンタン チベットを行く』ではラマと、『なぞのユニコーン号』・『レッド・ラッカムの宝』ではビーカー教授と壮絶なバトルを繰り広げています。

真ん中の青年がタンタン、その横が愛犬のスノーウィ。タンタンの左に立つ錨のセーターを着たのがハドック船長で、その前の緑色のコートの老人がビーカー教授。デュポン・デュボン刑事(双子ではない)はかなりのドジで、カスタフォーレ夫人はいつまでもハドック船長の名前が憶えられません。(sh-games.com)

真ん中の青年がタンタン、その横が愛犬のスノーウィ。タンタンの左に立つ錨のセーターを着た男性がハドック船長で、その前の緑色のコートの老人が耳の遠いビーカー教授。デュポン・デュボン刑事(双子ではない)はかなりのドジで、カスタフォーレ夫人はいつまでもハドック船長の名前が憶えられません。(sh-games.com)

実は、スノーウィは世界各国で呼び方が違うんです。フランス語では「ミルゥ」(Milou)英語・日本語版では「スノーウィ」、ドイツ語では「シュトルッピ」(Struppi)、オランダでは「ボビー」(Bobbie) 、ウェールズ語では「スウィーティン」(switin)、スロバキア語では「スノー」(snow)、中国語では「白雪」なんです(Wikipediaより)。各国の文化に馴染みやすいように変えているそう。面白いですね。私は今も毎晩スノーウィのぬいぐるみと一緒に寝ています。


タンタンの冒険旅行シリーズは、なぜか定期的に読みたくなります。つい最近も病気をして動けず暇だったので、時代順に読んでみたり、地域別に読んでみたり、表紙の色別に読んでみたり、様々な読み方をして楽しみました。何より、読むたびに新しい驚きと発見を与えてくれるので飽きず、年齢によっても全く捉え方が異なるのがこのシリーズの特徴。噛めば噛むほど味の出るスルメのように、読めば読むほど味が出るので、ぜひ時間をおいて何度も読み返してほしい作品です。

 

冨田 夏美

冨田 夏美PIPS JAPAN 創設者・代表

投稿者の過去記事

早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科一年生。外国人観光客に学生が外国語で無料の観光ガイドを提供するボランティア団体 PIPS JAPAN 創設者・代表。2016年5月にNHKスペシャル「18歳からの質問状」に出演したことをきっかけに、若者と社会問題をつなげるために自分にできることはないかと思い、SeiZeeライターに。その他にも2つのレギュラーラジオ番組を持ち、TEDxKids@Chiyoda 2014 Kids Speakerも務めるなど、メディアでも幅広く活動中。お問い合わせは 、tomitanatsumi.jacqueline@gmail.com まで。人生相談・恋愛相談・進路相談・記事に関する意見などなど、お気軽にどうぞ!

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