【インタビュー】世界中のSMILEを目指す京大生の葛藤と願い

「世界中を笑顔にしたい。みんなが幸せになればいいなぁ。」

そう語るのは京都大学総合人間学部3回生の迫裕太さんだ。中学生の頃はユニセフ、高校生の時はボランティア団体に所属。また、大学入学後まもなく学生団体SMILEを立ち上げ、代表を務めている。彼が今までどのように生きてきてなぜ団体を立ち上げようと思ったのか。そして様々な経験をしてきた彼が今語る学生への想いとは何なのか。その熱い想いに迫りたいと思う。

 

〈世界がもし100人の村だったら

―どうして世界中を笑顔にしたいと思ったんですか?

中学2年生の時、世界がもし100人の村だったらが流行っていて、性的マイノリティの人が100人のうち11人いるとか、100人のうち1人だけがパソコンを持っているっていうのを見て、ほんとうにただもうびっくりしたんだよね。僕はごく普通の一般家庭で育って、パソコンも使ってたし、恥ずかしいけど性的マイノリティの人たちがそれだけいるとは知らなかった。

これがきっかけでアフリカの教育の現状とかをテレビで見るようになって、生まれた場所が違うだけでこんなにもチャンスの差があるのかって思った。あぁ、みんな平等ならいいのに、みんな笑顔になればいいのに。そんなことを思っているうちに、とにかく何かしなきゃ、動かなきゃって思ったんだ。

 

〈がむしゃらだったあの頃〉

-そしてユニセフに入られたと。

うん。ほんとうに何かしなきゃって思ってたからインターネットで検索して出てきた番号に、親にも相談せずに電話した。ユニセフに入らせてくださいって。中学2年生なんて普通はたぶん門前払いなんだけど窓口の人がおもしろがって受け入れてくれて、神戸のユニセフ協会にボランティアで入らせてもらった。そこではTシャツのプリントのデザインとか子どもたちに紙芝居を読み聞かせたりとか、あと意見討論とかもしたなぁ。

 

〈指一本で世界変わる??~知らなかった現実を知って~〉

-実際に動いてみていかがでしたか?

自分がイメージしていた活動と実際の活動は全然一致していなかった。イメージしていたのは食糧供給とかだったけど、現場じゃなくて討論の場だけしか出られなかったから。世界地図を見て、討論をして、世界で起こっていることは理解していたけど、ただただそれを見ることしかできなかった。中学2年生に世界を変えることなんて到底できないんだって気づかされた。恥ずかしいけど指一本で世界は変わると思ってたからユニセフに入って、世界の現状を知った。あとは自分で何かアクションを起こせばいいんだっていう状態に持って行けたのは本当によかった。

-そのアクションの一歩がボランティア活動だったんですか?

そうだね。何かアクションを起こさなきゃと思って、ユニセフを続ける傍らで高校生国際ボランティア団体withに加入した。この団体は全てのイベントも全ての資金繰りも全て高校生がしている団体で、アクションを起こす一歩目として入ってよかったかな。

 

-そして、大学入学後、学生団体創設というまた新たなアクションを起こされるんですよね。そのきっかけは何だったのですか?

自分はほんとに良くも悪くもない超一般家庭で育って、自分の身に惨事が起こることは無かったんだけど周りに散々な日々を送っている人が多かったんだ。気づいたら左手首を失っていたり、急に学校来なくなったり、自殺未遂をしたり、目の前のビルから人が飛び降りたり。どうして自分に起こらずに大切な人にそういうことが起こって自分から離れていってしまうのか、悔しくてやりきれなくて数ヶ月食がのどに通らない時期があった。彼らが彼女らがなぜそんなことをするのか少しでも分かりたくて、著名人に会いに行ったり、講演を聞きに行くようになったのがきっかけ。

-団体創設までにやはり苦労はありましたか?

もうね、苦労ばっかりだったよ(笑) 大変なこととしては大きく分けて3つあったかな。1つ目は自分の目指す世界や理念を言語化すること。2つ目は頭の中ではわかっていることを行動に落とし込むこと。3つ目は事務的作業。団体名どうしようとか、中二病っぽい名前しか思いつかなくて。結局、SMILEっていう中二病みたいな名前になったんだけどね(笑)

 

〈パイプ役でいること=僕たち学生にできること〉

-団体の理念のミッションとしては「PTSDの原因となる問題を解決し笑顔をつくること」ですよね。具体的な活動内容を教えていただけますか?

僕たちは性被害・いじめ・虐待・障害者差別を活動対象としていて、具体的には予防、ケア、啓発の3つの軸を持っている。そもそも最初の段階で問題を起こさせないようにするのが予防。次に悲しくも問題の当事者としてこの社会に生きづらさを感じる方々にとっての壁を取り除く。最後の啓発は予防とケアを見ながら包括的にしているよ。ただ全てに同じくらい力を入れているっていうわけじゃなくて、ケアにはあえてそこまで力を入れていないんだ。

僕は学生だからこそできることをすればいいと思っているし、逆に言えば学生が得意じゃないことはやらず、他の人を頼るべきだと思っている。ケアっていう分野はカウンセリングとか臨床心理士の方とか専門の窓口はたくさんあるよね。それを無視してまで僕らがやる必要はないと思って。僕らがやることで悪影響を与えてしまっては良くないから、だから僕たちは当事者にとっての必要な窓口を探す、パイプ役でいようって思ってるんだ。

-活動していてもどかしいと感じることはありますか?

うん。メンタルを扱う分野はみんなそうなんだけど、そもそも声を上げて助けを求めてくれる人が少なくて。助けを求めてくれる人のニーズを汲み取って、僕たちの活動に繋げるだけだと偏りが出て当事者のニーズと僕たちがしたいと思っていることがずれていることがある。例えば僕たちはシェルターと食料が必要だと思っていても、当事者の方はお金が必要だと思っているみたいな。そしてそのずれを修正することはとても難しい。僕たちがしたいと思って活動していることは助けを求めてくれた人たちのニーズから考えたものだから。どうしても偏りが出てしまうんだ。

 

-これからの団体の課題を教えていただけますか。

これまでやってきたのは、講演に行った中学校からいじめをなくそうとか女子高生の調査とか短期的なプロジェクトだった。これからは自分がいなくなったりSMILEがなくなっても続いていくシステムをつくりたい。例えば今、聴覚障害者の人が増えているとしても、聴導犬のトレーナーが少ないために聴導犬が少ないことが問題になっている。さてそのトレーナーをどこから持ってくるかって話なんだけど、女子高生がやり始めたりしたら面白いと思うんだ。特に最近、女子高生でも性産業に関わる子の数が増えてて何とか他のルートを作れないかなって。性産業に関わる子たちってまわりの大人から売春はだめって何回も言われてきて人間不信になっちゃってるっていうことがあるんだけど、普段から体を削って働いているから命というものを誰よりすごく大切にしているのね。そんな彼女たちは動物のお世話がとても上手で、それに動物と触れ合うことで彼女たちの意識変化にも繋がるんじゃないかと。ある種文化的なシステムを構築できればと思っているよ。

中学・高校時代、そして現在の活動について語ってくださった迫さん。最後に、団体を通して伝えたいことを聞いた。

 

〈言葉・行動に隠された想いに目を向けて / 二極化しそうな学生社会をつなぎとめたい〉

-団体での活動を通して今の学生に伝えたいことをお願いします。

1つ目としては、こないだ東京に行ったときに、性産業に関わった女子高生の(写真や文書などの)展示会を見に行って、その展示の1つにそれぞれの女子高生たちが卒論レベルの量で自分の思いを綴っているものがあった。活動する中でそういう子たちの想いに触れることも多くて、理解しているつもりだったんだけど、その展示を見て気づかされたことが多かった。そのことを踏まえて言えることがあるとすれば、一緒に働いている人や友達が発する、言葉とか表情とかのもっと裏側を見て欲しい。みんな言葉や見た目では元気なように取り繕うのが上手なんだけど、本当に悩んでいる人もたくさんいるから。まずは身の回りの大切な人を大事に、ね。

2つ目としては、最近の学生団体や企業の理念ってリーダーシップ論とか未来を語ろうとか、上位層を救う理念ばっかり。最近はリーダーシップがクローズアップされてきて背中を押されて活動する人が増えてきたけど、そもそも外に出たくない人もいるし、未来とか予防とかくそ食らえって思ってる人もたくさんいる。一方ではなんで夢語らないの?って思っている人たちがいて、もう一方ではなんでそんなに意識高いの?って思っている人たちがいる。お互いに間違ってないんだけど、すれ違いが激しくて、今の学生社会がイメージとしてひょうたんのように真ん中がちぎれそうな気がすごくしている。僕はその真ん中がちぎれないような活動をずっとしていると思っているんだ。これからは、どちらの層にも気づきを与えて、二極化しそうな学生社会をつなぎとめられるような活動をする人が増えて欲しいなと思っているよ。

 

 

迫裕太
京都大学総合人間学部3年生。中学2年生の時に「世界がもし100人の村だったら」を見たことをきっかけにユニセフに加入。高校では高校生国際ボランティア団体WITHに所属する傍ら部活動では競輪に打ち込んだ。高校3年生の時、身近な人が自殺未遂や性犯罪に遭ったことがきっかけで大学入学後まもなくして学生団体SMILEを創設。現在は同団体の代表を務めている。

学生団体SMILE:http://smile-memory.jimdo.com/

seizee編集部

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当メディア『SeiZee』の編集部です。
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昨年末から、モスク、競馬場などへのインタビューに力を入れています。

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