【伝説の外交官に訊く】トランプ時代を生きる若者が目指すべき「グローバル人材」とは何か。

 

「グローバル人材」という言葉。
日本で、この言葉を耳にしない学生はいないのではないでしょうか。ただでさえ若者が生きる指針を見つけにくい現代に、世界で活躍する人材になるために必要なことは何なのでしょう。外交の一線を退いた現在、​外務省顧問と立命館大学招聘教授を務めるいっぽう、学生および若手社会人向けの私塾「​薮中塾グローバル寺子屋​」を開講している​薮中​三十二氏に聞きました。

 

ーー外交の最前線を経験された薮中氏が、退官後に京都で若者向けに私塾を開催された意図を教えて下さい​。​

3つあります。
まず、昔から若者と向き合いたいという思いがありました。次に、京都というのはやはり魅力があって、歴史があるところですからね。3つ目は、学生と議論するのが楽しいし、学生​に​は​「勉強になります」と言ってもらえるのでやりがいがあります。だから、こうやって体が続く限りやってみようと思っています。それで世界に羽ばたく人間が一人でも多く出ればいいなと。そんな思いですね。

 

 

ーー昔から若者に向けて伝えたいことがあったとおっしゃっていましたが、具体的にはどういうことですか。

 

古希を迎えた人間といまの若者とで見える世界は違うと思うんです。けれど、僕らが若い頃っていうのは外国に行くチャンスがあったら絶対に行くとか、何かやってみたいというようなハングリーな気持ちっていうのがあったんですよね。やっぱり団塊の世代は人がいっぱいいるし、子供のときからそんなに豊かではなかったですしね。それから何十年か経って、私が50代になってなんとなく若者を見ていると、彼らは満たされているし「そんなムキになったって」というような冷めた雰囲気を感じていました。でも国としてはそれじゃダメで、これからの国というのは世界を相手にせにゃいかんというのがあるでしょ。これから日本はどんどんマーケットが小さくなります。そういうときに、現状に満足し、フワッと「日本はいいよね」とされてしまっては、国として成り立たないですよね。だから、若者にもっと刺激を与えるのが必要かなと思いました。

 

 

ーー昨年はトランプ現象や英国のEU離脱が起こりました。いよいよトランプ政権が発足し、ますます将来の予想が難しい世の中になることが考えられます。外交の分野に限らず、授業で接する学生や薮中塾の門戸を叩いて来た若者には、どのような人材として活躍する事を期待していますか。

 

これは僕が現役で外務省にいたときから感じていたことなんですが、日本人というのは人がいいし、あ​ま​り人が嫌がるようなことは言わない。きちんと理論立てて物事をいうことは日本にいると必要ないんですよね。
でも、私はグローバルに戦っていく上でそれが絶対必要だとずっと言ってきたし、今も必要だと思っています。ロジックをもって、スピークアウトしろと。
トランプ時代になるとますますそうしたことが必要になりますよ。日本では、世界は反グローバリゼーションだと言っているけれど、日本では起きていないことが世界では起きているんです。それはヒトが自由に移動する移民の問題とか、金融の問題とか、モノの自由化だけでなく、カネ、ヒトに自由化が進み、そうした自由化、グローバリゼーションの波に置いてきぼりをくったヒトたちの反乱です。日本はTPPがOKだといい、アメリカはTPP大反対だと。イギリスはEU脱退。グローバリゼーションが行き過ぎだと言っていますが、こういった背景を見ても、やはり日本はこれからどんどん出ていかなければ行けないんですよ。

 

 

 

さて、ここでどうやって出ていくか、相手にどう何を言うかが大事です。そういう時に「僕が言うことは 正しいから理解して下さい」という言い方では全然だめですよね。なぜ僕の言っていることは正しくて、あなたの言っていることはおかしいのか。正面からの議論で、相手がオッと言うようなことを言わなきゃいけないんです。

 

トランプさんにも言えばいいんですよ。「日本は在日米軍基地負担の費用で十分にお金を払ってないだろ」ときっと向こうは言うでしょうが、「これだけ払っているから理解して下さい」と、これじゃあ答えになりません。それでは「あといくら払えるんだ」と言われてしまいますよね。僕であればトランプさんに「アメリカにとって在日米軍基地というのはベスト・バイだ」と言います、「お買い得」なんですと。アメリカがモンロー主義と言って南北アメリカだけで生きていける時代ではないことは100%分かっているはずなんです。そしたら発展するアジアにコミットせざるを得ないですよね。そこで日本を仲間にすること、日米安保で日本が提供する嘉手納・横須賀、この2つの基地があることがアメリカにとってどれだけ有り難いことかということを強調する。 横須賀は第7艦隊の母港として、嘉手納は空軍の基地として、最高のサービスを提供しているんですよ。第7艦隊の誇る空母も、しょっちゅうメンテナンスが必要なんです。横須賀は世界で最高のメンテナンスを提供している。そのことを「トランプさん、知っているか。これはベスト・バイだ」と強調する。相手は商人気質ですから、分かるはずです。相手を見て、攻めの主張をする、これがロジックですよ。

 

 

ーーだから世界に出ていく学生には、しっかりとしたロジックを持って負けるな、と?

 

その練習をしてほしいですね。日本でこればっかりやっていると皆から嫌われます。でも、海外では日本の「いい人」でいたら負けてしまう。だから薮中塾では日本の社会では嫌われるかもしれない人を育てます(笑)。けれど、人間力も増したうえで、日本でも好かれる人になる。両立がベストですね。

 

 

――難しいですね。そのバランスは。どういう風に工夫されていますか。

 

お酒を飲むことですかね (笑)。外国人と付き合うときもそうですが、面倒くさい事を言い合ったとしても、やっぱり最後は酒の一杯でも飲んで「こいつは良い奴だ」となる。そのときは理屈・ロジック抜きです。その両立ですよね。だから、薮中塾では丸一日議論した後はちゃんと塾生の皆さんとお酒も飲んで楽しく議論もしていますよね。あれも大事な訓練なんですよ。

 

—— 世界の外交の現場を渡り歩いてこられた薮中氏にあえてお伺いしたいのですが、日本人の特性をうまく生かして国際社会で貢献できる人材とはどのような人でしょうか。日本人はこれから何を求められるのでしょうか。

 

日本人の素晴らしいところは、人がよく、生真面目なところです。これに、ちょいワルの要素を加え、世界へ向かっていくというわけですね。
もとは人がいいから、向こうも分かってくれます。若い人には、アメリカ的な議論をするときも日本人的な人の良さに加えて文化や歴史のことを知っ て、そういう香りを纏ってほしいと思いますね。日本が持っている長い伝統に培われた文化を 少しでも「持つ」と。そういうフリでいいんですよ。急に文化を身に付けろと言ったって、無理だから。でも、京都に、関西にいれば周りに沢山そういう材料がありますよね。少しでも若いうちに そういう雰囲気に親しんで外国に持っていくといいですよ。日本人とフランス人、日本人とイラン人がわりとお互いが好きなのは、それぞれに文化・文明があるからですよね。そういうものを日本は持っているので、それを有効に活用してグローバル世界で活躍して欲しいと思いますね。

 

 

——— (インタビュアーは薮中塾の女性塾生であることから) 日本の若い女性に向けて、グローバルに活躍するためのメッセージはありますか。

 

ギャップを利用することです。イメージとして、日本の女性はおしとやかで、従順だとよく言われますよね。けれど、それを逆手に取って可愛い顔でガーンと言えば、最高ですよ (笑)。

(インタビュー終)

 

聞き手: 大川愛理 (同志社大学 法学部 4年) 高橋亜紗美 (大阪大学 人間科学部4年) 山本久瑠美 (関西学院大学 総合政策学部 4年)

文責および書き起こし: 松木 耕 (関西学院大学 経済学部3年)

 

 

 

 

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詳しくは薮中塾Webページをご覧ください!

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松木耕

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ニュースは現場の本質的な問題と受信者を繋ぐもの。リアリティの欠如した、受け手の当事者意識を育てない日本の報道を変えるジャーナリストを志し、日本全国と世界を飛び回ります。生粋の関西人です!興味関心はアメリカとドイツの文化・政治、日本の町おこしと観光です。

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